Run to the Another World第43話


ハール、アレイレル、和人の3人はこの国の事について町人から情報収集をするチームだ。

しかし、迂闊に「この国は何処ですか?」等と聞いてしまえば怪しまれる事は明白である。

なるべくならさっさと王城迄行って、とっととこの甲冑を届けてしまいたい。

そう思い、まずは3人で如何言う設定で聞きに行くかを議論する事に。

「僕は旅人が良いと思う」

「俺も賛成だ」

「それで良いよ。それが1番自然だろ」


こうして議論も終了し、3人は旅人としてこの国にやって来たと言う設定を作り上げておく。

取りあえず近くを歩いていた人に和人が話しかけてみた。

「すいません」

「何だ?」

「俺達、この国初めてなんだけど……どんな国なのかな、ここって」

しかし、男は若干訝しげな顔をする。

「さっき似た様な事聞かれたな……」

「え、そうなの?」

「ああ、いや。それよりもこの国の話だったな。何処から来たのかは知らないが、

俺が見た限りでは、この国は魔導が発達している国だ。

あそこに駅があるから見るとわかると思うけど、列車が魔力を動力源として

この大陸全土を横断する形で走っているから、大きな特徴がそれだ」


確かに男が指差す方を見ると、地球でも御馴染みの駅のプラットホームが見える。

「ほうほう。後は何か無いか?」

「……国王が凄く若い事かな」

「へぇ、幾つなんだ?」

「まだ24だと言う話だ」

「え、そんな若いんだ!?」

「詳しい事は知らないがな」


今度はハールが質問。

「じゃあ、ここから他の国の国境迄どれ位の時間が掛かるかな?」

「列車か。ならファルス迄は半日あれば着く。バーレンなら少し遠いな。1日位だ」

「そうなんだ……」

思ったより早いなとハールは考えてみる。

「その2つの国には行った事があるの?」

「ああ。どちらも悪くない国だ」


そうなんだと感心しているハールを横目に、アレイレルからはこんな質問を。

「じゃあ俺から最後の質問。何かこの国の名物とかってあるか?

それから王都迄は列車でどれ位だ?」

「王都迄はここからなら3時間位で着くぞ。名物……は、地下の闘技場かな」

「闘技場?」

「そうだ。裏の世界の実力者達が多額の賞金をかけて日夜戦う。

ただ俺も場所はわからない。王都の何処かと言う話は聞いた事があるが」

「そうか。サンキュー」


しかし、情報を沢山得て安心している3人に男が奇妙な一言を。

「……御前達も、生気が無いな……」

「は? 生気?」

何のこっちゃと首をかしげる3人だったが、男は至って真顔だった。

「何か、御前達も生気を感じないと言うか、存在しているのか……? いや、いるんだよな」

「何だよ、ハッキリ言えよ」

「ハッキリ言っている。……まぁ良いか。俺が教えられるのはこれだけだ。それじゃ」

男はそう言ってくるりと踵を返し、人込みの中に消えて行った。


「何だろう、今の言葉の意味」

「さぁ……俺もわからない」

「でも意味ありげな一言なのは雰囲気でわかったぜ、俺」

「へぇ、どんな?」

和人の発言にアレイレルが尋ねる。

「生気を感じないと言う事は、俺達の身体の中に何かしらの異常が

あると言う事になる。しかし、それはあくまでもこの世界だけでの話だ。

地球では精神的、行動的にそう言われる事があっても、初対面の相手に

そう言う事言うのはよっぽど酷い物でもなけりゃ言えないし、まして俺達は

何時もと変わらない普段通りだろ? だからこの世界特有の何らかの事情があって

あの男は俺達にそう言ったんじゃねーのかな」


和人のその分析に北アメリカ大陸からやって来た2人は納得した様に頷く。

「と言う事は、僕達の身体はこの世界では異分子扱いって事になる訳か」

「異世界に来た時点で異分子なんだけどな」

「そりゃそーだ」

自分達はこの世界では異分子扱いであるのがまず前提にある訳で、

身体に異常があると言う予想や生気が無いと言う見解を持ち出されても

実を言うと余り驚かない。

それ以上に驚いた事を、自分達はあの時東京で体験しているのだから

もう今更何とでもなれ、どんなもんでも来いと言う心境である。


「俺達はこの鎧を届けて、そして声の主を見つけて帰るんだ。

これから先の行動は良く考えて行動しなくちゃな」

「ああ。届ける迄は簡単そうだけど、俺達にとってはその後の事が凄く難しそうだ。

声の主については一切ノーヒントだから、果たしてどうなるんだか」

「他のメンバー達も僕達と同じ様に行動している筈。僕達も頑張ろう」

何としても自分達は地球に帰らなければならない。帰る場所があって、帰る家族があって、

そして帰る事が必要な理由がメンバーそれぞれに違えど存在している。

「良し、そろそろ集合場所に行こう。駅の前だっけ?」

「そうだな。そこに他のメンバーも居る筈だ」

「ここから少し歩いた所だから、意外と早く合流してるかもな」

ファンタジー世界はおとぎ話の中だけで十分だと思いつつ、3人は駅へと向かう事にした。


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