Run to the Another World第50話
「では次の質問ですが、何故貴方達は不法侵入をしたのですか?」
「へ?」
「はい? そ、それは如何言う事ですか?」
何の事だかさっぱりわからないと言う12人に対し、説明を買って出たのは
国王の隣に立っている宰相のアルバスであった。
「ソヴェルークの町を知っているよな? 貴方達12人は、そのソヴェルークの町の
近くにある砂漠の中にあるオアシスに入って行った。そしてそこで何かをしていたと言う事になる。その理由を話せ」
「え、いや、あの……」
不法侵入だと言われても、見張りも居なければ何のトラップも無い様な所であったので
何故そこが不法侵入になるのかがわからなかった。
「俺達、伝説のドラゴンがあそこに居るって話を一緒に居たあの黒尽くめの奴に聞いて……それで、実際に
オアシスに居るかどうか会いに行ってみたんです」
「それでどうなったんだ?」
まだ尋問は終わらないとばかりに、橋本にアルバスの声が飛ぶ。
「えーとそれで、実際にドラゴンに会う事は出来ました」
「何ですって!?」
その瞬間レフナスの驚きの声が上がり、同時に騎士団員や貴族達もザワザワとざわめき始める。
それをアルバスの声が止めた。
「皆さん静粛に!! ドラゴンと会ったのなら、その時の様子を詳しく話せ」
「その時はですね、俺達の目の前に降りて来たんですよ。人の言葉を話す事も出来て、俺達とは幾つか意思疎通をしました」
「どんな感じだった?」
「どんな感じって……普通でした。普通に人間の言葉で会話してました」
「内容は?」
「人間を見るのは久々だとか、その……波動がどうのこうのって話もされたりしました」
「謎の声が言っていた事だな」
「して、そのドラゴンはどうなったのですか?」
今度はレフナスからも質問がやって来て、それに引き続き橋本が答える。
「また後で来てくれとの事でした。まぁ、俺達の中には誰1人波動が合っている奴は居なかったんですけど」
その橋本の答えに一部のメンバーは表情が変わるが、何か意図が有るだろうと思って黙っている事にした。
「……わかりました。では、これにて謁見を終了致します。この12人を部屋へ。
保護の名目ですが、軟禁させて頂きますよ」
こうして謁見が終了し、12人は城の4階にある大部屋に通された。修学旅行の様に大人数で寝る様な物だが、
今は修学旅行所では無い。もっともっと重大な体験をしているのだから。
「やっと開放されたよ」
「げ、ロープの痕残ってるじゃん」
「あれだけぐるぐる巻きにされてちゃあな。いずれ消えるさ」
12人は一旦気持ちを落ち着け、今迄の状況を纏める事にした。
「まず俺達はあの光に包まれてトリップして、そこからあの町に行ってグレトルからそれぞれ情報を貰った。んで今度は
ソヴェルークの町から少し歩いて黄色のドラゴンと出会って、最後にこうして城に連れて来られたと言う事で良いな?」
サエリクスが今迄の状況を簡単に整理する。
それに同意したアレイレルが続けた。
「そうだな。そしてこれから俺達はどうするかと言うと、何時迄もここに居ても仕方無いと思う。
そこで俺の考えた選択肢は2つ。1つは俺達がここを抜け出し、自力でドラゴン達に会いに行く。それから
もう1つはここの奴等に頼み込んで、他のメンバーを探してもらう」
「俺は2番目の方が良いと思うなぁ」
アレイレルの提案にすぐさま藤尾が反応した。
「俺達だけで捜し切れる訳が無い。まして地図を見た限りは凄く広い世界だし、やっぱり王国に頼んでみよう」
「そうだな」
淳もそれに同意して、12人は沈み行く太陽を見つめる。
そんな時、部屋のドアがコンコンとノックされてドアが開いた。そこから現れたのは、あの金髪の騎士と同じ服装だが
マントの色と持っている武器が違う男が2人だった。
「失礼致します。御食事を御持ち致しました」
「ああ、ありがとう」
礼を言ったバラリーの傍から料理が次々に置かれて行く。
「あんた達も騎士団の人間かな?」
「そうですが」
「なら、あの金髪の……ほら、王の前で俺に怒鳴った奴の事、知ってるかな?」
淳がそう尋ねると、2人の内黒髪で片目が傷で塞がれている男が答える。
「あれは第1騎士団団長のグラカスです。結構荒っぽい奴ですが、剣の腕は抜群ですよ」
「え、第1って事は他にも騎士団があるの?」
「はい。第2と第3、それから魔導師の部隊が」
「そうなのか。……ああそれから、あんた達の事も良かったら教えて欲しい」
その淳の言葉に2人の騎士団員は顔を見合わせる。そして先に黒髪で隻眼の、槍を背中に背負った男が口を開いた。
「構いません。俺は第3騎士団の副騎士団長を勤めるロクウィンと申します」
次に紫の髪の毛で、どでかい斧を背負った男も自己紹介。
「第2騎士団の副騎士団長、バリスディだ」
「では、食べ終わったら外の兵士に報告をお願いします」
そう言って、ロクウィンとバリスディはそれぞれ一礼して部屋を出て行った。