Run to the Another World第21話


「あー、眩しかったぜ……」

「って、あれ、ここは?」

何処かの建物の石造りの部屋の中で目覚めたのは

ジェイノリー・セイジールアイトエル・ガエリセン市松孝司遠藤真由美沢田弘樹稲本 明

飯田 恵大塚 誠兼山信也岩村僚一橘 陽介ハクロ・ディールの12人だった。

「ど……え、あ、な、何で?」

「いや、俺等も訳が……」

お互いに困惑する孝司とジェイノリー。しかしこの瞬間、2人はある事に気が付く。

「あれ? ジェイノリーって日本語話せたっけ?」

「いや、俺は英語で話してるけど?」

「じゃあ、何で俺達言葉通じてるんだ?」


そのジェイノリーの指摘に、孝司以外のメンバーもハッとする。

「だとしたら、これはいわゆる異世界補正って奴か?」

「別名ご都合主義だな」

このメンバーの中でRPGやファンタジーに詳しい明と兼山が今の事実をそう推測する。

「とにかく言葉が通じるのはありがたい事だ。ところで、ここに居るのは俺達だけみたいだな」

「そう言えばそうだな」

ヨーロッパチームの最年長メンバーのアイトエルの指摘に、真由美も同じく

自分達だけがどうやらここに来たらしいと辺りを見渡す。

「あの声はそれぞれの国にメンバーを振り分けて送るって言ってたけど、

だとしたら何でこのメンバーの組み合わせなんだろう」

「案外適当だったりしてな。それはともかく、ここは何処なんだ?」


陽介の疑問をあっさり岩村が流し、まずは現状確認。

「何処かの部屋だな。俺達が最初にこの世界に来た時と同じか。

とりあえずそのドアから出ればわかる筈だ」

弘樹がそのドアを慎重に開けると、その先には部屋と同じく石造りの

壁と床で造られた廊下が現れた。

「……誰も居ないな。みんな、出よう」

弘樹先頭で部屋から出て、まずはどちらへ行くかを決める。


「ディール、どっちか決めてくれ」

「え、俺? ……なら左だ」

そのディールの一言で12人は左へと歩みを進める。すると目の前には大きな扉が現れた。

「……行こう」

アイトエルがその扉を開けると、何と船着場に出てしまった。

「え……?」

「港? いや、船着場って奴か」

「船もあるみたいだしね」

一瞬あっけに取られる兼山、冷静に分析するディール、船を発見した恵。


取り合えず一行は分担して4つの船を拝借。

船着場と言っても海の船着場ではなく、川の船着場であった。

そのまま川を上る形で約15分進んで行くと、何と大きな城が見えて来るではないか。

「あ、あれは城かな?」

「城の中を川が通ってるのか。すげぇな」

「珍しいタイプね」

船着場で川が終わるタイプではなく、外から見る限りは城の中に迄川が

続いているのである。

12人はそれぞれ船を船着場に泊めて、その城の中に入ろうとする。


だが、船着場で降りた先にある1つのドアを開けようとした途端、

向こうから先にドアを開ける人間が1人。

「おわっと!?」

「うお!」

ドアを開けようとした明と、ドアの向こうから現れた赤い上着に銀髪の

男はほぼ同時に驚きの声を漏らした。

しかし銀髪の男はハッと我に返ると、背中に背負っていた黄色の柄の

ロングソードを引き抜いて明に突きつける。

「何者だ!」


それを見て明はなるべく冷静に現状を説明。

「俺達もちょっと現状が飲み込めていないんだ……。ここ、何処なんだ?」

「はぁ?」

予想外の返答に、銀髪の男は府抜けた声を出して呆れた表情をする。

「バーレンの城に決まってるだろうが。ともかく御前達は不法侵入だ。

衛兵! 侵入者を捕らえろ! 沢山居るぞ!」

その男の声にすぐさま大勢の兵士達が12人の元に押し寄せ、

12人は城の牢屋に入る事になってしまった。



「で、何か見えたか?」

「全然。何も見えないぞ」

牢屋に連行された12人は、それぞれ船と同じ様に何人かに分けられて3つの牢屋に入れられた。

その内の1つで高い所に上ったり飛び移ったりするのが得意な陽介が

牢屋に取り付けられた窓から外を覗くが、何も見えないので

落胆した声色で問いかけるジェイノリーに返答する。

「あの剣は取られちまったし、食料も取られた。返してくれるのかな」

「返してくれなかったら困るさ」

心配する大塚に岩村が冷静に呟く。

あの部屋にやって来た12人の手元にあったのは、皮の袋に入っている

大量の食料と3つの装備の内の1つの剣であった。

それに地図も置いてあったのだがそれは取られる事は無かった。

牢屋に入る前に厳しく尋問された挙句詳細に調書も取られ、個人情報も握られてしまった。

ともかくここから出してくれなければ話が進まないので、最悪の場合は脱獄と言う事も考えていたその時だった。


カツンカツンと地下の牢屋に近づいて来る足音がある。

それも1つではなく、音からすると2、3人位だろうか。

「誰か来るぜ……」

「ああ。しかもこっちに来る」

アイトエルが真由美の呟きに同意したそのすぐ後に、その足音の主が現れた。

足音の人数は3人。1人は紫の髪に顎ひげを生やし、背中に弓を背負った中年のガタイが良い男。

そのすぐ後ろに居るのは黒髪にオレンジの上着を着込んだ、これまた茶髪の男と同じ位の年代の男。

最後に、最初に12人が出会ったあの銀髪の若い男だった。


「出ろ! シェリス陛下がお待ちだ」

紫の髪の男が12人に出る様に促す。

陛下と言う単語が男の口から出てきたと言う事は、どうやらこのバーレンと言う国のトップの人物に

会うと言う事になるのだろう。つまり一言で言えば謁見だ。

「さっさと歩け」

戸惑って足が遅くなりがちな12人を、背後から銀髪の男が急かしながら12人はシェリスと呼ばれる

人物の元へ連行された。


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