Run to the Another World第41話


「ぐぅ……」

「ああー……眩しかったぜ……」

「うっはっ……」

「あ、あれ、ここは?」

サエリクス・サウントゥルバラリー・ヴェンルティ坂本 淳ハール・ドレンジー

アレイレル・エスイトクス高崎和人小野田博人三浦由佳藤尾精哉

栗山裕二穂村浩夜橋本信宏の12人が目覚めたのは何処かの建物の中だった。

「何だ、ここは?」

「何処かの建物みたいね……」

「とにかく外に出てみればわかるかもしれないな」


だがその前に、重要な事に気が付く一部のメンバー。

「あれ? サエリクスとバラリーだっけ?」

「おう。俺がサエリクスだ」

「バラリーは俺だが……どうした?」

「いや、日本語話せたの?」

その淳の言葉に他のメンバーもハッとする。

「俺達は日本語話せないからハリドに通訳してもらおうと思っていたし、事実居酒屋の

時もそうだったんだけど……確かに今は通じているな」

「俺達は英語で話しているつもりなんだが……これも異世界のパワーか?」


「そうかもしれないな」

「え?」

その光景を見ていた和人が何かを確信したかの様に口を開く。

「こう言ったファンタジーの世界に地球から行く様な話だと、何かこう……上手く説明し難いんだけど、

異世界人補正とかそう言うのがある事が多いんだよな。少なくとも俺と藤尾はそう思ってる」

話を振られた藤尾も同様の反応だ。

「俺も和人と同意見。とにかくコミュニケーションが取れるのは救いだし、この世界だけでも言葉の壁が

無くなるのならそれで良いじゃないか。……それよりもまず、この建物の事を調べよう」


見渡す限りではやけに天井が高いのがこの建物の特徴だ。

「天井が高いし、それに何か鉄臭い感じもする。何だろう」

「取りあえずそこのドアから出てみれば何かわかりそうだ」

バラリーが指し示したドアから外に出ると、眩しい太陽の光が12人を照りつける。

そんな12人が見た物は、木で出来た大きな倉庫の様な建物であった。

「何だこれ……倉庫かな?」

「いや、違うな。これは……車庫か?」


おおよそファンタジー世界には似つかない建物。

その証拠に、建物の周りを1周してみると1方向から2本の線路が

遥か彼方へと何処までも伸びている。

「線路があるって事は、列車が実用化されてるのかな」

「かもしれない。後はこの線路を辿って行けば街か村がありそうだ」

そう考えるハールとアレイレルだったが、ここで藤尾が意外な一言を。

「……いいや、もう町はあるみたいだぞ」

そんな藤尾の視線の先には、明らかに人が居そうな建物が多くそびえ立つ場所がうっすらと見えていた。

「あそこに行けば何かわかるかも知れない」

藤尾のその言葉を頼りに、12人はその建物の密集地帯に向かって歩き始めた。


別に高層ビルとかが見える訳では無いし、町と言えば町なのだが、

何となく12人にはここが地球では無い事位の予想はついている。

あの声が自分達を地球にすんなり返してくれる様な感じでは無かったし、

最初にこの車庫に来た時には大量の食料が入った皮の袋、それから

この世界の地図、最後にあの3つの武具の内、1番面倒臭そうな甲冑のセットが

傍に落ちていた事がその証拠とも言えよう。

甲冑のセットはパーツごとに幾つかに分けて持って行く事にする。


そうして15分程歩き続けた12人は、建物が多く密集している

町に辿り着いた。

中世ヨーロッパを用意にイメージできる石造りの地面、しかしそこに

明らかに列車に乗る為に設計されたプラットホームが

繋がっている。となれば、恐らくこの場所から列車に乗って

違う町へと向かうのであろう。

「俺達の間で言葉が通じるんだったら、多分この町でも俺達の

言葉は通じる筈だ。まずはそれに賭けて情報収集と行こうぜ」

サエリクスの提案で、12人はそれぞれ3人ずつに分かれてこの町から

情報を集められるだけ集める事にした。


駅があるとあって結構人も多い。

これならすぐ情報が集まりそうだと思い、情報収集に関しては

何を聞くかを考えた上でそれぞれその役割を分ける事にする。

まずサエリクス、バラリー、淳のチームでこの世界についての事を聞き出す。

続いてハール、アレイレル、和人のチームはこの町があるこの国についての事。

それから博人、由佳、藤尾は王城の場所について聞き出す。

最後に栗山、浩夜、橋本の3人でドラゴンの事について聞いて回る。


役割分担をそう決めて12人は情報収集に出発する。

備えあれば憂い無し。敵を知り己を知れば百戦危うからず。

この精神でこの先も行くと決める。

何しろ文字通り右も左もわからない異世界での話であり、人の数だけ

存在する人生の中でも異世界にこうやってトリップするなんて自分達位では

無いのかと思ってしまうし、実際にこうして自分達の身に起きている事だ。


だけどこれはゲームでも漫画でも小説でもない。現実だ。

その現実からは逃げる事が出来ない。人生にリセットボタンは無い。

まさに一発勝負なので後悔しない様に行動を開始した。

全ては、自分達の生活の基盤がある地球へと帰る為に。


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