Soldiers Battle第12話


ローレンはジアルに向かって行き、愛用のハルバードを振りかざす。

ここで注目したいのはその実力差。

ジアルは兵士部隊の総隊長、ローレンは近衛騎士団の団長である。

幾ら団体のトップに立つ人間だからと言っても、その実力差には天と地程の差があるのは

戦っている2人も観戦している2人も分かり切っている事である。

だがそれでも、ジアルはこの目の前の裏切り者を到底許す事は出来ない、と言う表情をしている。


副総隊長であるラルソンとは兵士部隊の門を一緒に叩いた同期であるが、実際は

自分の方が3つ年上であるジアル・ベリウン。兵士部隊に入隊した当初からの腐れ縁として、

年の差はあれども普段はコンビを組んで活動している。実家は代々農業をしている家系であるが、

3兄弟の三男である彼は農業は継がずにその農業の手伝いで培った体力を活かせる仕事に

就きたいと思い18歳の時に入隊。そこからラルソンと競う様にお互いに切磋琢磨しあい、3年前の

盗賊討伐任務の時にトップの成績を残す事に成功。その27歳の時に総隊長に就任した彼も現在30歳。

そろそろ結婚も考えているがなかなか相手が見つからないらしい。農作業ではクワを振っていた彼も今では

剣を始めとした武器を振るう様になっているが、剣よりも槍の方が自分ではしっくり来ると言う事で主に槍を

愛用の武器として使っている。冷静沈着な性格であり、戦場においてはクールに的確な判断を下す事で有名である。


「くっ!」

「どうした、その程度かジアル?」

ハルバードの斬撃をギリギリで受け止めるジアルだが、それによって若干体勢を崩した所に

左ミドルキックが腹部に綺麗に入った。

「がはっ!」

後ろに吹っ飛ぶジアルだが、その先には岩の壁。

背中をしたたかに打ち付け、一瞬意識が飛びそうになるが気合いで何とか持ち堪えた。


しかしローレンの凶刃はまったく休まる事を知らずに、ジアルに隙を与えない様に

する為にも素早く襲い掛かって来る。

必死になって自分の槍でかわし、受け止め、弾くジアルだが、疲れ具合は明らかに

ジアルの方が出て来ている。

それを証明するかの如く、苦悶の表情を浮かべるジアルの顔には汗が流れて来ていた。

対するローレンは汗1つかいていない。


「足元がふらついているがな?」

そんなローレンの言葉が自分の耳に届いたかと思った瞬間、

ハルバードで足を払われるジアル。

仰向けにジアルは転がり、そこにハルバードの先端を突き立てようとするローレン。

が、すんでの所で横に転がってかわしたジアルはそのまま横になった

体勢でローレンの足を蹴りつけた。

「ぐっ!?」

思いもよらない所からの反撃で一瞬ローレンの動きが止まる。


それを見逃さなかったジアルは、槍の先端をローレンの腹目掛けて突き刺す。

「がはあっ!?」

軍服の下には鎧を着込んでいるのでそれほど痛みも感じないローレンだが、

明らかな隙が出来る。

ここからジアルは、ローレンに対して猛ラッシュをかけて行く。


槍を突き出し、足を払い、飛び蹴りをかましてローレンに隙を与えない様にする。

速さに速さをかけたコンビネーション技だ。

ローレンも防いではいるものの、先程とは違い疲れて来ているのでだんだんと

動きにキレが無くなって来ている。

(くそ……っ!!)

ローレンの顔にも先程迄には無かった焦りの色が浮かんで来ている。


だが、それを横合いから邪魔する影があった。

ヒュッと風を切る音が聞こえたかと思うと、次の瞬間には1本の矢がジアルの

右太ももに突き刺さった。

「ぐああああっ!?」

その矢を放ったのは、今まで観戦していた筈のカルヴァルである。

「まだまだだな、ローレン。さっさと止めを刺すんだ」

それを聞き、ローレンは頷くとジアルに向かってハルバードを構えた。


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