Run to the Another World第22話


その人物はまだ若い金髪の男であった。年齢は大体30歳前後だろう。

王城の中にある謁見の間で、12人は後ろ手に縛られて

床に両膝をつかされてシェリスと対面する事になった。

「魔力が無い人間と言うのは、俺も初めて見た……」

じろじろと舐め回す様に12人を見るシェリス。魔力と言われても自分達は

この身体で今迄生きて来たのだからどうリアクションをすれば良いのかさっぱり分からない。


「調書によると御前達は城の離れに居て、そこから船で城に入ろうとした所でカリフォンに捕まったと言うのか。

それにしても、その変な声に導かれて御前達は違う世界からやって来たと。

これは我が国……いや、この世界全体で見ても初めての出来事だな」

調書を読みながらシェリスは心底不思議だと言う顔で声を響かせる。

「その話が本当なら、こちらの剣はここで預かると言う形になりますね」

シェリスの隣に控える宰相のロナが剣を抱えながら宣言する。

「しかし、貴方達の容疑が晴れた訳ではありません。疑いが晴れるまでは

この城の方に滞在していて貰いましょう」

と言う訳で、城の中で出会うかもしれないと言うメンバー達に自己紹介してもらう事に。


まずは皇王陛下からスタート。

「ではまずは俺からだな。俺はシェリス・ノリフィル。バーレンの皇王だ」

続いてシェリスの傍に立っている、黄色い上着の茶髪の宰相。

「宰相のロナです。どうぞお見知りおきを」

そしてロナとシェリスを挟む形で隣に立っているのが水色の髪の槍を持っている男。

「俺は近衛騎士団団長を務めるティレフと言う」

それから牢屋にやって来たあの3人の内の、オレンジの上着の男。

「魔法剣士隊隊長、ロオン・クラディスと申します」

その隣に立っている、ロオンより少し大柄で黄緑の髪をオールバックにしている男。

「同じく魔法剣士隊の副隊長のジェクトだ」


最初に出会った銀髪の剣士。

「剣士隊隊長、カリフォン・ヴィディバーだ。宜しく」

ロオン、カリフォンと共に一緒に居たあの茶髪の中年男。

「弓隊隊長をやっているグラルダーだ。宜しくな」

その隣に立つぱっつん髪の茶髪の女。

「弓隊副隊長のアイリーナです」

アイリーナから少し離れた所に立っている、大きな斧を背負った男。

「斧隊隊長、シュソン・カティレーバーです」

そのシュソンのすぐ傍に立っている女で最後だ。

「斧隊副隊長のファルレナです。宜しくお願いします」



10人全員の自己紹介が終了し、一先ず12人は客室へと全員一緒に押し込まれる事になった。

「スペース殆んどねーな」

「贅沢も言ってられないだろ」

「俺達、これからどうなるのかな?」

部屋の狭さにぼやく大塚をディールがなだめつつ、この先の行く末を孝司が心配する。

「まず、俺達がやる事の整理から始めたらどうだ?」

アイトエルのその一言で、今の現状確認とこれから先の課題を整理。

異世界に自分達は謎の声により連れて来られた。

やる事はあの剣を使ってドラゴンと会う事。

そして今自分達は不法入国と城への不法侵入で実質城に軟禁状態にあると言う訳だ。

この国にもドラゴンは居るらしい。しかし、その行方については全く分からない。

何とかしてドラゴンの行方を探し出す事が次の課題になりそうである。

「今は次の指示を待つしかないだろう。何時までもここに居る訳にも行かないがな」

ジェイノリーが話を纏め、しばらくは部屋で待機と言う形になる。


それからおよそ20分後。12人が居る客室のドアがノックされた。

「はい?」

「シェリスとロオンとシュソンだ。入っても良いか?」

「どうぞ」

シェリス以外名前と顔がまだ一致しない恵の返事に、バーレンの王と

魔法剣士隊隊長のロオンと斧隊隊長のシュソンが入って来た。

「御前達の処分が決定した」

そのシェリスの発言に、12人のメンバーはそれぞれ緊張した

面持ちでシェリスを見る。一体どんな判断が下されるのだろうかと

言う顔で、王の次の言葉を待つ。


「国外追放だ」

「……え?」

「御前達にもう用は無いと言ったんだ」

目を丸くしたジェイノリーに、冷酷にシェリスが告げた。

「え、と、それって他の国に行けって事?」

「そうだ」

「あ、それならドラゴンの事を教えてくれないか。俺達そいつ等も探してるから、

そのドラゴン達と会ってから……」

「駄目だ」

「は?」


孝司の主張に、再び冷酷に返事を告げるシェリス。

「御前達には国境迄に監視を付けた上でこの国を出て行ってもらう。

城にある転送装置を本当は使いたかったが、今壊れててな。

だからロオンとシュソンの部隊を御前達に付けさせてもらう。

御前達を城に置いておく余裕は無い。それだけだ」

「え、いやいやちょっと待ってくださいよ。何でドラゴンの事は調べられないんですか?」

真顔で疑問の声を上げる明に、今度はロオンが告げる。

「実の所、この国の財政は圧迫状態でして……。そこに異世界人が

現れたとなると、色々監視等で忙しくなりますから。ですから他の国にお任せすると言う事になりました」

「国境迄は私達が責任を持って護衛致します。食料もお返し致します」

シュソンもロオンに続く形でそう宣言し、3人は部屋を出て行った。


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