Run to the Another World第1話
「うあああ……って、あれ、ここは……?」
「どうやら、その国に来たみたいだな」
「ああ……」
光が収まると、そこには見渡す限りの平原があった。
しかしそれ以上にびっくりした事が1つ。
「あれ? 俺達だけなのか?」
「へ?」
「……そう言えばそうだな」
周りを見渡してみると、ここに居るのはハリド・エンリス、宝坂令次、百瀬和美、白井永治、
岸 泰紀、神橋洋子、鈴木流斗、椎名 連、宮川 哲、松原周二、グレイル・カルスの11人だけであった。
「何処かに居るかもしれないぜ?」
「そうだな、取り合えず探してみよう」
しかし、周りに散らばってそれぞれメンバー達の声を呼んでみるものの一向に応答が無い。
「駄目だ……返事が無い」
「こっちもだ。俺達だけしか居ないのか?」
「どうやらあの声の言ってた事は本当だった様だな。バラバラに散らばって届けてくれとの事だったし……」
傍らには大量の食料が入った皮の袋が10袋、それからこの世界の地図、
そしてあの3つの武具の内の黒光りする盾があった。
「取り合えずこれだけあれば持つとは思うけど、問題はこの地図の見方だな」
「ええ。ここが何処かもわからないから居場所の見当がつかないわね」
「まずは何処か村でも川でも、目印になりそうな物を探した方が良いわね。人が居るかもしれないし、
そう言った人里を探せば何とか今後の展開を組み立てられるわ」
と言う訳で、見当がつかないながらも11人は揃って歩き出す事になった。
とにかく行動しない事には何も変わらない。それは日常生活においても同じ事であるし、今の状況では
もっとそうだ。ボーっとしてたって助けに来る確率は低そうなので、まずはとにかく人を探す事が先決である。
そのまま歩き続ける事およそ25分。
「お、あれ街道じゃないか?」
「ああ、本当だ。やっと人の手入れがされた所に来たな」
目の前には明らかに人工で切り開かれた道があった。
「と言う事はこの道を通って行けば、人に出会える可能性が高いって事か!!」
「そう言う事だ。良し、行こう」
そして今度はそのまま歩き続けると、やっと前方に街らしき物が見えて来た。
「あ、街じゃないか?」
「本当だ! 人が居るかも!」
やっと人里に来る事が出来たと内心でホッとする一同だったが、この後信じられない事態が
待ち受けているとはこの時点で誰も知る由も無かった。
とりあえずは人の気配がある所までやって来られたのは良いとして、問題はどうやってこの
地図の場所を聞き出すかだ。
下手に聞いても怪しまれるだけなので、ここは旅人で迷ったふりをして話しかけてみる事に。
「あー、ちょっとすいません」
「……はっ、はい!?」
「ちょっと道に迷っちゃったんですけど、この街ってこの地図のどの辺りになりますかね?」
流斗に声をかけられた茶髪の男は何処かびっくりした様子を見せながらも
すぐに真顔になると、流斗の質問に快く答えてくれた。
「ここはリリヴィスの街ですよ」
「そうか、ありがとう」
「いえ。それにしても随分軽装ですが……」
「ああ、そこは気にしないでください。これからこの街で装備を整えるんです。
これから都に行こうと思ってるんですが、如何言う経路がありますかね?」
「帝都ですか? それなら乗り合い馬車を使うか、転送装置をお使い下さい」
「えっ……? あ、いや、そう。……どうも!」
聞き慣れない言葉に流斗は一瞬驚く。
それを茶髪の男が見逃す筈も無かったが、流斗は目的は一応達成したので
さっさとメンバーの元に戻る事にした。
その後姿を、茶髪の男が訝しげな目で見ている事等気が付かずに。
「馬車か転送装置……か」
「随分便利だな。もしかしたら魔術が発達している国なのかも」
「ああ。一気にそこまでワープできるって事だろ?」
連の推測に哲が疑問を呈すると、連は深く頷いた。
「とにかく土地勘が無い分私達は不利よ。都へ行けば何かしら他のメンバーの
情報が入ってくるだろうし、まずは都へ行きましょう」
「ああ。城にとっととこれを届けて、ドラゴンの情報も集めて俺達は任務を終わらせよう」
和美の意見にハリドも同意し、まずは乗り合い馬車か転送装置の情報を集める事に。
本当は流斗がさっきの時に聞いていれば良かったのだが、何だか怪しまれている様子だったので
そそくさと帰って来てしまったのであったと言う。
と言う訳で転送装置の情報を集めてみたのだが、使うにはまず使用許可書を作らなければいけないとの事。
馬車に乗るならば路銀が必要になるのでそちらは路銀の手持ちがゼロの11人は当然無理だ。
転送装置であればタダで使用できる様だが、このリリヴィスと言う街の周辺にはまた幾つかの
街や村が存在しているので、そっちに行きたい人達が路銀を使って馬車を使うらしい。
転送装置は都まで直接行けると言うし、他の国に繋がっている転送装置もまた別にあるので、
これで一気に時間短縮が出来そうだと喜ぶ11人。だが、物事はそう上手く行かないのが常であった。