Run to the Another World第6話


そうしてルザロとシャラードに案内されて辿り着いた飲食店と言うのが、濃い目の野菜料理を

メインに扱っているヘルシーなメニューが多い飲食店であった。

ルザロもシャラードも騎士団員である以上肉や魚をメインに騎士団では摂っているのだが、

たまにそうした食事ばかりでは無く野菜も食べなければ栄養バランスに大きく関わって来る事に

なるので、こうして騎士団で食事を摂らない時はこの店にやって来て野菜料理を注文して

いるとの話であった。そんな料理屋では何人かの料理人が腕を振るって居たが、その中でも

ひときわフライパンの扱い方が上手い人間が1人。


「あれ、あの人凄い手早い動きしてねぇか?」

「ほんとだ。何か知らないけど手元がまるで機械の様に正確だよ」

「それで居て素早く料理も盛り付けてるし、まさに達人の域に達してる奴だな」

「一連の動作に全く無駄も無いし、時間の配分の仕方が神業級ね」

「調理と盛り付けを平行してやるのは結構コツがいるからなぁ……」

思い思いに哲、岸、周二、洋子、流斗の5人がその料理人のテクニックに

見とれていると、見られている事に気がついた料理人の方から話しかけられた。

「料理を作ってるのがそんなに面白いか? しげしげ眺めて」


さも当たり前の事だと言わんばかりのその男は、後ろで縛ってはいるがそれでも

結構長い白い髪の毛をコック用の帽子で隠しており、オレンジの瞳に白いエプロンの下に

これまた白の薄いシャツ、それから白いズボンと料理をする上では汚れてしまいそうな

白尽くめの男だった。

そんな男の疑問に対して、連は思った通りの感想を述べる。

「いや、手さばきが凄すぎてそれは見とれますよ。貴方がここの料理長ですか?」

「まぁ、一応そうだと言えばそうだけど」

何処かぶっきらぼうに答える男だが、そんな男の表情が11人に対して一瞬変わったのを

令次とハリドが見逃さなかった。


「……?」

「どうした? 俺達の顔に何かついてるのか?」

だが男は首を横に振る。

「いいや、そう言う訳では無いけど。良かったら食べてみるか?閉店時間後にもう1度ここに来てくれれば

腕を振るってやる。そっちは旅人だろう?」

「えっ!? 良いの?」

和美が驚きの声をあげるが、それ以上に驚いたのが騎士団長と警備隊長の2人だった。

「どう言う風の吹き回しだ?」

「おいおい、いきなり何言ってんだよ?」


それもそうだと11人は思い直す。いきなりやって来た初対面の人間に「はいどうぞ」なんて料理を

振る舞う様な真似は普通はしない。

だが料理人の男はしれっとした口調でとんでもない事を口にした。

「何て言うのか……御前達は普通の人間では無さそうだ。何となくそれが分かる。出来れば

水入らずで1度話してみたい物だ」

「あー……うー……分かった、考えておくよ」

と言う訳で適当にグレイルが言葉を濁し、帝都散策はここで終了。

セヴィストを始めとして紹介された異世界のメンバー達にも、まずはあの武器屋での事を

ルザロとシャラードは報告する事にした。



「……と言う事がございまして」

「ふむ……」

会議室にセヴィストも来てもらい、原因の究明にあたるメンバー達。

しかしここに居ても手がかりは掴めない。

そこでセヴィストがこんな提案を。

「なら俺にも見せてくれないか、その現象を」

「え? は、はい」

「色々な武器で試してみよう。訓練場に行った方が良いな」


と言う訳で11人とセヴィスト、カルソン、ルザロ、シャラードは訓練場へと向かう。

そこでは左翼騎士団と右翼騎士団が合同で訓練を行なっていた。

訓練場は見渡す限りではとても広く、見た感じではサッカースタジアム位の広さで

3個分位かなと見当をつける連。

「凄く広いな……」

「この様に合同で訓練を行なう事もありますし、これ位広くなければいけませんから」


カルソンが連に説明をしていると、セヴィスト達の存在に気がついたリアンや

ラシェンが訓練を一旦ストップする様に声を上げ、セヴィストに向かって頭を垂れる。

「これはセヴィスト陛下。いかがなさいました?」

「ちょっと実験したい事があってな。訓練用の武器を貸してもらえないか?」

「実験ですか?」

リアンのキョトンとした反応はさておき、その訓練用に刃を丸くした物を下っ端の

騎士に持って来て貰う事にした。

その間にルザロとシャラードは何があったのかを説明。


「そんな事が?」

「ああ。だからこの武器でもどうなのかと言う事を実験しに来た訳だ。

訓練の邪魔はしないし、すぐ終わる」

「わかりました」

騎士の1人が持って来た訓練用の槍、剣、斧、それから

防具として兜や胸当て等も持って来てもらう。

武器だけで無く、防具はどうなのだろうと言う疑問もセヴィストや

カルソンの中に湧いたからだ。

「良し、では好きな物を身につけてみろ」

セヴィストのその言葉で、それぞれが武器を握ったり防具を身につけようとする。


だが次の瞬間、あの武器屋で見た時と同じ様に物凄い音と光、そして強烈な痛みが

それぞれの身体から発せられた。

「いって! いった!」

「うおあ!」

「くああ、スゲェショック!」

「痺れた……」

「熱いんだか痺れるんだか。でも痛い事に変わりは無いぜ」

結果としては武器屋の時と全く同じ。果たして、これは一体どう言う事なのであろうか?


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