Trespassing and misunderstanding and the battle and escape第3話


「よっ、はっ!」

グレイルは自分の大柄な体躯を活かしてイザークに向かう。イザークは素早い動きが得意な様で、銃はこちらが素手だと

判断してか使わないものの、素早い動きの格闘術をグレイルに繰り出す。

下段回し蹴りを繰り出して来てグレイルはそれをジャンプして回避。そこからパンチの応酬になるがパワーではグレイルの方が

勝っている様なのでイザークの腕を弾いて彼の胸に右ストレート。イザークが怯んだそこに前方空中回転蹴りを振り下ろす。

「ぐわぁ!」


そんなバトルの横ではルーベンスが向かって来たのでディールが迎え撃つ。

ディールよりも背が低いものの、イザークよりも回避行動が得意らしいルーベンスはディールをなかなか追い詰めて行く。

「ぐ・・っ!!」

ルーベンスの前蹴りを食らってしまい、体勢を立て直すものの更に追い詰められる。基本的にディールはマイペースに戦うので、

その冷静さが相手を惑わすのだがルーベンスには余り通用しないらしい。

(くっそ・・・どうする・・!?)


グレイル達が戦っていた後ろから、ヴォルフが小隊を率いてやってくる。集められた兵士達は、話の中の産物としか

聞いてこなかったドラゴンを目の前に驚きを隠せない。

「追いついたぞ。無断で基地内に侵入した件、問わせてもらおう」

「大人しく投降していただければ、我々も手荒な真似はいたしませんよ?」

「VSSEの諸君、歓迎どころか巻き込んだようですまないな。今しばらく力添えを願おう」

セルフォン達を囲むようにフェリアが少人数の部下に銃を構えさせる。あくまで牽制としてであるが、返答如何では

戦闘も止むなしと部下にも伝えてある。


しかし、グレイルとディールがそれぞれバトルしているのを邪魔させる訳には行かないセルフォンは軍人達の目の前に立ちふさがり、

銃口を向ける軍人達をけん制する。

『某がここで休む為に着陸した。そなた達に危害を加える気は無いが、そちらがその気だと言うのであればこちらも止むを得ないがな。

そもそもそなた達の施設だとは知らずに入ってしまった。それは謝る。だから某達はそなた達に危害を加える気は無いし、某の存在を

忘れた方がそなた達にとっても好都合だと思うがな・・・・』

そんなセルフォンのセリフに対しての軍人達の答えとは・・・?


「や、やめましょう!こんな我々より大きすぎる相手となど……っ」

「無理に決まってる」

兵士達が銃を抱えたまま数歩後退する。自分達より巨大な相手などした事がないと言いたげに次の指示を待つ。

それはヴォルフ達も同様である。

「忘れたいのは山々なのだが、悲しい事に上層部はいかんせん頭が硬くてな……今頃基地の中では大騒ぎだ。未知の生物が現れたとな」

「軍属の人間は面倒な者ばかりで、なかった事にするのは難しいようです」

「それにVSSEには恩義があってな」


早く捕まえろ、モタモタするなと上層部からの通達に兵士達が狼狽える中、フェリアとヴォルフがセルフォンの前に立つ。

『まぁ・・・VSSEへの恩義は某にとっては別にどうでも良いのだが。だがな、某も暇では無い。そちらがその姿勢で来るのであれば、

某も面倒な事になる前に退却させてもらうぞ』

セルフォンはそう言ってバサッと大きく翼を広げ、一気にその場に風を起こす。自然現象の風圧にプラスして、風の魔導を発動させた。

その物凄い突風に、軍人達は成す術無く身体を吹き飛ばされてしまう。

【致命傷になる程強い風ではない。体勢を崩して隙を作るだけだ】


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