Run to the Another World第5話
最初に言われた通り、城の中では騎士団のメンバー無しでも見張りの兵士が常に
目を光らせているので大丈夫だが、城下では騎士団のメンバーを連れて行かなければ出る事が
出来ないと言うそんな制約がついている。だがそれでも帝都は見て回る事が出来るから、今だけは
思いっきり楽しもうと言う事で11人の意見が纏まる。残りのメンバーについては伝書鳩を飛ばして
手紙でバーレンとシュアに連絡を取り合いつつ、メンバーを発見したら11人に知らせてくれると言う事だった。
まずは城下町の中を見回り、次に城の中を案内してもらおうと言う事でスケジュールを組む。
付き添いに関しては将軍のルザロとシャラードがそれぞれついてくれるとの事だ。
「流石に中世ヨーロッパ的なだけあって、建築様式も似た様なもんだな」
「わかるわかる、向こうっぽいもん、ここの建物」
岸の呟きに和美が肯定を返し、11人はそれぞれ思い思いのままに街中を見回る。
見慣れない食べ物を扱っている飲食店、アクセサリーショップ、図書館、宿屋等色々な所を見て回る。
だが、武器屋に入った時に事件は起こるのであった。
「おー、武器が一杯!」
「無骨な物が多いわね」
色々施設を見て回ったが、ここだけ明らかに11人の様子が違う事にルザロとシャラードは違和感を覚える。
そして流斗が近くにあった売り物の槍に触れた、その時であった。
ギュッと柄の部分を握った瞬間、突然凄い光と音が店の中に響き渡る。
「うああっ!!」
「え、な、何!?」
側に居た和美が真っ先に驚き、それ以外のメンバーとルザロとシャラードも当然驚く。
「何だ、どうした!」
「わ、分からない! この槍を握ったら突然音と光が! しかもすげぇ痛え!!」
「何だって……?」
店主にこの槍は何か特別な細工を施しているのかとルザロが聞いたが、店主は否定する。
「何かしたのか?」
「俺は特に何もして無い。この剣を握っただけだ」
「これを握っただけ……? うお!!」
周二が訝しげに同じ様にその槍の柄を握る。
すると周二の時も同じ様に光と音、そして激しい痛みが現われるのであった。
流斗も周二も同じ結果になった。武器が握れないと言う事は一体どう言う事なのだろうか?
それを見ていたシャラードがこんな事を提案する。
「……試しに、他の奴も色々武器を握ってみてくれないか?」
彼にそう言われ、トリップメンバー達は槍だけでなく弓、斧、剣、杖等を握り締めてみる。
その結果は、どれも全部同じ様に凄い音と光、そして焼ける様な痛みが出るのであった。
「何だよ、これ……」
「熱い物に触れた時に反射で手を遠ざけるけど、それに音が混じった感じだな」
「良くわからないけど、武器全般が駄目って事なのか?」
「さぁ……」
トリップメンバー達は訳がわからないと言った表情になる。
帝都にある武器屋はこの一軒だけだし、この武器屋から騎士団と警備隊も
武器を造ってもらっているので信頼度としては高いのだ。
武器屋が怪しい訳じゃないとすれば、怪しいのはこの11人の方と言う事になる。
それでもまだ帝都散策は終わらず、もう少し帝都の中を見て回る事にする。
「そう言えば、お2人がひいきにしているお勧めの飲食店とかってあります?」
洋子がそうルザロとシャラードに聞いてみると、2人は顔を見合わせて頷く。
「ああ、それだったらこっちだ。ここから近いから行ってみよう」
と言う訳でそのルザロとシャラードお勧めの料理屋へと向かう11人だったが、この事が
後に彼等の運命に関わって来る事になろうとは勿論この時点で誰1人として知る由も無かった。