Secret Data Battle第8話
後日。指定された港の一画に到着したキース、そしてマークは、目的の人物と、もう一人の存在に気がついた。
「……俺も人のことは言えんが。考えていることはお互い様のようだな」
約束の日。コルベットに乗って横浜の本牧埠頭にやって来た渡辺はVSSEからの刺客を助手席に座る人間の姿の
ファーレアルと一緒に待っていた。
「・・・あいつ、本当に来るかな」
『私には分かりかねますが・・よほどそれが大事な情報であれば、取り戻しに来るでしょう』
「・・・だな」
渡辺の誘いにはどうやら乗って来た様で、本牧埠頭にヘリコプターが1機着陸する。VSSEのロゴが入っているので間違い無い。
だが、約束は守ってもらえなかった様だ。
「・・・俺は1人で来いと言った筈だ。約束が違うぞ」
ヘリコプターから降りて来たのは、キースだけでは無かったのだ・・・・。
「俺は立会人だ。そう言うなら、そいつはどうなんだ。お互い様だろう?」
マークは渡辺の隣にいる人物を見やる。
「備えあれば憂いなし、というやつだ。もちろんこいつは見ているだけだからその点は安心していい。……約束の物は持ってきてくれたか?」
「・・まぁ良い。御前等が欲しいのはこれだろう」
ポケットからガサゴソと取り出したUSBメモリースティックを掲げる渡辺だが、キースが受け取ろうと近付いて来た所で素早くファーレアルに投げ渡す。
「・・・・誰もただでやるとは言ってないぞ。元の動画と画像データのUSBと交換、そしてこの中のコピーも俺が貰う。
VSSEの機密情報に関しては前も言ったが、俺は興味無いからな」
それを聞いたキースが元データの入ったUSBを掲げる。
「……これだろう?だが、これをそのまま渡してしまっては俺の面目が立たないからな。勝負して勝ったら、……で、どうだ?」
「何だ、お互い考えている事は同じだったみたいだな」
納得した渡辺はキースがマークにUSBを渡すのを確認し、人気の無い埠頭の一角で向かい合った。
「ルールは俺とあんたのタイマン。場所はこの辺りだけだ。せっかく連れがお互い居る訳だし、マークと
ファーレアルにフィールドの目安として立ってて貰うとするか。ファーレアルは手を出さない。
そっちもマークは手を出さない。別にそっちは素手でも拳銃でも何でも良い。俺はこの身体だけで勝負する。
余りにやばい所まで来たらその時は止めに入って貰うけど。それで良いか?」
軽くストレッチをして身体を温めながら、渡辺はキースに問い掛けた。
「ああ。それで構わん」
マークにUSBを渡し、ちらりとファーレアルのほうを向いてフィールドの中央に自分たちが立つ状態になるように
位置を指示し、向かってもらう。自分の武器のハンドガン、手裏剣、そして日本刀の状態を確かめ、
準備運動をして、緩く構え渡辺と対峙する。少しの静寂が間を包み、聞こえるのは微かに風が海を凪ぐ音だけだ。
「………はっ!」
自身が最高に動けるタイミングを見計らって、一呼吸で駆け出し、距離を詰めた。
先に動いたのはキースだった。冷静沈着な性格のキースは誘い受けの体勢かと思いきや、意外と攻めて来るタイプらしい。
しかし黙って突っ立っている渡辺では無いので、突っ込んで来るキースをしっかりとかわす。
自分から承諾したとは言え、日本刀相手ではリーチ的に厳しい物がある。
一先ずはキースの背後を取りたい所だが、やはり元SASの隊員、そしてVSSE伝説のエージェントと言うだけの事は
あってなかなか背後に回らせようとしない。だったら一旦距離を置いて・・・と思えば今度はハンドガンによる銃撃、
それから手裏剣のブーメランまで飛んで来る。
(厄介だ)
遠距離も近距離も出来る万能タイプなら、自分は超接近戦に持ち込むしか勝てそうに無い。