Secret Data Battle第7話
とある昼下がり。あの事件の後片付けも終わったVSSE本部。
ベテランのエージェントであるキースに呼び出されていたアランたちは、彼の到着を待っていた。
待ち合わせ場所に現れた彼の口から出た言葉に、頭を抱えざるを得なかったのだが。
「すまん。先日渡辺に奪われたUSBなんだが、VSSEの機密情報を入れっぱなしにしてしまっていた」
「………はぁ?」
「うっそだろ」
「あんた…」
「いい加減にしてくれ…」
「何でだよ…」
「やってくれたな……」
次々と怨嗟の声が飛ぶ中、発端であるキースはとにかく、と一度手を鳴らして喧騒を静める。
「原因は俺だからな。俺一人で行って、なんとかしてくる。だが、一応立会人も欲しい。
ウェズリーかジョルジョかマーク、ついてきてくれないか」
「おいっ!なんで俺たちは外すんだよ!」
自分の名前が挙げられなかったことに反射的にルークが噛み付くが、キースがさらりと言った一言で
余計に火に油を注ぐ結果となった。
「あいつと戦うことになるかもしれん。そうなった場合、お前たちはちょいちょい口を挟むだろうからな」
「確かに……懸命な判断だ」
「いや、オッサン納得すんなよ!?」
ちなみに予定日はこの日だ、と提案されて、マークが手を上げる。
「なら、俺が行く。予定が空いているのが…俺しかいないようだからな」
ウェズリーもジョルジョも首を振っているのを確認し、キースが口を開く。
「後でメールを送る。ああ、もう各自解散してくれていい」
「……なんで俺たち呼ばれたんだろうなぁ」
「一応内容を伝えておこうと思ったんじゃないか?」
「ならメールでよくね!?俺の貴重な時間ー!」
「お前はその貴重な時間をもっと別のことに使う気持ちを持て」
「オッサン言うねえ…」
好き勝手言いながら部屋を出ていくアランたちの背中をちらりと見やりながら、キースはどうしたものか思案していた。
「・・・・・・」
なめてるよなー・・・と渡辺は思わずには居られなかった。あのVSSEでの本部でのバトルの時に奪って来た
USBの中には、VSSEの内部情報やミッションに関する情報がわんさか記載されていたからである。
「それをこんな卑猥な動画や画像と一緒に入れておくって、無用心と言うか、バカって言うか・・・・」
あいつ等の事を買いかぶり過ぎていたのかなと思いつつも、届いたメールの内容に目を通す。
「行きたくない・・・・けど、行かなきゃ強制的に踏み込んで来るって言うのか」
それもやだなーと思ったので、取りあえずはキースに「絶対に1人で来る様に、それから元のデータと交換だ」とメールで念を押しておく。
「1人で来なかったら返さない・・・と」
こっちはこっちで何か対策を練らないとな、と思いながら自分の家に居候している人間の姿になっているファーレアルに声をかける。
「・・・・と言う訳だ。何かあった時の為に立ち会って欲しい」
『分かりました。向こうは大人数で来る可能性も考えられますよね』
「あー、全くだ」
あーあと首を捻りながらも、取りあえずは予定日までの期間を何事も無く過ごす様に努める渡辺であった。