Training along with the dragon第5話


そして55階の、展望ホールになる予定の大きな円形フロアになっている階まで来た時だった。

「ぐあ!」

「うぐう!」

エレベーターを降りたバーチャコップの2人の後ろから悲鳴が聞こえて来る。何事かと振り返った

2人の目に飛び込んで来た光景は、何時の間にか倒されてしまっていたローカルポリス達であった。

「……!?」

『あ、待って!! 近くに生体反応よ!!』

驚くレイジのインカムにジャネットからの通信が入る。その言葉に反応したレイジとスマーティの

すぐ横を赤いTシャツの男が手に持っている青龍刀が掠めて行った。


「ちっ!」

青龍刀の男は攻撃を外した事に舌打ちし、2人に射撃をさせない様に素早く足払いや斬り付け等を行う。

「くっ!?」

何だこいつは、一体何処から……と思っている暇も無い。この状況では男に撃ち込みたくてもなかなか

銃弾を撃ち込めない。超接近戦になればすぐに攻撃を繰り出せる素手の方が銃を構えるより速く動ける

場合もあるからだ。

「ぐう!!」

男のなぎ払いをジャンプして前に転がりながら回避し、男を挟み込む様にしてレイジとスマーティは対処。

あの放水の時と同じく的を絞らせない作戦だ。


そして今度レイジが、スマーティに気を取られている男の後ろへと素早く回り込んで大柄で屈強な自分の身体を

使った強力な押さえ込みで対処。アジア系の男とは骨格等の基礎から違う体格なので押さえ込むのは簡単だった。

……『押さえ込む』のは。

「ぬぐぅ……あああっ!!」

「うお!?」

脇の下から差し込まれたレイジの両腕をものともせず、男は若干身体を丸めながら勢いをつけてジャンプ。

そこからレイジの頭を自分の頭越しに掴んで投げ飛ばし、レイジの身体をスマーティにぶつける。

「ぐあ!」

レイジの足が自分に当たって、スマーティがダメージを受けたと同時に男はレイジの拘束からも解放されたので、

バーチャコップの2人が立ち上がって来る前に男は押さえ込まれる時に床に落とした青龍刀を拾い上げて

再びバーチャコップに襲い掛かる。


が、それも2度は通用しなかった。低い位置からの射撃への対処は男も慣れていなかった様で、一足先に

体勢を立て直しかけたレイジがぐるっと倒れた体勢から背中で回って男に足払い。

「うおあ!?」

男が床に倒れた所で、男の持っている青龍刀をスマーティの模擬弾が吹き飛ばす。

「チェックメイトだ、動くな!!」

スマーティの銃口が側頭部に、そして仰向けの状態の男にマウントポジションを取る事に成功したレイジが

男を見据えながら眉間に銃口を突きつけた事でバトルは幕を閉じた。


「あーあ、捕まっちまったよ。だけど俺の立てた32階のあの待ち伏せ作戦に引っかかってくれたから

良かったけど。御前さん達は運が良かったな?」

諦めにも似た表情でニヤニヤと笑う男の眉間に、レイジの銃口がゴリッと一際強く押し当てられる。

「そうか。ならここで死ぬか?」

しかし、どうやらこんな奴に構っている時間は無さそうだった。

「あー、それも良いかもな。けどもうおせーよ。俺達は足止め部隊だ」

「何だと?」


後ろ手に手錠をかけて男を拘束するスマーティは男の発言をいぶかしむ。そんなスマーティに

男は全てを喋り始めた。

「ああもうこの際だから全て話すわ。実は御前達バーチャシティポリスが動いているって話なんてとっくに

筒抜けなの。警察関係者とかもこっちに何人か居る訳だし。だったらそれを逆手に取ってやろうと思って、

俺はあのスタジアムの戦いの時にわざとあいつを狙撃して殺したんだ」

「な……にぃ!?」

驚愕の事実を受け止め切れないレイジに男はまだ続ける。

「そうする事で、御前さん達は何としても証拠を探し出そうとする。で、あの書類にここが取り引き場所って

書いてあった事でここに来たんだろうけど、残念でした。それも全て計算済みだ。生物兵器の開発者が

御前さん達を誘き出して全員始末する為の作戦だったんだよ。御前さん達は見事にその手がかりに

引っかかった。全く嘘の手がかりにな。そしてローカルポリスは全滅。無様だねぇ?」

「野郎……」


今にも男をぶん殴りそうなレイジだが、そんな時にジャネットからの通信が入る。

『バーチャコップの2人は急いで港に急行して下さい。不審な人物が港で目撃されています』

「……港か」

「確かあそこには、今はもう使われていない様な倉庫が幾つも並んでいるな」

ならばそこに向かうしか無い、と踏んだ2人は、ローカルポリスのバックアップが全滅させられた事を

悔しがりつつ新たにバックアップを頼んで港へと向かう為にビルの外へと出るのであった。


「と言う訳でステージ2もクリアだったな。お疲れさん」

外でインプレッサと一緒に待っていた大塚の元に、日本から模擬刀で持って来た青龍刀を

グルグルと回しながらバーチャコップの2人と一緒に歩いて来た流斗。

「流斗は結構奮戦したのか?」

ここで一旦休憩と言う事らしいので、大塚はバーチャコップにそう質問した。

「ああ。流石にカンフーの使い手なだけの事はある。今年でカンフーは何年目だったっけ?」

レイジは流斗にカンフーの経験年数を尋ねる。

「俺は30歳からだから、今年でもう16年目だな」

よくよく考えてみれば、自分は1971年の1月14日生まれだからバーチャコップの2人より

学年が1つ上なのか……歳もとったなーと流斗は感じていた。


「それじゃあ、残るはもう1人の令次だな?」

「そうだ。ちなみに1つ聞くが、あの作戦は本当にあんたが考えたのか?」

「ああそうだよ。と言っても元々は日本の警察映画でそう言うシーンがあって、これを

応用して……って考えたらそうなった」

スマーティの質問に、別に隠す事も無いしなと流斗は考えてあれは自分が芝居抜きで

考えてみた作戦だと言う事を伝えた後は、いよいよストーリーも佳境に入って行く!


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