Run to the Another World in Playing Cards World第8話(最終話)


「え、あ……ええーと、私はフードを被ったふざけた喋り方する男に指パッチンされて、

気が付いたら色々な所に飛ばされて来てるんですよ。で、このクラブ国に来たのは2回目なんですけど、

一体あの男は私をこれだけ振り回して何がしたいのかさっぱり分からんのですわ。

畑を荒らしてしもた事はあやまらなあかんけど、私も色々な所に飛ばされ過ぎてそろそろ

落ち付きたいんや。何が起こってるのか、貴方はもしかすると分かってはるんですか?」

関西アクセントバリバリの標準語、そして最後にはやっぱり関西弁に戻って聞いてみた和美に対して

リーンハルトとリュシアンに呼ばれた男は自分の分かった範囲の事を話し始めた。

「わぁお!ジークとは違ったなまりだね。うーん、興味深いけど困ってるみたいだし簡単に話してあげよう。」

リーンハルトは自然な動作でリュシアンの服についた土を払い、畑から少し離れた木陰に和美を案内した。


「キミにかかっている魔法は、2種類あるね…黒月っていう男がかけた魔法と誰かわからないけど、

多分一番最初にかけられた魔法?かな。最初にかけられた魔法に、黒月の魔法が悪戯に上書きされてるね。

おそらく、この複雑に混じった魔法がキミをもとの世界に戻れなくしている。変な男に目をつけられたね。

それと、この世界に来てしまったのは変な男のせいじゃない、また別にキミを悪戯に連れてきた者がいるね…誰かは知らないけど」

リーンハルトは、そう話すと

「まぁ、僕ならその魔法解いてあげられなくもないよ?その悪戯な魔法を解けば、最初にかかった魔法に戻って、

おそらくもとの世界に戻れるよ」

簡単簡単と、にっこりと笑い話すリーンハルト。


「な!貴様に魔法がつかえるのか!?」

側で聞いていたリュシアンは、目を丸くしていた。

「さぁ?陛下は少し眠っていて下さい」

「は?……………すぅ」

リーンハルトがリュシアンに向かって掌をかざすと、リュシアンは急に膝から倒れて眠ってしまった。

リーンハルトは口元に人差し指をたててイタズラに笑うと、和美の胸ポケットに刺さった薔薇をその指で差し示す。

「その薔薇は、キミを黒い魔法から解放してくれる、魔法の守りがかかっている。その薔薇に僕が力を加えてあげれば、

もとの世界に戻れるはずだよ?」


そう言われても、和美はまるで理解が追いつかない。

「……さっぱり意味が分からん。つまり、私に掛けられたその魔法を解けば私は元の世界に帰れるっちゅー事やね?

そしてその魔法を貴方が掛けてくれる、と。それだったらお願いします! 私を元の世界に帰して欲しいんです!!」

和美は土下座せんばかりの勢いでリーンハルトに頭を下げた。

「うーん、難しい話は今はする気になれないから、ちゃちゃっと帰してあげる」

そう言って、リーンハルトは和美の胸元にある薔薇を一輪取り和美に向けると、フッと息を吹きかけた。

その瞬間、和美の姿はリュシアンのコートだけを残して跡形もなく消えてしまったのだった。


「……あ、あれ?」

目が覚めると、和美は自分が寝ていた会社の仮眠室で朝を迎えていた。

一体今までの出来事は何だったのだろうか?

自分はそんなに長い間、あんな不思議な経験をする様な夢を見ていたのだろうか?

何が何だか分からないまま立ち上がった和美だったが、その自分が寝ていた場所を見た瞬間に彼女の目が見開かれた。

(……何や、これ……)

その寝ていた場所に着いていた物は、この場所で寝ていたなら絶対に着かない筈の土であった。

そしてその土の中には、あの胸元で持っていた薔薇の花びらが確かに存在していた。


それを見て和美は全てを悟り、まずは掃除と着替えから始めるべく仮眠室を出て行ったのだった。


Run to the Another World in Playing Cards World 


HPGサイドへ戻る