Run to the Another World第44話
栗山、浩夜、橋本の3人は街中でドラゴンの事についての情報を集めていたが
こっちはなかなか情報が集まらずに悪戦苦闘していた。
「駄目だぁ〜、全然ドラゴンなんて知ってる人が居ないってさ」
「俺の方も駄目だぜ。旅人っぽい連中に聞いてもそうだよ」
「こっちも全然。ドラゴン何て居ないんじゃないの?」
このままじゃ他の9人に合わせる顔が無いと思いつつ、気を取り直して
情報収集を再開する3人。
だけど、町の人は皆一様に口を揃えて
「知らない」
「聞いた事が無い」
と言うばかりである。
こうなって来るとこの町でドラゴンについての情報を集めるのは
無理だろうと感じる3人。
「もう少し聞いて回って、何も情報が集まらなかったら合流地点へ向かおう」
「そうだな」
「他の情報に関しては他のメンバーが集めてるからな」
3人はまだ情報を聞いていない人間が居ないかどうかをチェックしてみる。
すると1人気になる人物を発見した。
上下共に黒尽くめの服装で、その服の上からでもわかる位に
腹筋が割れている程の3人よりも大柄な体格に、黒い短髪が特徴的な
ごつくて若い男である。
見た所で言えば何処かの戦士であろうか。
そのいかにもな雰囲気をかもし出している男に3人は近づいて行った。
「あの、ちょっと良いですかな?」
「……何だ?」
「俺達、この国にまつわる伝説のドラゴンが居るって話を聞きつけて
旅をして来たんだけど、何か知っている事があれば教えて欲しいんだ」
橋本がそう問いかけるが、男は呆気に取られた様な顔をする。
そうして男はぼそりとこんな事を呟いた。
「今日は何か良く道を聞かれたりするな……」
「え?」
「いや、何でも。ドラゴンだって?」
「ああ、そうだ」
すると、男からは意外な言葉が出て来た。
「少しなら知っている。あくまでも噂程度だが」
「ほ、本当か!?」
「頼む、それを教えてくれ!!」
「俺達、どうしてもそれが必要なんだ!!」
子供の様に目を輝かせて自分に詰め寄って来る3人に男は
若干引きながらも教えてみる事にした。
「何でも、この大陸の何処かにドラゴンが封印されたと言う遺跡があって、
俺は仲間と一緒にそれを調べていた。そしてある日、その遺跡の情報が
飛び込んで来た。場所を書いてやろうか?」
「あ、ああ!! 頼む!!」
浩夜は自分が持っていた地図をガサゴソとポケットから取り出した。
「ここに1つ、それからここに1つ。後4つ遺跡があると言う事だが、そこも書こうか?」
「本当か!? 助かる!」
「ならここ、それからここ、後はここと……ここだ」
男が羽根ペンで地図に黒い丸で印を付けて行く。
今どうやら自分達が居るのは、世界地図の中央に存在している
繋がった3つの大陸の内の右下に来ているらしい。
そしてこの大陸に遺跡は2つ、残りの2つの大陸に2つずつ存在している様だ。
「どうもありがとう。じゃあ遺跡に行ってみようと思うんだけど、ここから列車を使ってどれ位で着くかな?」
栗山の質問に、男は腕を組んで答えた。
「そうだな、1つ目はここから1時間程列車に乗って、砂漠がある町のソヴェルークで降りてから
少し進んで行くとオアシスに着く筈だ。わからなかったらソヴェルークの町の奴等に聞け」
そうして今度は、男が指で地図上の山がある場所をさした。
「もう1つの遺跡はこの山の中。登山道があるんだが、そこを上って行けば結構わかりにくいんだが
洞穴がある。その中に入って行くと火山があって、そこが遺跡になっている。
この町からなら大体4時間位で着くぞ」
「火山か……」
大体出て来そうなドラゴンの予想は3人にもついていた。
「あ……それと、そのドラゴン自体についての情報は無いかな?」
思い出したかの様に尋ねる浩夜に、またもや男はうーんと腕を組んだ。
「いや……そこまでは俺達も調査出来ていない。ドラゴンが居ると言う
遺跡に行ったは良いが、ドラゴンには会っていないからな」
「そうなのか……」
そのドラゴンの実態について何か知っている事があればと思っていたが、
なかなか上手くは行かない物らしい。
「わかった、ありがとう。えーと……良かったら名前を」
橋本が3人を代表して御礼をしようとしたが、男は手の平を3人に向ける。
「いや、俺は名乗る程の者でも無い。それよりだな……」
そう言うと一瞬ためらう様な表情を見せた男は、3人に向かって
衝撃的な発言をかまして来た。
「御前達も、生気が無いな……」
「えっ? 生気って?」
「そんなに疲れてる様に見えるか? 俺等」
「そう言う訳では無いのだが……うーむ、凄い違和感を覚える。まぁ、余り
気にしないでくれ。俺が感じた事だ。それじゃあ」
男は意味深な言葉を残して立ち去った。
「俺達に生気が無いって一体如何言う事だろう……」
「しかも俺達『も』と言う事は、他にも言われた奴が居るって事か?」
「大体想像はつくけどな。……さて、俺達も駅に向かおうぜ」
「そうするか」
ドラゴンの情報は大量に集める事が出来たし、あの男には感謝し切れないが
それよりも気になる「生気が無い」とのあの発言。
3人はその言葉が、ただ単に自分達の様子を見て言った物では無い事を
心の何処かで理解しながら合流場所の駅へと歩き始めるのであった。