Traitor and Escape第6話
バランスを崩して何とか落っこちそうになる所で仁史は体勢を立て直して、イグナシオが向かって来るので
立ち向かうしか無くなってしまった。
このつるつる滑る硝子板の床だが、それでも何とかバランスを保てば戦えない事は無い。
「俺の計画を滅茶苦茶にしやがってええええ!!」
ハンドガンを取り出して向けて来るイグナシオだが、仁史はその銃口の向きを察知して
ほぼ勘と運だけで瞬間的に回避。 そこから思いっきり前蹴りを入れてイグナシオを蹴り飛ばす。
しかしイグナシオのガタイは仁史よりも1.5倍程良いので余り吹っ飛ばない。仁史は割と細身の方なのだ。
「するぅ!!」
それでもそのまま接近して右のパンチでハンドガンを弾き飛ばし、更にイグナシオの顔目掛けて左からフックパンチ。
でもイグナシオは余り怯まず逆に仁史の顔面に飛び蹴り2発。
「うお、おっ!?」
シーソーのバランスが崩れるが素早く中央付近に戻ってバランスを戻す。
よたよたする仁史にパンチを右、左、そして右の回し蹴りを繰り出すイグナシオだがそれを全てギリギリで仁史は回避。
更に右のパンチをイグナシオが繰り出して来た所で、仁史はそれを回避しつつ懐に飛び込んで首から
ラリアットでイグナシオを倒す。
「ぐぁ!」
踏ん張るイグナシオは足を振り上げて来るので仁史は少し後ろに下がって回避。今度は左のパンチを
イグナシオが繰り出すが、 今度は拳の部分をキャッチして腕ごと捻り上げる。
そこから拳を右手で掴んだまま、仁史の左ストレートパンチが的確にイグナシオのみぞおちへと5発入る。
更にそのパンチに使った左手をそのまま使ってイグナシオのジャンパーのフードの下にある首をキャッチして固定し、
全力の頭突きを4発。
「仁史っ!」
「うわ、無茶するなぁあいつ…!」
下を覗き見たエヴァンとアランだが、仁史とイグナシオはなんとか無事のようだった。
だが、そのままファイトを続けているようだ。
「どうしよアラン……加勢してえけど、撃ったらさすがにまずいよな…」
「まずいだろ…って、うわっ!?」
突如周囲を爆音と熱が包む。見ると、撃ち落とされたヘリがこちら側に堕ちてきているようだ。
二人の頭上を通過し、硝子板のほうへ堕ちていく。
「ぐぅう・・あ・・ああが・・・っ」
脳震盪を起こしかけているふらふらのイグナシオの背後に回り、彼の背中目掛けて仁史は前蹴りで蹴り倒す。
・・・・が、その時空から思いがけない乱入者が!!
「う・・おっ!!」
何と、さっきのヘリコプターが煙を上げて硝子板に落っこちて来た。咄嗟に仁史は硝子板を吊り下げているワイヤーロープに
飛び付く。しかしイグナシオは身体を動かす事もままならず・・・・。
「う・・おあああああああーーーーーーっ!!」
硝子板に直撃したヘリコプターは勿論ガラスを割り、掴まる所を見出せないままイグナシオはヘリコプターの残骸と共に
10階下の地面へと落っこちて行った。