Soldiers Battle第7話
ラルソンやジアルが山の中腹部で戦っている頃、ヴィンテスとパルスは山脈の探索を進めていた。
「見つかったら、ジェバーに持って行けば良いんだっけ?」
「ああ、そう言う手筈だ」
せっせと山脈を掘って行く2人とその部下達であったが、彼等もまたふと異様な気配に気が付いた。
「……ん!?」
「おい、これって……」
「何だかやばそうだな」
もしもの時の為にヴィンテスは弓に手をかけ、パルスは腰の短剣をしっかりチェックする。
「殺気だな」
「ああ。俺達に向けられているのが丸わかりだ」
そんな殺気を発している主は、次の瞬間大勢で角笛の音と共に襲い掛かって来た。
「くっ! 敵襲だ!」
「総員戦闘開始! 迎え撃て!」
それと同時にヴィンテスとパルスもそれぞれ武器を構えるが、敵はその殺気の
主だけでは無い事をすぐに思い知る事になる。一緒の部隊で行動していた
王宮騎士団のメンバーが、武器を構えて敵として襲い掛かって来たのだから。
「うわあっ!」
「くっそ!」
更に敵が増えた事に動揺しつつも、敵を迎え撃つヴィンテスとパルスとその部下達。
武器が交差し合い、兵士が倒れて行く。
それを横目で見つつも、ヴィンテスは弓を引き絞って矢を飛ばし
遠くのアーチャーを射抜いた。
パルスは短剣だけではとても対処しきれない為に、自分が使う事の出来る
攻撃魔法を最大限に利用して敵を殲滅して行く。
ヴィンテスもパルスと同じく魔法を使うのだが、彼は回復魔法を
使うので攻撃には向いてないのである。
「フレイムランス!」
パルスが詠唱し、次の瞬間炎の槍が敵に向かって飛んで行く。
こう言った登山道の様な狭い道ではどちらかと言えば、一直線に飛んで行く
魔法の方が効率的に威力を発揮する。
正義感が上官のラルソンよりも強い事で知られているパルス・セレラーク。
26歳でジアルの側近を勤めている兵士部隊員で、ヴィンテスと一緒に側近として
コンビを組んでいる。ヴィンテスとは対照的な性格の彼はどんどん前に出て行く
積極的なタイプで、その正義感の強さから困っている人間を見ると放っておけないので
何にでも首を突っ込みたがりその度にヴィンテスに止められている少し厄介な性分でもある。
武器に関しても遠距離と回復担当のヴィンテスとは180度違うタイプで、短剣と攻撃魔術を
得意とする接近型の前衛タイプ。基礎練習はヴィンテス程では無いにせよなるべくする様にしているが、
それ以上にどれだけ相手の懐に素早く飛び込めるかを考えて戦う様にしているので兵士部隊の中でも
彼の攻撃スピードに関しては群を抜いている1人として有名だ。元々田舎から都にやって来た人間で、
開放的な大自然の中で育ち山の中で遊んでいた事が多かった為か、その足腰の強さが今のスピードに
繋がっているのでは無いだろうか、と上官のジアルは評価している。
そしてそのまま大部分の王宮騎士団の騎士達と、見慣れぬ服装をしている
襲撃者達を全員殲滅する事に成功した2人。
が、その襲撃者達の服装をもっと良く見てみると、ある記憶が蘇って来た。
「な、なぁ、この服装って……」
「俺達、この前見なかったっけ?」
そう、カルヴァルを尾行して路地へと入って行ったあの時。
カルヴァルの陰に隠れて良く見えなかったものの、この色取り取りのジャケットと
黒いズボンの服装には、まさか……と思わざるを得ない2人であった。
しかし、今はそんな事を思い出している余裕が無い事に気が着く。
「はっ、ラルソン副長とジアル隊長は!?」
「上の方に……と言う事は、2人も俺達と同じく狙われている可能性が高い!!」
そんな予感がして、ともかくその2人と合流しようと生き残った部下達を
引き連れて山を登り始めるヴィンテスとパルス。
だが、そんな兵士部隊の中腹部への進軍を邪魔する者達が道中に現れるのだった。