Run to the Another World in Playing Cards World第4話


―クラブ国 国王執務室

「うわぁっ!!?」

執務に飽きてお茶を飲んでいると、急に目の前に人の姿が現れた。

一気に目が覚め、その人間を見ると

見覚えのある顔だった。

「き、貴様は………!確かあの時の怪力女!?」

リュシアンは、目を見開いて驚いた。


「……ん、あ、あれ、あ……え?」

目の前に見えるのは何処かで見た様な緑色の頭。

その緑色の頭の持ち主の顔を光に段々慣れて来た目で見てみると、ずっと前に自宅のマンションから

変な城塞都市に飛ばされた時に一緒に活動した……。

「あ、ああああれっ!? あんたあの時の王子様!?」

和美もまさかの展開にビックリして目を見開きつつ指を差す。

その大声が切っ掛けで、執務室の外からバタバタと慌ただしい足音が複数聞こえて来た。


外から聞こえてくる足音に、リュシアンはしまった!っと慌てて和美に近づき腕を引っ張った。

「まずい!さっきボクが叫び声を上げたから、兵士が来てしまった!こっちに隠れろ!」

和美を執務をする机の下に押し込み、そのまま平然を装い椅子に座った。

「いいか、良いと言うまで出てくるな!」

和美に聞こえる声でそう言うと、それと同時にドアが勢い良く開かれた。

「陛下!先程叫び声が聞こえましたが!」

「だ、大丈夫だ!じ、実は…えーと、えーと……そうだ!足を滑らせてしまったんだ!

どこにも怪我はない!だから、心配するな!」

とっさの嘘に、騙されてくれるか心配だったが兵士達はホッと胸を撫で下ろし、自分の持ち場に戻っていった。


「…………はぁああああ……全く、貴様はいったいどうやってここへ来たんだ?

いや、待て…まず、あっちのソファで話を聞こう」

リュシアンは和美をソファに座るよう促すと、自分も向かいに座った。

「危なかった……。それで、私の事なんやけど……」

和美はスペード国にトリップしてから今まで自分に起こった事を全て話した。

ジュクトに追い掛けられた事、デイルに地下牢に入れられた事、そこで黒月に会った事。

その今までの出来事を全て話した後に改めて質問してみる。

「この世界は地球とは違う世界……って事でええんやろ? スペードとかダイヤとか……そしてここは

クラブやったっけ? って事は、残りの1つはハートなん? 後……あのこくづき? とか言うのは一体

何なん? 何か得体の知れない雰囲気纏ってたんは分かったんやけど、どー考えてもあれ普通の人間ちゃうで」


いや、もしかしたら人間ちゃうかも知れん……と言う和美の質問に対し、リュシアンは和美の話を聞き終えると

少し寄っていた眉間に指を当てて少し唸った。

「前に僕も不思議な体験を貴様としたが、まさかこんな事がまた起きただなんて……まぁ、無事で良かっ…て、

べ、別に貴様の心配なんてしてないぞ!!してないからな!」

急に言いかけた言葉を慌てて言い直して一人赤面するリュシアンは、ゴホンッと咳をすると本題に戻った。

「しかし、コクヅキという男……変なやつに目をつけられたな、魔法を使うなんて、この世界には魔法を使える人間が

限られているからな、その限られた中でそんな名前の者は知らない………それに、貴様のことを一方的に知っていると

いうことは、この世界に連れてきた犯人の可能性が高いな。だが、いったい何が目的でこの世界へ連れてきたんだ?

その男の考えがわからないな…もう一度、会うことが出来れば問いただすこともできるのにな」


黒月という人物が和美をこの世界に連れてきた可能性が出たが、これからどうするべきかリュシアンは考えた。

「この世界は、貴様の言ったとおり1つの大きな大陸に4つの国が存在している。スペード、ダイヤ、クラブ、

ハートその4つの国を合わせてトランプ国と言うんだ。貴様は、既にここを合わせて3つの国に来ている。

なら、最後はハート国に行くんじゃないだろうか?とりあえず、コクヅキという男がどのようなタイミングで

魔法を使うかわからない。暫くここで身を隠していたら良いだろう。………だが、ハート国に飛ばされたら

その格好では寒いかもしれんな、向こうは北国だしここ数年毎日が雨だと聞く」

思い出したかのように、リュシアンは席を立つと端にあった引き出しから、首から足元まである上着を取り出した。

「一応、持っておけ。生地は少し薄いが無いよりはマシだろう。別に、礼はいらないからな!!貴様が、寒さに

耐えられず風邪でも引いたら、分かっていた僕のせいみないな気分になるだけだからな!!」

いちいち、うるさく赤面しながら言い訳をするリュシアンに和美は……。


Run to the Another World in Playing Cards World第5話へ

HPGサイドへ戻る