寄せ集めサーティンデビルズの冤罪編 第２話
兼山は降りしきる雨の中、フロントタイヤのグリップを確かめながら
ソアラでワインディングを下っていく。
重い車でダウンヒルには向いていないが、それでも雨のおかげでタイヤの
グリップを気にする心配は無い。むしろ後ろからのバンパープッシュが厄介だ。
さっきからガツンガツンぶつけて来るので危なっかしいのである。
しかもそれはストレート区間だけでなく、コーナーに突入してからも同じだ。
雨が降ってるともあって、一瞬たりとも気が抜けない。
更に奥がきついコーナーが多いので、必然的にコーナリングはドリフトになる。
緩いコーナーだと思って突入した先がきつくなりすぎていたら止まり切れない可能性が
あるが、ドリフトであれば思いっ切り角度をつける事で何とか対処出来るからだ。
そして後ろの大塚と洋子は、後ろから追ってきている車の走りを見ながら分析していた。
「かなり食らいついて来るな。コースを知ってるのかも」
「地元の人って所かしら？ 雨で良く分からないけど、大きな車みたい」
「エンジンはＶ８かな……？」
「結構突っ込んで来る所を見るとそうみたいね。でもコーナリングと立ち上がりで
若干もたついてるからサスペンションは柔らか目かも」
だが大塚がここである事に気がつく。
「それよりも、何かルーフの上についてないか？」
「ん……？ え、まさか、あれって……？」
洋子も大塚と同じく、何かとんでもない事に気がついた様である。
「おい、どうした？」
「なぁ、後ろの車……ひょっとしたら普通の車じゃないかもしれないぜ？」
「え？ 何でそう思うんだ？」
「だって、屋根にランプみたいなのがついてる……ひょっとすると……」
まさかな……と思いつつも兼山は前を見て集中する。フロントガラスから
見える景色が白い閃光に一瞬覆われ、雷の音が近くで聞こえて来た。
ワイパーも追いつかない程に叩きつけて来る雨、後ろからのバンパープッシュ、
慣れないコースと悪条件が重なる中でも、兼山は今までの経験とテクニックで
相手がバンパープッシュを仕掛けようとしても、急激なテールスライドで防ぐか、
当てられてもギリギリでソアラを立て直す。
しかしこのダウンヒルバトルは余りにもあっけない形で幕を下ろす事になるのであった。
とんでもない音と共に雷が近くの大木に落ち、その大木があろう事か兼山のソアラが
走っている道の先にバキバキと倒れて来た！！
「うお……！？」
「ぶ、ブレーキ！」
「くっそ……！！」
とっさにサイドブレーキを引いてソアラをスピンさせたが、右のテールから木に軽くヒット。
そのままの勢いでアクセルを踏んで元来た道を引き返そうとしたが、後ろの車のフロントと
ソアラのフロントが向かい合わせになる形で追い詰められてしまった。
そしてそのソアラのヘッドライトが、後ろから追いかけて来た車の正体を浮かび上がらせた。
「あ……！？」
「やっぱり……」
「この車って、あの時のよね……？」
ソアラのライトが浮かび上がらせたのは、このバーチャシティで最も事件の解決能力が
高いとされている通称「バーチャコップ」と呼ばれている、特捜課と言う部署のパトカー仕様の
シボレー・カマロＺ２８だった。
以前のドラゴンの件で、郊外の軍事基地まで先導して貰ったあのパトカーである。
とりあえず何でこんな事をしたのかとそのカマロのパトカーに問い詰めようと思い、
兼山がシートベルトを外してドアを少し開けて外に出ようとした。
「おっと、そのまま動くんじゃねぇ！」
そのドアを開けきる前に駆け寄って来た茶髪の大柄な刑事……バーチャコップのリーダーである
レイジことマイク・ハーディが開きかけたドアを両手で体当たりするかの様に強く閉めながら
兼山にそう指示を出した。
「あ、あんたらは……」
「元気にしてたか？ 何故俺等がこんな事をしたか、自分達で分かるだろうよ！？」
「はっ？」
何だか話がかみ合っていない。何でこんな事になったのかと言う話だが、むしろこっちが聞きたい位だ。
「この車のトランクを開けて貰おうか」
「トランク？」
「そうだ、早くしろ」
レイジの相棒として長年の付き合いがあるスマーティことジミー・クールスが、兼山のトランクを
親指で示して指示を出す。
別に大した物は入ってないんだがなぁ、と思いつつも兼山は指示通りにトランクを開ける。
……が。
「……やっぱりだ。レイジ、出て来たぞ」
「良し、それで言い逃れは出来ないな？」
「ああ、証拠としては充分過ぎる程だ」
トランクの方からスマーティの声が聞こえて来るのを見て、洋子が後ろから顔を出して訝しげに
レイジに尋ねる。
「証拠って何なの？」
「まだシラを切るつもりか。御前達が麻薬を運んでいるのがこれでバレバレなんだよ！！」
そう言いつつ、レイジはソアラの中にいる３人にずぶ濡れになりながらも、３人にとっては
全くもって見覚えの無いシルバーのアタッシュケースとその中身を見せ付けるのであった。