Run to the Virtua City第３話
「……行ったか？」
「ああ、もう大丈夫だ」
「あー、まさかこんな所で会えるとは思わなかったけど、おかげで助かったぜ」
和人は自分の派手なシルエイティを放置してここからどうやって逃げるか工場地帯で
途方に暮れている所だったが、そこに現れたのが何処かで見覚えのある赤の
ＡＥ８６レビンだった。
「何故ここに居るんだ？」
「俺達は旅行でここに来たんだよ」
旅行で色々と観光名所を見回りつつドライブしている所で、和人のシルエイティを
見かけて追いかけて来たらこの有様だったと言うから成り行きで
和人を救出したらしい。そもそもこのレビンのドライバーは誰なのかと言うと……。
「まさか俺もここで裏切りのジャックナイフに出会うなんて思わなかったぜ」
「それはこっちのセリフだぜ、ローリングマスターの山本君。それから俺と同じく
Ｃ１グランプリのマスターの拓也も一緒だったとはなぁ」
車は違うけど、と付け足す和人に山本は苦笑いを漏らす。
和人は自分のシルエイティを追いかけて来ていたパトカーを助手席で身体を伏せて
やり過ごし、適当に人気の無い場所……とりあえず港まで走って貰ってそこで
今までの状況を説明し始めた。
「俺はどうしてもこの街に俺の勤めるメーカーの布団が欲しいっていう奴が住んでいるから、
顔を見せるついでにその布団を届けに来たんだ。だけど布団を届けて帰ろうと思っていた矢先、
市街地の中の銃撃戦に巻き込まれて。そしてそこから避難しようと思ったら、シルエイティの
開いている窓から中にアタッシュケースを投げ込んで来た奴が居てさ。ほらこれ」
そう言いながら和人が見せて来た物は、銀色のアタッシュケースに入っていた色々な
書類だった。何やら小難しい事が色々と書かれている。
「何だそりゃ？」
「さあなぁ。だけどこれが大事な物って言うのはあのヘリコプターの追撃からしても良く分かる。
だからもう、このアタッシュケースをここ等に放置して行こうと思って」
下手にシルエイティの中に置いておいたら、せっかくの大事なシルエイティが破壊されでも
するかもしれないのでこのまま持って来てしまった訳だ。
だけど考えてみればこのアタッシュケースの中身？ が原因かもしれない可能性は
１００パーセントに限りなく近いので、この辺りに放置しておけば良いと和人は考える。
「そうだな、下手にそれを持っていたらまた狙われる可能性もあるかもな、今の話だと」
「俺も同感だ。そんな薄気味悪い物、さっさと捨てちまおうぜ？」
「ああ、そうすっか」
山本と拓也の回答に和人は決意を固め、港の一角にこのアタッシュケースを放置するのが得策だと
考えてこのケースを置いたままその場を離れる事に。
だけど、そうは問屋が卸さなかった様である……。
「ん？」
バタバタと慌ただしい足音が聞こえて来たかと思うと、いきなりスターレットとレビンの周りを武装した
謎の集団が取り囲んで来た。
「な、何だぁ！？」
「と、とにかくここはまずい！！ 逃げるぞ！！」
余りの突然の出来事に、レビンの中に置きっ放しだったアタッシュケースを捨てる事をすっかり忘れたまま
２台は港から一旦離れる。
「何なんだよ、ありゃ！？」
「俺に聞くな！！ だけど、絶対友好的な人間達じゃ無さそうだぜ！！」
いきなりの事でパニックになったまま、これから何処へ行くかを検討する３人だったが
ずっとこのままと言う訳にも行かないので、とにかくこのアタッシュケースを渡された場所に
行ってみれば何かが分かるかもしれないと言う事であった。
何故だか、このアタッシュケースを放り投げてしまえばさっき以上にとんでもない事に
なりそうだと言う嫌な予感が３人の心を支配していたからだ。