Traitor and Escape第4話
「ウェズリーは知っているみたいだな。他の3人は不合格。・・・で、何でこんな話を唐突に振ったのかと言うとだ」
仁史はそう言いながら、ダクトから降りた通路をぐるりと見渡す。
「誰に見られているか分からない。何処で聞かれているか分からない。
今の状況でもそれは同じだ。そう、例えば・・・こことか」
そう言って、仁史は手近なドアを思いっ切りバガァン!! と凄い音をさせて蹴り開ける。
「ぐぅあ!!」
何とそのドアの後ろでは、一同に奇襲を仕掛けようとしていた敵が待ち構えていたのであった。
「何かさっきから背中の方に視線を感じると思えば。さぁ、急ぐぞ」
余り熱くならないタイプの仁史は今の状況にも殆ど動じず、辺りの気配を探りながら歩き出した。
通路に湧く兵士たちを倒していき、開けた部屋に出る。すると、そこには見慣れた顔の人物がいた。
「キース……と、…キャサリン……!?」
アランが呆然と呟く。
「思ったよりは早かったな。だが、まだまだ及第点には届かないぞ」
そう言葉を残して去ろうとするキースの足元に、ジョルジョが放った銃弾が飛ぶ。
「悪いがあんたたちを逃がすわけには行かない。いろいろと聞きたいことがあるんでな」
だが、キースはそれでも何時もの様に冷静沈着だ。
「言葉を返すが、俺もお前たちと遊んでる暇はないんだ。やるべきことがある」
そのセリフを横で聞いていたキャサリンが、にっと笑みを浮かべて宣言した。
「それじゃ、私は先に行ってるわよ」
「あっ、キャサリン!待てって!」
部屋を走り去るキャサリンを追うようにエヴァンが駆け出す。
キースも続こうとしたが、今度はアランとウェズリーに妨害される。
「おぉっと、いったんストップだぜ」
「ジョルジョ、先に行け」
その言葉を聞いたジョルジョは頷き、エヴァンの後を追っていった。
残されたキースを援護するように兵士が湧き出てくる。
「ゆっくり俺らと遊んでったっていいんじゃないの?つれないよなあ?」
「できれば、あんたとだけ話がしたかったんだが……野次馬が多いな?」
仁史は銃弾の飛び交うエントランスを離れ、敵の居ない方から再び別ルートを探す。
(・・・・上に行ってみるか)
VSSEの連中が暴れ回っている事で、敵の様子は上の方には感じられなかった。
(こっちの方は大丈夫みたいだ。あいつ等はあいつ等で心配だが、そうそう簡単に負ける奴等でもあるまい)
だがそんな仁史の目の前に、1人の男が姿を現わした。
「何処へ行くつもりかねぇ?」
「・・・御前は!!」
そう、この施設に連れて来られた時に自分の荷物を奪い去ったと思われるVSSEの裏切り者・・・・イグナシオだった。
その頃、キャサリンを追って奥へと進んだジョルジョとエヴァンだったが、突如ジョルジョの怒声が飛ぶ。
「……っ下がれ!」
「え……っ、う、おわっ!」
甲高い電子音とともに、先を走っていたエヴァンの真上の天井が爆発し、壁が崩れ落ちてしまったのだ。
「これじゃ向こう行けないな……どうするよ?」
「確か向こうにわき道があったはずだ。戻ってそっちを行くぞ」
ジョルジョの指示に従い、エヴァンも来た道を戻り出して行った。