Trespassing and misunderstanding and the battle and escape第2話
「3人、か……?」
「圧迫する気配はなくなりましたけど、油断出来ませんね。出てこない所を見ると、相手もそれなりのようです」
「すまない、回り込んで灯りを」
短い返事とともにフェリアは配電盤のスイッチがあったであろう場所へと足を向ける。
(おおっと・・・こっちに来るな。だったらそっちに回り込むだけだ)
格納庫の明かりがつくが、ギリギリでグレイルは物陰へと身を滑り込ませる。ディールとセルフォンも何とか見つからずに済んだ様だ。
その後も何とかギリギリで2人と1匹は格納庫に入って来た2人の視界に入らない様にして、神経を極限まで
すり減らしながら格納庫を脱出する事に成功した。
「良し、何とか脱出したな」
「あー危なかった。それじゃセルフォン、元に戻ってくれ」
『承知』
セルフォンが本来のドラゴンの姿に戻り、後はこの施設から脱出するだけだ・・・と思いきや、そんな2人と1匹の姿を目撃した
2人の人物が声をかけてきた!!
「あんた達、軍の人間じゃねぇだろ?なんだって格納庫から?」
「この基地への侵入者と見てとるべきだろう。……人外も混じっているようだが 」
基地入り口の方向からやってきたルーベンスとイザークが立ち止まる。人外と聞いてイザークは自分より遥かに大きい
セルフォンを見上げては、へぇ…と小さく呟く。
「昔話によくある龍じゃねぇかよ。まさかこの目で拝めるとは………こんな場所じゃなきゃ奉ってやりたい所だ」
肩を竦めるイザークは、何しにここへ?と問いたげに一歩前に出る。何かあっても動けるようにルーベンスはそのやりとりを見る。
「なっ、何だ御前達は・・・?」
「俺達は倉庫整理の業者。このドラゴンは新開発中のペット。もう帰るから気にしないでくれ」
驚くグレイルと冷静な態度を崩さないディールだったが、どうやら謎の2人はこのまま帰してくれそうに無い。
「ってかさ、あんた等一体何なの? そっちこそ軍の人間じゃないみてーだけど」
「軍とは直接的に関係があるわけではない。VSSE、国際特殊諜報機関の人間だ」
「ここの連中に真偽を確認してもらうってことで、一緒に来てもらうぜ。抵抗するならこっちも容赦しねぇ」
ただの清掃業者であるならば、ややばたつき始めている基地への説明がつかない。この世にそうそう存在するはずのない
龍までもが目の前にいるのだ。ただ事ではないと、戦闘態勢をとるイザークとルーベンス。
しかし、その発言に2人とセルフォンの顔つきが変わる。
「えっ、VSSE!?」
「御前達、VSSEのエージェントなのか?」
まさかの展開。しかし、これは逆にラッキーだ。以前、バーチャシティで追い詰められて降参した35人とその仲間の
ドラゴン達は徹底的にバーチャシティの研究施設でドラゴンについて調べられた。
そして、VSSEの本部にもドラゴンの身体構造等の資料を送った。
と言うかそもそも、セルフォンはVSSEのエージェントを相手にドンパチをやらかした経験もある上に、異世界ヘルヴァナールから
7匹のドラゴンが最初にトリップして来た地球の場所がVSSEの本部。しかもその時VSSEのエージェント達による合同訓練の
最終日だったので、このドラゴンの事を知らないエージェントの方が珍しい。
その事をグレイルとディール、そしてセルフォンでVSSEの2人に話した所、その2人もどうやら思い出した様だ。
しかし、それとこれとは話が別らしい。
「あぁ、そうだ。……本部に報告が必要な話らしいな」
「あいつらをどうにかしてから、だろ?」
お互いに頷くと、グレイルとディールへと向かって走っていく。
格納庫の方では、元に戻ったセルフォンを目視したヴォルフ達が矢継ぎで指示を飛ばし、小隊を編成する。
向かって来た2人の内、イザークと名乗った赤いコートが特徴的な金髪のエージェントはグレイルに、
ルーベンスと名乗った青い蝶ネクタイの執事みたいな服を着ている黒髪の男はディールに向かう。
しょうがないとばかりにオセアニアの2人も迎え撃つ事にしたのだが、VSSEのエージェントと言う事で余り油断は出来なさそうだ。
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