Trip quest to the fairytale world第2部第4話
備北ハイランドサーキットに場面は戻る。
Dちゃんの触手はノコギリでは切れない!!
「こうなったら……これしか無い!!」
そう言いながらアレイレルが自分のソアラのそばから持って来たのは、予備として持って来ていた携行缶のガソリン。
得体の知れない不気味な本を地面に足で押さえつけて、ハールを助ける為に止むを得ない行動に。
「ちょ、絞まる絞まる!!」
そんなハールの叫びを耳にせず、ガソリンをDちゃんに少しぶっかけてライターで着火!!
「あっついって! 熱いって!!」
一部が燃え上がるDちゃん。しかし触手が緩んだみたいなのでその隙にハールは叫びながら脱出。
アレイレルは消火器で消火。本は少しだけ燃えたらしい。
まだ喋れるのだろうか?と考えながらハールとアレイレルがDちゃんを見てみると、どうやらまだ喋れるらしい。
そして怒り狂っている。
『よくもやってくれたわね……!もういい、いたぶって楽しもうと思ってたけど、二人とも空っぽの人形にしてあげる!!』
ひどい耳鳴りがして、アレイレルとハールは気絶してしまいそうだ。
大気を細かく振動させているのはどうやらこの本のようだった。
「うぅぬ……!? な、何だこれは!?」
「うぐぅ……ああぅ……アレイレル、踏め!!」
耳鳴りに苦しめられながらも、触手から解放されたハールと解放したアレイレルは思いっ切りその本を踏みつけまくる。
プラス、その本を手に取ったハールは砲丸投げの要領で雨の降るピットの水溜りに本を投げ捨てる。
「あー……やっと静かになったよ」
安堵の表情を浮かべて安心するハールだが、Dちゃんはまだまだ何かを企んでいる様だ。
『(ページが乾いたら別の誰かを操って好き勝手してやるぅ。女の子がいいんだ、女の子が!! 男は操っても面白くないの〜〜!)』
しかしその声は漏れていた!!
「おい、こいつまだ何か言ってるぞ」
「んーーーーーーーー、この本ってさぁ、地球に無い「何か」なんじゃない?」
何かを確信したハールのそのセリフに、内心でDちゃんがドキッとしつつも何とか平静を装う。
『なん……のことぉ? わたし、よくわからない〜! わたしに何かしたら体の穴を増やしちゃうわよ!』
だけどその平静がハッタリだと言う事はハールにもアレイレルにもモロバレである。
「……動揺してるな」
「ああ、してる」
その証拠に2人も真顔。そして何かをまた準備し始める。
「身体の穴増やす前に消し炭にするほうが先かも知れない」
「サーキット終わったら近くでバーベキューしようと思ってたし」
アレイレルは冷静な口調でガソリンタンクを準備し、ハールは着火マンをゴソゴソと取り出した。
『ちょっとぉ!!! ふざけないでよ! やめなさい! やめてぇ!! 何でもするから……お願い……! わたし、死にたくないよぅ……』
泣き真似をしだすDちゃんだが、アレイレルが思うにはかなり怪しいと思わざるを得ない泣き方である。
「……ほんとに泣いてるのか?」
『うぇえん……お願い、やめて……』
そう思いながらも、Dちゃんの考えている事はおぞましいものであった。
『(火さえ手放させてしまえば、あとは触手で脳みそかき混ぜてぶっ殺してやるよ、野蛮人め!!
特にアレイレル……苦しんで汚物撒き散らして死ねっ……!)』
何かを感じ取ったアレイレルは、ハールに対して英語でこう尋ねてみた。
「……泣いてる奴ってうええんとかって言うか?」
「言わないと思う」
超がつく程の真顔で答えるハールだが、アレイレルはハールの表情に違和感を覚える。
「え、お前納得したの?」
「してないよ」
そう疑問を投げ掛けたアレイレルに、ハールは真顔のままきっぱりと答える。
「で、どうすんの?」
「トランクの中突っ込んでどっかに捨てに行く」
この後の予定をアレイレルに聞かれてそう決定したハールを見て、Dちゃんはまた泣きまねをしながら心の中で悪態をつく。
『手荒に扱わないで〜(チャッカマン放せよくっそ……!)』
「何かまだ何か考えてる気がするんだよなぁ……こう言う雨の日ってバーベキューするには
ちょっと火力が足りないからなぁ……なかなかこう言う日は火が点かないからなぁ。何て火だ」
「面白くないよ」
「面白きゃ良いってもんじゃないだろ」
日本語でジョークを言うアレイレルに凄く冷めた目でハールが突っ込むが、アレイレルはそんなつもりで言った訳でも無いらしい。
そう真顔で言ったアレイレルに、ハールはこう尋ねてみる。
「ガソリンはちょっと危険だから、他に何か燃えそうな物ってあったっけ?」
「……」
「気は使うわ、火は着かないわってなるとねぇ。で、捨てに行く先は?」
Dちゃんをいわゆる「ジト目」でジト見するアレイレルに、ハールはDちゃんを捨てに行く先を聞いてみる。
尋ねられたアレイレルは、岡山県の地理を考えて真顔でこう答えた。
「児島湾だろ」
しかし、Dちゃんにとっては捨てられるなんて御免であるのは間違い無い。
『(チッ……! 水に沈められるなんてゴメンだわ。さっさと転移したいけど、あのトランクの中で乾くかしら)』
何とかこの状況から脱出する手筈を考えるDちゃんだったが、そんな時に思わぬ来訪者が
備北ハイランドサーキットに現れたのはすぐの事だった。
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