Run to the Another World第4話
11人が簡単に自己紹介を済ませるのをセヴィストは確認すると、満足そうに頷いた。
「よし、それではこちらも各自それぞれ自己紹介を」
そのセヴィストの一言で、謁見の間に居る重要人物がそれぞれ挨拶した。
「私はカルソン・ノレイクと申します。ファルス帝国の宰相を勤めております」
「ルザロ・ファラウスだ。ファルス帝国騎士団精鋭騎士団長だ」
「改めまして、リアン・カナリスです。ファルス帝国騎士団左翼騎士団長です」
「ラシェン・ルーザスです。ファルス帝国騎士団右翼騎士団長です。よろしく」
「俺はシャラード・クノファン。ファルス帝国の警備隊総隊長だ。よろしくな」
金髪の二刀流の男がラシェン、茶髪の大剣士の男が最初に出会ったリアン。
片手剣の黒髪の男がルザロ、青髪の傷だらけの鎧を着ているのがシャラード。
そして紫髪の黒いコートを着込んだ男がカルソン宰相だ。
そして彼等の副官もそれぞれ自己紹介。全部で4人だ。
まずは緑髪のティハーンから。
「左翼騎士団副団長のティハーン・アヴィバールです。改めて、以後お見知りおきを」
続いて青髪の斧使いが挨拶。
「カノレル・エードレイです。右翼騎士団副団長です。宜しく」
赤髪の女は元気一杯に挨拶をして来た。
「精鋭騎士団副団長、ミアフィン・アントゥシャですっ! 宜しく御願いします!」
最後は茶髪の、シャラードよりは軽装の鎧姿の女だ。
「帝国警備隊副総隊長のテトティス・リースレアです」
こうして自己紹介も終わり、本題に入って行く。
調書をこの場でセヴィストにリアンから渡し、中身を確認する。
「ふうむ……この場に居る皆にも見せたいが、構わんか?」
セヴィストがそんな疑問を令次に投げかけ、後ろをちらりと見ながら応対する。
「俺は特に問題はありませんが……皆さんはどうですか?」
残りの10人も別に構わないとの事で、調書が許可を取って回し読みされる事になった。
一通り回し終えた所で再び調書がセヴィストの元へ。
「この調書の通りだとすると、御前達はその奇妙な声と光によって奇妙な場所で目が覚め、
そしてこの盾と共に奇妙な光で我がファルス帝国に来たと言う事だな」
「はい、間違いありません」
和美が調書の内容に嘘偽りが無い事を証明し、セヴィストはその反応を見て
例の盾をティハーンから受け取った。
「これがその盾か。しかし何故その声の主は、ドラゴンの遺跡とこの盾に関係があると言うのだ……?」
そのセヴィストの疑問に11人は当然答えられない。
何故なら本当に、『ドラゴンの遺跡に持って行って欲しい』としか言われていないのだから。
とりあえず謁見は終了したものの、他の仲間に関しても事情を聞かなければいけない事、
それから異世界人を国内に放っておいたら何をされるかわからないので、国が保護と言う名目で
城に事実上11人は軟禁される事になってしまった。出歩く事は出来るがそれも帝都の中だけ。
しかも城下に出るには騎士団のメンバーを必ず連れて歩かなければいけない。
そして、簡単にこの世界の説明をカルソンからしてもらう事になった。
一応馬車に乗っていた時に大体は聞いていたが、再度おさらいをしてもらう。
会議室に集まって、そこで地図を広げて見せてもらいながら説明を受ける11人。
「この世界の名前は『ヘルヴァナール』と言います。そして今私達が
居るのがこの大陸の、この場所にあるファルス帝国の帝都『ミクトランザ』になります」
それからカルソンは地図に描かれている別の大陸を指差して説明して行く。
「この世界には他にも色々陸地がありますが、その聞こえて来た言葉からすると
重要なのはまず私達のファルス帝国、それからこの地図で見て私達の国ファルス
帝国の左側にあるのがヴィルトディン王国。その下がバーレン皇国と呼ばれる国。
そして反対側の大きな大陸にある国がシュア王国です。各国の国境を通る為には
通行証を見せなければいけません。バーレン皇国は『水の大陸』と呼ばれている程
川が多い場所にありますし、皇都の中にも川が幾つも水路を通して流れており、
私達は非常に攻めるのに苦労致しました」
その言葉にグレイルが手を挙げて質問した。
「え、攻めたってまさか……」
「はい、お察しの通り私達ファルス帝国と、このバーレン皇国とで戦争が
ありまして。私達がその時に勝ち、バーレン皇国を撤退させました。
なかなか手強かったですが、今の所は休戦協定を結んでおりますからご安心を」
「あ、そう、それなら良かったです……」
戦争に巻き込まれるのはゴメンだ、とばかりにグレイルが胸を撫で下ろした。
「では次にシュア王国の説明を。シュア王国はバーレン皇国からの移民によって
設立された経緯を持っている王国になります。ここは魔術が最も発達している
国であり、大陸もこのカシュラーゼ地方の中では最も大きな大陸に
なっております。貴方達がリアン団長と通って来た転送装置の技術も
このシュア王国の技術者が開発した物を私達が購入した訳ですし、
王国の中には魔力を動力源とする列車が大陸を横断していますからね」
「え? 列車?」
RPGでも登場する事はあるが、実際にこの世界にもあるのかと連は耳を疑った。
「はい。鉄道事業が40年前に開発されまして、重要な交通と
物資の輸送に役立っております。馬車と違って馬を休ませる必要も
ありませんから、大抵の場合はその列車が活躍しているのですよ」
その後カシュラーゼ地方以外の他の大陸にある国についても
簡単に説明を受け、その大陸とファルス帝国で特に関わりがある国が
ヴィルトディン、エスヴェテレスと言う事を聞いて国や大陸の説明は終了。
他にはこの世界で使われている通貨、魔力について、それから
これから先は他のメンバーが見つかる迄待機してもらうとの話を受けた。