Trip quest to the fairytale world第2部第14話


バトルしていた区画の雪は実物らしいが、積もっているのはこの埠頭のこの一角だけだし

積雪量もうっすらと積もっているだけなので朝になる前に消えてしまうだろうとの見解が麗筆から出た。

そして麗筆が「帰る前に東京見物がしたいです〜」と言い出した。勿論Dちゃんも一緒である。

とは言うもののさっき麗筆に言った通り、2人は明日は仕事なのである。

アレイレルは夜の仕事なので夕方まで付き合う事が出来るが、ハールは逆に朝からの仕事なので

2人で観光案内を分担する事にした。

まずはサブリーダーのアレイレルが東京の観光スポットを案内する事にして、一先ずハールの

マンションへと向かって麗筆とDちゃんを泊まらせる事にした。

「1つ言っておくけど、今度君の声が僕の脳内に入る様な事があったらガスバーナーで焼くからね?」

流石にこれ以上寝不足にはされたくないハールは、Dちゃんに「妙な笑顔」でそう忠告してからさっさと眠りに就く。

とは言いつつもDちゃんは麗筆に見張られながらの就寝になったので、手を出そうにも

出来なかったのが実際の話なのだが。


そして翌日の朝。

ハールのマンションまでアレイレルがソアラで迎えに来て、日本の首都である東京観光がスタートする。

東京都の人口は日本の10分の1に該当すると言われており、実に10人に1人は

東京に住んでいる東京都民と言う事になる。

当然人口密度もぶっちぎりでトップを独走する。

それだけ首都と言う位置づけは大きく、日本国内における最先端のビジネスもファッションもブランドも

テクノロジーも何もかもがこの東京から生まれたと言っても過言では無い。

それに東京にはカナダからやって来たハール、それからアメリカからやって来たアレイレルの様に

世界中から人間が集まって来る都市でもある。

それは旅行であれ、日本への一時的な単身赴任であれ、ハールとアレイレルの様に永住を決めた人間であれ変わらない。

何せ、東京は日本のみならず「世界の都市総合力ランキング」においてもロンドン、ニューヨークに続いて

3位にランクインすると言う快挙を成し遂げ、アジアの代表格の都市と言える存在だからだ。


そのランキングからも分かる通り、世界中から東京に集まる外国人は毎年後を絶たない。

ハールもアレイレルも20年以上この日本に住んでいるだけあって、永住を決める外国人も毎年増えている。

そんなハールとアレイレルは、最早東京が地元と言える位に東京……特に東京23区に精通している人間であると

言えるのだが、そこはやはり外国人として初めて日本にやって来た時の記憶を思い返して様々な観光スポットを見回ってみる。

アレイレルが運転するソアラは台東区植野にあるハールの酒屋を出発し、まずは何と言ってもここは外せないだろうと言う

観光スポット、浅草の雷門へと向かう。

雷門にかかる大きなちょうちんが浅草のシンボルとなっていて、このちょうちんは実に700キログラムもある。

そのちょうちんの下で写真撮影をした後、雷おこしを食べてみたり江戸切子を見てみたりして浅草の観光は終了。

麗筆曰く「インキュナブラにも懐かしい場所がありましたので、何だか懐かしい気分になれましたよ」との話である。

ちなみにDちゃんは人混みやちょうちん、それから浅草の光景が楽しかったらしくかなりはしゃいでいたが、

観光客がわんさか居る中で子供の声がするのは当たり前の話なので別に誰に見咎められる事も無かったのは

ありがたいとアレイレルは思っていた。

(まさか、喋る本が居るなんて事が分かったらそれこそビッグニュースだからな……)


続いて向かうのはそこから近いスカイツリー……では無く、今度は西側へと向かって渋谷へ。

上野動物園にも行こうかと思ったのだが、考えてみれば喋る兎だのゴツゴツした鹿……それも上半身が鹿だのと言う

奇妙な存在がわんさか居るインキュナブラに比べれば普通の動物を見ても味気無いだろう、と言う

アレイレルの独断とちょっとの偏見で上野動物園行きは無しになった。

そんな独断と偏見があるアレイレルが運転するソアラは、渋谷のスクランブル交差点へとやって来た。

若者の町と言う事で渋谷109を始めとした多数の店があるのだが、渋谷の名所と言えば何と言ってもこの交差点であろう。

たかが交差点と侮ってはいけない。縦、横、そして斜めと人が一斉にスタートして交じり合うこの交差点は

日本の中でもこの交差点位だろうと言われている。

そして青信号の点灯時間もなかなか短めなので、あんまりのんびりしていると渡りきれなくなってしまう可能性も高い。

実際にアレイレルに続いて麗筆もスクランブル交差点にチャレンジしてみたのだが、見事に人の流れに飲み込まれて撃沈。

そもそも人混みが余り好きでは無い麗筆にとっては、ここの観光スポットは余りお気に召さなかった様である。

DちゃんはDちゃんで人混みに対してはしゃいでいた。

そんなこんなでアレイレルはそろそろ仕事に向かわなければならなくなったので、一旦上野に戻って夕方からはハールに

東京観光、夜の部を担当して貰う為にバトンタッチだ。


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