Run to the Another World第3話


リアンとティハーンのリアクションはそれぞれ正反対。

「異世界……まるで信じられませんね」

「突拍子も無い話だな。しかしその不思議な声に導かれたのなら

有り得ないとも言い切れないか」

まるで信用できないと言った感じのリアンと、若干何処か納得

している様子のティハーン。

「とにかく、俺達はそう言う指令を受けたんだ。だったら

こっちからも質問させてもらうよ。このファルス帝国って言う所に、そう言った

ドラゴンの住処みたいな所は無いのか?」

この右も左も分からない異世界で、余りにもミッションを請け負った11人は

早く元の世界に帰りたいと言う気持ちで一致団結しているので、1秒の時間も

無駄には出来ないのだ。その気持ちを真っ先に表したのがハリドだった。


しかし現実は余りにも無情である。

「残念ですが、それは国家の機密事項となっておりますので」

「は?」

「な、何でですか!?」

まさかの答えに思わず抜けた声を出す岸と、一気に詰め寄る和美。

だがそれにはティハーンが答える。

「貴方達が怪しい人物では無いと決まった訳ではありません。

ここで俺達が取り調べてもたかが知れていますし。それよりは城にこのまま

来て頂いて、そこで取り調べを本格的にさせて頂きましょう」

「ええ。それに貴方方の様な人達を野放しにしたら、何をされるか分かった物ではありませんから」


さっきとは全然違うリアンの言い分に、思わず周二が口を開く。

「何だ、その言い方は」

しかしその周二の問いに対しても騎士団の2人は冷静だ。

「では貴方達は、ご自分が怪しくないと胸を張って言えますか?」

「……」

そのリアンの一言で周二は黙ってしまう。確かにそうだ。これは正論だ。

「とにかく、私達と一緒に来て頂きますよ」


11人はこれからこの国、ファルス帝国の帝都に向かう事に。

……かと思いきや、騎士団のリアンとティハーンはこの建物の中にある

転送装置を思いっきりスルーして別の場所へと向かう。

「ん? あれ?」

「ここじゃないんですか? 帝都に行く転送装置って」

戸惑いの表情を見せる岸、そして最もな令次の疑問にリアンは当然の様に答える。

「確かにここにも装置はありますが、私達がこれから向かうのは帝都の王城に直接

繋がっている転送装置です。街の外れに造ってあるのですよ。普段は

起動させてはおらず、有事の際にのみ使用されると言う訳です」

「はぁ〜、成る程ね」

哲が納得した表情を見せ、一行はその転送装置へと歩いて行く。


が、疑問がもう1つ流斗の頭に湧いて来た。

「あ、あの……城の方に連絡とか、どうしてるんですか?」

その疑問にはティハーンが答えた。

「魔術の1つで通話魔術と言う物があります。何名かその通話魔術を

使う事の出来る騎士もこの中にはおりますから、通話魔術を使って

今から向かう転送装置から王城に先程連絡を取り付けたと言う事です。ですから

皇帝陛下はもとより、宰相、それから将軍達にも連絡は入っているかと思いますよ:」

「へぇ、便利な物だな」


なら話の展開も意外と早いのではないかと安心する傍らで、他の国に

飛ばされたかもしれないメンバー達の安否も気になってくる。

「皆無事だと良いけど……」

「そうね。でも、私達にはどうする事も出来ないわ……悔しいけどね」

「心配なのは皆同じだ」

岸の呟きに洋子が悔しさを噛み締めた表情をし、周二が一言付け加えた。


そして一行はその転送装置、と言うよりも転送門に辿り着く。

確かに街の外れにあるので目立たない様になっていた。

銀色のアーチ状になっている転送門の中心では、紫色のドロドロした空間が

渦巻いているではないか。

「これを潜れば王城に行けるんですか?」

「はい。と言っても普段は使いません。今の様な緊急事態のみの開門ですので」

不思議そうに転送門の中心を指差すグレイルに、リアンが頷きを返す。

「魔力が無い物体でも送る事が出来る様になっていますから、大丈夫だと

思いますよ。行きましょう」

そのティハーンの一言で、11人は恐る恐る門の中へと入って行った。


紫色の一瞬の空間を潜り抜けた時には、11人は室内に立っていた。

石造りの壁にこれまた石造りの床、目の前には大きなドアが1枚。

「す、すげー……」

「流石ファンタジーって感じだな」

グレイルは思わず感激の声を挙げ、周二は冷静ながらも同じく感心した様子だ。

「では行きましょう。くれぐれも陛下の御前で失礼の無い様に」

「はい」

リアンとティハーンは配下の騎士達をそれぞれ持ち場に返し、2人で玉座がある

謁見の間まで11人を案内する。


そして謁見の間に着くと、リアンからこんな事を言われた。

「皆さん、1つご了承して頂きたい事が御座います。このファルス帝国は

以前御話した通り武人国家と呼ばれる程軍事力に長けた国です。陛下も日頃

鍛練を積まれていらっしゃるのですが、もしかしたら貴方達のどなたかと

勝負をさせてくれと頼まれるかもしれません」

「え……?」

「何その展開……いや、ありそうですけども」


まさかな……と思いつつ、11人は謁見の間へと進む。

金細工の施された赤い重厚な扉を開けると、その先には白を基調としたいかにもな

中世ヨーロッパの宮殿の様な大広間の様な空間があった。

「左翼騎士団リアン・カナリス、ティハーン・アヴィバール、帰還いたしました」

扉の前でそう告げてから中へと歩を進める騎士団員2人。

謁見の間には貴族やその関係者等沢山人がいるのかと思いきや、意外や意外で

10人の方が拍子抜けする位に少ない人数しか居なかった。


そして奥にある3段の階段の先には長い背もたれのイスがあり、そこには金髪で

白い上着、赤いマントに黒いズボンの男が座っている。

簡素な服装だが、その座っている姿勢には威厳とオーラが満ち溢れていた。

11人はその男の前まで行き片膝をつこうとするが、それを男の方が止めた。

「待て待て、堅苦しいのは俺も余り好きでは無いのでね。楽にしてくれ」

その一言で片膝はつかず、立ったまま会話する事になる。

「……さて、よくぞこのファルスに参ったな。異世界の諸君。俺はファルス帝国皇帝、

セヴィスト・ティリバーだ。それではまず、自己紹介を簡単にしてもらうとしよう」


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