Run to the Another World第2話
一通り情報を集め終えた11人はいよいよ転送装置のある建物へと向かう。
そこはリリヴィスの町の本当に中心部の位置にあり、ここで使用許可証を作ってもらい、
そのまま転送門を潜り抜けて都へと行くのである。
ここでは11人を代表してリーダーである令次が行く事になった。
建物は11人全員が一緒に入れる程の広さは無い為、残りのメンバーは外で待つ事に。
名前とか署名する事になったらどうしようと言う不安はあった物の、その心配は杞憂に終わり
あっさりと使用許可書が発行される……筈だった。
しかし、受付の女の元に1人の職員が駆け寄って来たかと思うと何やら
ゴニョゴニョと耳打ちを始める。
そして令次は何と別室へと移動させられる事になってしまった。
その事を全く知らないメンバー達は、何時まで経っても許可が取れた事を
報告に来ない令次を不思議がっていた。
「遅ぇな令次の奴」
「結構手続きとかで時間掛かってるのかもよ?」
「にしては、少し時間掛かり過ぎじゃないかしら?」
「確かに」
そんな10人の前に1人の男が現れた。それはメンバーの1人が知っている男である。
「あ……れ? さっきの人?」
「はい、先程はどうも」
そう、その男は流斗が地図の場所と都までの行き方を聞いたあの茶髪の男であった。
「あの、何か?」
「ええ、実は先程の事で少々気になる点を発見致しましたので、私達にご同行願えますか?」
「へ?」
哲が腑抜けた声を上げるのとほぼ同時に、鎧に身を包んだ兵士が茶髪の男に
取り巻く様にして20人程集まって来た。
「え、あの、あなたは……」
もう何となく予想がついているが、それでも勘違いであって欲しいとばかりに
永治は男の正体を尋ねる。
身なりこそは普通の村人っぽいが、初対面の相手に敬語、それに立ち振る舞いも
何処か優雅な物である事から、恐らく……。
「私は帝国騎士団のリアンと申します。貴方達は少々特殊な人物の様ですので、
見過ごす訳には行きません。それにもう1人貴方達には付き添いの方がいらっしゃいますね?」
「え、おい、まさか……!!」
そう、グレイルが驚くのも無理は無い。
それは遠回しに、一緒に来なければ令次がどうなるかわかるだろうと
リアンが脅しをかけて来ているのであった。
「来て頂けますよね?」
「……はい」
リアンの狡猾そうな笑みに、洋子は力無く返事を返した。
「令次!」
「令次、無事か?」
「ええ。俺は平気ですよ。皆さんの方こそ」
「俺達も大丈夫だ」
令次と合流してこれでメンバーは11人に戻った。
今11人がいるのは転送装置がある建物の奥の方にある
小さな会議室の様な場所。そして11人の前には茶髪の男で
帝国騎士団員のリアン、更にその副官と名乗った緑髪の男である
ティハーンと言う男。そして逃げられない様に何人かの兵士が見張りをしていた。
「俺達のどこが怪しいんだ」
連がそう聞くが説得力はまるでゼロ。何故なら11人は明らかにこの世界では
見慣れないスーツやワイシャツ等の服装な上に、旅人と言うには余りにも軽装。
しかも何処から来たのかと言う質問にはまるで答えられず。
「どう見ても怪しすぎます。ハッキリ白状してしまったらいかがですか?」
「隠し通せば通すだけ話は長引くぞ」
リアンもティハーンも若干イライラしているらしい。
仕方が無いので、11人は今までの事を全て白状する事にした。