Run to the Another World in Playing Cards World第7話


「えっ……はぁ……え!?」

また視界が暗闇に包まれる。もう慣れてしまった自分が怖い。

そう思いながらも一体次は何処に向かうのだろうか?

良い加減にして欲しいと心の中で思いながらも、次にやって来る光に目を1度ぎゅっとつぶる。

そしてその光に目が慣れて来たと感じた和美が目を開けてみると……。

手には何か柔らかい感触。

と言うよりも、地面に接している部分全てに柔らかい感触があった。


「こ……こは……」

辺りを見渡してみれば、何やら緑色を基調としている城の庭みたいな場所にある畑に

和美は落ちてしまっていた様である。

(何でこんな場所に畑があんねん?)

城の中庭に植物が咲いている花壇がある……とか言うなら話は分かるし、実際に畑から見える場所に

花壇が存在しているのが和美にも分かった。


しかし、流石に畑がある城と言うのは聞いた事が無い。

とにかく状況把握の為に立ち上がりつつ辺りを見渡すと、誰かが足早にドスドスと荒々しく駆けて来る音が

聞こえて来て和美はその音の方に目をやった。

「きぃいいさぁあああまぁあああああああ!!!!!!人が大切に育てた畑を荒らすなんて

死刑だァあああああ!!!!」

物凄い怒鳴り声に、綺麗な顔を怒りに歪めて足早に向かってくるリュシアンの姿。

そして、クワを両手で抱えて上げていた。

そのままの勢いでクワを和美に向かって振り下ろすが、和美に避けられバランスを崩して前転しながら

畑に倒れたのだった。


「い、たぁ………痛い………」

涙ぐみながら、リュシアンは顔の泥を拭った。

それを見て和美は……。

「お、お、ちょちょちょちょちょ、ちょい待ち!!ななな何やねん!?ここってあんたの畑なんか!?

そ、それはあかんかった。だから落ち着いて!」

そう言いながらクワを避けた和美だったが、目の前でリュシアンが倒れてしまいそっと声を掛ける。

「……あ……だ 、大丈夫……?」

すると、いきなりリュシアンがガバッと起き上がった!!


起き上がったリュシアンは声にならない悲鳴みたいな怒鳴り声を上げ、和美にガーッと詰め寄って来る。

しかし、そんな和美とリュシアンの元にまた駆け寄って来る人物の姿が。

それは眼鏡をかけていて髪の毛が長い、男……なのか女なのか見分けがつきにくい人物が

優雅な足取りで歩いて来た。

「おや?陛下はまた畑仕事に夢中です?そちらの方は、新しい使用人かな?」

現れたのはリーンハルトだった。

珍しく仕事場から顔を出した彼は、久し振りに顔を見た主に声をかけながら和美の横に立った。

「リーンハルト………」

リーンハルトを見てリュシアンは嫌な顔をした。


「使用人………とは違うね。複雑な魔法がかけられてる」

リーンハルトがまじまじと和美を観察するように見た。

その様子をリュシアンは見ていて、自分が怪力女と言っている和美だと気づくのに少し時間がかかった。

「怪力女!?なぜ貴様がいるんだ?」

リュシアンが詰め寄ろうとしたら、リーンハルトに片手で制される。

「キミ…異世界から来たんだね?」

リーンハルトは、何かがわかったかのようで和美にそう聞き訪ねた。

「……魔法……?」

和美は突然現われたこの男が、一体何を言っているのかさっぱり分からなかった。

しかし、あの黒月とか言う不思議なキャラが何かをしたと言うのは今までの経験の中で理解出来ている。

そして自分が異世界からやって来た、つまり自分が居世界に来てしまったと言う事を和美は

はっきりとまた思い知らされる事になった。


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