Trespassing and misunderstanding and the battle and escape第１話
〜登場人物紹介〜
「あーあ、アメリカまで行くのは良いけどさー。何を今回は調べに行くんだ？」
ヘルヴァナールの伝説のドラゴンの１匹である、灰色のドラゴンのセルフォンの背中に乗ってグレイル・カルスが尋ねる。
『某は医者だからな。アメリカの医療技術の進歩やその歴史には非常に興味がある』
「だからと言って俺等を別に呼び出さなくても・・・」
セルフォンの背中に乗っているのはオーストラリア出身の書道家のグレイルだけで無く、同じオセアニアの
ニュージーランド出身の映画の裏方スタッフのハクロ・ディールもいた。
『と言うか、御前達も乗り気だった癖に何を言うか』
溜め息を吐くドラゴンの背中に乗って、オセアニア人の２人はアメリカへと不法入国を果たした。
だが、セルフォンは地球の医療技術の勉強疲れもあってアメリカまで飛ぶのも一苦労だった。
『すまない・・・・入国は出来たのだが、夜と言う事もあるし夜目は利くが視界は悪い。少し着陸して休んでも良いか？』
「え。ああ・・・良いけど」
「何処に着陸するんだ？」
『ああ、もう少し先に大きな施設があったからそこで休む。一緒に休もう』
と言う訳でセルフォンは雨の降り始めた夜のアメリカの市街地を抜け、その街の郊外にある大きな施設の一画へと降り立った。
「ここは・・・飛行機とかの格納庫みたいだな」
「空港かな？ とりあえず、夜が明ける前に出て行かないとややこしい事になるかも」
『分かった、それまでには起きる』
そうして２人と１匹は格納庫の中で眠り始めたのだが、明け方になってどやどやと格納庫の外から２人の人間の足音が聞こえて来た。
明け方を迎えた頃雨が止み、定時巡回と格納庫へとやってきたヴォルフとフェリア。
「どこの基地も明け方は静かですね。巡回なんていいますけど、ここも交代制の見張りにしてくれたらもっと楽なんですが…」
「定時巡回とは言っても、この基地には滞在している部隊が少ないから持ち回りになってしまうんだろうな」
「認めたくない現状ですね」
やれやれと肩を竦めるフェリアが格納庫の扉に近づいて、ふと足を止める。
仕草のみでヴォルフを近くに呼び、その場に立ち止まり考え込むこと数秒間。
「何か、あるのか？」
「残念な事に。楽したい物ほど、終わらないものですね」
音を立てぬよう確認するように格納庫の扉にそっと手をかけた。
「・・・・ん？」
腕時計とスマートフォンで時間を確認したグレイルは、すでに朝の５時になっていることに気がつく。
「げっ、お、おいやべえよ！！ おい起きろ！！」
ディールとセルフォンを文字通り叩き起こすが、グレイルのその背後でゆっくりと格納庫の扉が開かれた。
扉のその先に違和感を感じ、人一人が通れるだけのスペースを開けヴォルフが先行して格納庫内へと入る。
声が響いてしまう事を配慮し、会話をインカムへと切り替える。
「……参りましたね。まさか夜間巡回の後とは想定外です」
「もう少し巡回を増やすよう、各隊と陛下にも進言すべきだな」
「何とか騒ぎになる前に収めたいものですが…」
二手に分かれ、薄暗い格納庫を先へと進む。
「お、おい何だよあいつ等は・・・」
「知らない・・・けど、普通の人間じゃ無さそうだ」
『少なくとも味方では無い者達の様な気がするな』
熱くなりやすい性格のグレイルと、そんな彼とは対照的にわがままだが冷静でマイペースな性格のディールは、
ディールと同じく冷静な性格のセルフォンにギリギリで人間の姿に戻って貰う事に成功した。
薄暗い中でも夜目が利くセルフォンが言うには、今の所格納庫の中に入って来たのは２人だけらしい。
「どうする・・・？」
「見つかるのは時間の問題だな。隙を見て脱出し、さっさとここから逃げよう」
『承知した』
冷静な判断を下したディールにセルフォンが頷き、じっと息を潜めて２つの人影が入り口から離れるのを待った。
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