Run to the Another World第42話


博人、由佳、藤尾の3人はこの国に存在すると言う王城の場所について尋ねてみる事にする。

王城と言えば国のシンボルの1つにもなっている訳だし、何より国のトップである王が住む所でもあるから

知らない人は絶対に居ない筈である。

「旅人って事にしておこうか?」

「そうだな。それが1番自然だよ」

「でもこの服装、怪しまれないかしら?」

「そんな事言っても仕方無いさ。俺達にはこの服しか無い訳だしこの服装で先に進んで行くしかあるまい。

田舎の方からやって来た民族だって言えば、何とでもなるだろうよ」

俳優経験のある藤尾が博人と由佳にそう言って、3人は情報収集を開始する。

とは言う物の、王城の場所とその行き方を聞き出すだけだから別に難しいミッションでも何でも無いが。


と言う訳で、近くに居る人に話を聞いてみる事に。

「あのー、ちょっとすいません」

「何だ?」

「俺達この国に来たの初めてなんですけど、王城ってどうやって行けば良いですかね?」

「王城なら、そこの駅から出てる列車に乗って王都の駅で降りれば良い。それと列車に乗るなら

乗車証を作らないと乗れないぞ」

「わかりました。どうもありがとう」

「おう」


こうして、3人の情報収集については呆気無く終わってしまった。

「俺達はこれで終わりか」

「そうね」

「他のメンバーと合流するか?」

「いいや、俺達は先に駅で待ってようぜ」

「わかった」

他の情報を集めるのは他のメンバーの仕事だから、自分達がこれ以上

行動しても意味は無いだろうし、逆に色々聞き回っていたら怪しまれかねない。

そう思って、3人は駅の前で余り目立たない様に大人しくするつもりだった。


だが……。

「……おい」

「え?」

誰かに呼ばれたので博人が後ろを振り向くと、そこには先程藤尾が声を掛けた

王城の場所を教えてくれた男の姿があった。

「何か用?」

由佳がそう問うと、男は訝しげな視線を3人に向けて来た。

「あんた等……生気を感じないんだが」

「な、何よ!? 失礼ね!!」

思わず男の物言いにカッとなる由佳。思った事をすぐ口に出してしまう由佳の性格は

ここでも発揮されている。

「気に障ったなら済まない。しかし、御前達からは生気を感じないんだ」

「へ? そ、それって如何言う……」

RPGに詳しい藤尾は色々とシミュレートしてみるが、余り納得の出来る答えには辿り着く事が出来ない。

そんな戸惑いの表情を浮かべる藤尾を見て、再度男が口を開いた。


「何か、不思議な感じがする。こうして話す事も見る事も出来るが、どうにも生きている感じがしない。

まぁ、俺が言いたいのはそれだけだ。変な事を言って済まなかったな」

軽く男は頭を下げ、踵を返して歩き去って行った。

「あ、おい、ちょっ……」

博人が呼び止めようとしたが、男は止まらずに人込みの中に消えて行った。

「何だったんだ? あいつ」

「さぁね。それにしても失礼な男だわ!」

「それは同感だな」


男の特徴は短くカットした黒髪に、3人よりも明らかに背が高くそれでいて横から見た時の

身体の厚みも3人の1.5倍はあったであろう。武器は恐らく背中に背負った大きな剣で、

あの屈強な体躯であればそれを易々と振るう事が出来るのも想像に難くは無い。

「見た所、典型的なパワータイプの大剣士って感じだけど。剣道家の由佳さん、どう見ますか?」

まるでジャーナリストがインタビューする様に敬語で由佳に質問する博人。

「そうねぇ。格闘技でも同じだけど、やっぱりパワーのある相手は攻撃力も高い。

それだけじゃなくてそのパワーを最大限に出す為にはスピードもある程度

必要だから、速さも兼ね備えていたら厄介な相手だとは思うわね」


「由佳ならどうする?」

今度は通常の口調に戻って博人は質問。

「私だったら逃げるわね。体格が違うからまともにやり合った所で負けるのは目に見えてるわ。

ドライビングテクニックの勝負だったらスタミナ勝負だけど、生身の人間同士の対決だったら男に女は

絶対パワーで勝つ事は出来ないから一旦退いて体勢を立て直すか、誰か男に相手をしてもらうわ」

「じゃあ条件的な問題で逃げられなかったら?」

藤尾のその質問に由佳は少し考える。

「逃げられなかったらか。うーーーーーーーーーーーん、きついわね。私は負けると思うわ。実際問題で

和美とのスパーリングでも和美は私よりも体格が大きいからその分パワー負けするし……テクニックで

こっちが勝っていれば良いんだけど、持久戦に持ち込まれたらアウトね。スタミナなら向こうに分があるだろうし、

短期決着かな。勿論こっちが木刀や日本刀を持っていた上での話であるから、素手だと関節技に持ち込むかもね。

こっちも武器を持っているなら剣道の踏み込みの速さで対応したいけど、それに対応できるだけのスピードを

あの男が持っているなら私に勝機はほぼ無いと言っても過言では無いわ」

由佳は自分の今の能力と比較して、パワー差のある相手とどう戦うかをシミュレートしてみたが勝てる確率は低いとの事であった。


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