Master'sの巻き込まれ事件編 第3話


「おい大丈夫か、しっかりしろ!!」

「くっ……!!」

女は何箇所からも血を流しており、呼吸もだんだん弱くなって来ている。

咄嗟にハールが着ていたTシャツを脱いでびりびりに破き、それで止血の為に

まずは腕を縛る。

だけど絶望的に止血が間に合わなさそうである。

「ど、どうしよう!?」

「救急車呼んでたら間に合わなさそうだ、俺達で病院に運ぶぞ!」


おろおろする和人にアレイレルが指示を飛ばし、鍵も開いていたのでアリストの

リアシートにアレイレルとハールで乗って貰う。

そして後ろから恵が和人と一緒に病院まで着いて行くと言う算段だ。

そして車を2つに分けたのは、後ろの恵と和人で何とか近い病院を探して貰い

アレイレルとハールには女の止血に徹して貰う為だ。

「じゃあ頼むぜ!」

「ああ、任せろ!」


アレイレルにゴーサインを出されて流斗がアリストのアクセルを踏む。

勿論交通ルールなんて守ってはいられないが、今の時間帯は昼間なので

なるべく市街地を通る様なルートは避けたい所である。

それをS14の恵と和人からケータイでアレイレルが指示を受ける。

市街地を通って一般車とクラッシュする事だけは避けたいからだ。

だけどどうやらここでも上手く行かない事が、和人から入った連絡で判明する!


「え……?」

「どうした?」

「病院はやっぱり街中らしい。街中を避けるルートを通っていたらこの人、死んでしまうよ!」

ハールが極度に切羽詰った声でそう言う。

「ならしょうがない、やるしかないだろ!!」

流斗はそう叫び街中を突っ切るルートを選択したのだが、この後に更なる展開が5人を

待ち受けていようとは思いもしなかったのである!!


「うわぁ、何だこいつ等!!」

色々な所からシルバーのセダンや黒いバン、更にはワゴン等様々な車が現われては

流斗のアリストを妨害しようとして来る。

その度に恵がバンパープッシュやサイドアタックを駆使して潰したり絶妙なドライビングで

駆け抜けて行くが、攻撃は止みそうに無い。

「何だ、どうなってんだ!?」

「知るか! ただ俺等は相当やばいらしいぜ!!」

「うわ、警察も来た!!」


更にそんな激しいチェイスを繰り返していたら勿論警察に目をつけられてしまうので

この状況でなるべくデリケートにこれ以上女の容態を悪化させない様にしなければ

いけないと言う前代未聞のシチュエーションに5人は陥っていた。

「くっそ、くっそ!!」

「こうなったら仕方無いわね、私が何とかして警察だけでもひきつけるわ!!」

恵はS14のスピードを落とし、横に並んで来た黒いセダンをサイドアタックで

潰しながらアリストを先行させる!!


そして追いかけて来るパトカー集団の中には、バーチャコップの2人が搭乗している

Z28カマロパトカーの姿も! 今回の運転もレイジだ。

「港の事件がひと段落したと思ったらこれか! 休ませてくれない街だな!」

「だから俺等みたいなのが居るんだろう!」

レイジのぼやきをスマーティがなだめ、目の前を走るアリストとS14を追いかける。

しかしS14がスピードダウンしたかと思えば、徹底的にカマロを前に出させない様にして来た!

「こいつ……!! 俺等を挑発してやがる!」

「ぶつけてスピンさせるんだ!」

「言われなくても分かってるさ!!」


そうしてカマロはS14に強烈なバンパープッシュを仕掛けた!!

だが恵は当てられてもアクセルワークで上手くS14をコントロールして

スピンしない様にして徹底的にカマロをブロック。

更にアリストとは別のルートを選び、カマロを始めとするパトカー集団を

アリストから引き離す作戦に出た。

「くそ、2台に分かれやがった!! どうする?」

「……あの赤いセダンを追え。あいつはおそらくおとりだ」

スマーティがレイジにそう指示を出して、S14ではなくアリストを追いかける!


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