第4部第2話


大字を倒し、少しだけだが賞金も手に入ったのでスターレットを改造する。

吸排気系をさらにパワーアップさせ、サスペンションもタイヤもいいものに変更。ブレーキも強化する。

そして土曜日。あの「スーンスーンスーン」とのバトルが開始される。


「あんた…また俺とバトルしに来たのか?」

「ああそうだ」

「そうか…そういえば、大字を倒したって話だったな?成長したみたいだし、腕を見せてもらおうか」

「ああ。今度こそあんたを振り切る」


そして、先行後追いでバトル開始。

友也先行、「スーンスーンスーン」の九条 信哉(くじょう しんや)が後追いだ。


最初の加速では前は負けていた友也。だが今回は・…互角!

パワーアップのおかげだろう。


(あっちのスターレット…速くなっている?)

九条は自分のアテンザに対し、正確なデータを求めて構築している。とにかく「速さ」だけを求めているので

突如としてマシンが全壊と言った爆弾も背負い込んでいる。

それでも臆することなくアクセルを踏み込み、友也を追い掛け回す九条。


だが、ストレートで何と友也に差をつけられていく!

(これは…勝てないのか…?)

これまでに2回友也に勝った九条だったが、ストレートで引き離されるとなると…。


それでもあきらめずに最後まで走りきり、結果としては負けてしまったが、最後までスターレットの

バックミラーに映っていた九条のアテンザであった。

「負けたよ…無理させすぎたかもな、俺のアテンザ。ヤレも少し溜まったっぽいし。またどこかで会えたら会おう。じゃあな」


何とか九条に競り勝ち、気の抜けた友也はスターレットにもたれかかった。




あらかた目立ったライバル達を倒し、大字を倒したことで今度は榛名と赤城のライバルが動き出したとの情報が入った。

それを聞いた友也、職場で、群馬県での工事の要請が入っていないかを見てみるが…無い。

(まぁ、そうご都合主義的にはいかないよなぁ)


取りあえず箱根で腕を磨き、昼の仕事が無い土日は石田の時代から続いているカテゴリーレースにも参戦。

金を稼いではスターレットのチューン費用に当てる。

エンジン内部をチューンし、タイヤをレース用(と言っても安い奴)に変える。軽量化も自作で少し施した。



そんなある晴れの金曜日。箱根に行くとオレンジ色の見たことが無いS2000が1台。

しかも、何とドライバーは女だった。もしかして…。

(ラヴァーズ…?)

元々走り屋の世界では女が少ない。故に目立ちやすく、女だけのチームもある。

しかしこうして群れずに走っている女は「ラヴァーズ」と呼ばれている。


友也は好奇心からその女に話しかけてみた。

「こんばんは。見かけない顔だな」

「え? あ、どうも。あなたは…?」

「俺、林友也って言うんだけれど。君走り屋だろ? 良かったら俺とバトルしてほしいんだがな…」

「いいですよ。私は古林 可憐(こばやし かれん)っていいます。先行後追いで、あなたが先行でお願いします」



今回は大字を抜いたヘアピンを立ち上がったところからスタートだ。

「3,2,1、GO!」

カウントダウンがされてバトルスタート。

だが何と、最初の加速で若干S2000をスターレットが引き離せるではないか。

しかし相手は2リッターのS2000。ストレートの中間加速はスターレットから見れば凄い。



しかもかなりアグレッシブで、こっちの車と壁との間にできるわずかなスペースに鼻面をねじ込んでこようとする。

(かなり強引だな!)

しかしコーナーではこっちが圧倒的に軽いために有利。しかもこの先はヘアピンと直角コーナーが続くテクニカル区間。

ブレーキングで軽々と引き離し、サイドブレーキも使って豪快に向きを変えつつコーナーを駆け抜ける友也。


その走りには可憐も驚きだ。

(嘘…こっちは301馬力出てるのに!? コーナーが速い…!)



しかし問題はこの区間の後に待ち構えるストレート。その後にはラストコーナーの右直角コーナーが待っている。

そのストレートで可憐は、コーナーで遅れた分をS2000のパワーで取り戻す。

そして強引にノーズをねじ込んで横並びに。

(ここで勝負よ!)


だが、可憐は並んだ位置が悪かった。イン側に並んだ可憐は、普通は有利なパターン。

しかしその右コーナーの出口には待避スペースがあり、友也は大きくコーナリングできる。



が、可憐にとってはラインがきつい。

(コーナーがきつい…曲がれない!)

スターレットより早めにS2000はブレーキング。


対して大きくラインを取ることに成功した友也は、アウトインアウトでS2000にかぶせつつも。綺麗にコーナリング。

FFでありながら慣性ドリフトも決め、しかもその右を抜けると同時にゴールなので、アクセル全開でゴールに飛び込むことが出来たのだった。


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