Run to the Another World in Playing Cards World第2話


「……え?」

いきなり強い風が吹いて来たと思ったら、ふわっと身体が浮く様な感覚があって……気が付くと

何処かの城の中庭に和美はへたり込んでいた。

「あ、あれ、え、あれ?」

何が一体どうなっているのかさっぱり分からない。

少なくとも、さっきの路地裏で無い事だけは確かなのだが……それならここは一体何処なのだろうか?

困惑しつつ辺りを見渡しながら立ち上がる和美の元に足音が聞こえて来る。

そっちの方に振り向いてみれば、ツンツンヘアーの胸元が開いた服を着ている男が訝しげな

視線を向けながら和美に近付いて来ていた。


仕事の息抜きに中庭に足を向けたら、突然強い風が吹きその中心から人が現れたのを見てデイルは驚いた。

怪しい人間を視界に捉え近づくと、こんなおばさんが魔法師?と思ってしまった。

「なんだ…ばばぁか、テメェこんな庭の真ん中で堂々と不法侵入して来るなんざ、度胸があるな。

どんな魔法を使ったんだ?」

というか、今のところトランプ国にいる魔法師には全員知っているが、こんな特徴の魔法師なんていたか?

デイルは、顎に手を当ててジロジロと和美を見て考えていた。

「……は?」

面と向かってババァと言われ、和美は怒りと困惑が同時に湧き上がって来る。

だけど元々大人しい性格だった和美は、いちいちそんな事を気にしても仕方が無いと思いスルーしながら

今の状況を目の前の若者に聞く事にした。

「魔法って……何の話や? 私はそんな大層なもんは使えへんよ。それよりも一体ここは何処なん? あんたは

誰やねん? 不法侵入なんて私はした覚えもあらへんけど、そうだとしたらまずここが何処なのか教えてくれへん?」

あのジュクトとか言う男からは結局何も聞けなかったので、今回ばかりはしっかり説明して欲しい所である。


その和美の申し出に男は……。

「変な言葉を使ってるな、田舎者か?魔法師じゃないとなると、誰かに魔法でここまで飛ばされたって

事になるな…でも、なんでこんなばばぁを……。はぁ、考えるのもだりぃな…。おい、誰かわかんねーけど、ここはダイヤ国だ。

そして、テメェが今いるこの場所はダイヤ国の中心にある城の中庭、んで、そんな所に突然現れたテメェはオレから見たら

めちゃくちゃ怪しいわけ」

デイルは面倒くさそうにそう説明すると足に隠している中剣を取り、和美に向けた。

「で?テメェの話を聞いてやるよ」

「兵庫出身やから関西弁になるのは仕方無いやろ。私も何が何だかさっぱり分からんねや。会社で働いてて

仮眠取ってたらスペード国って所に居て、ジュクトとか言う青い髪の若者に追い回されて、そして路地裏に追い詰められて。

その時にいきなり強い風が吹いて、目を開けたらこんな所におったたんや。これが私の今までの経緯やから私も

何も分からないんよ。あーそれとそんな物騒なもん向けるの止めてくれへん? 私は戦う気なんて無いで。

そっちがその気ならこっちもやる事やるけど」


最後に警告っぽい一言を発した和美だが、ジュクトと聞いた男の表情が変化して一気に彼の口調も変化した。

「ジュクト…?テメェ、ジュクトと会ったのか。しかも、追い回されたって…プッククク…あーはっはっはっ!!なんとなく、だけど

事情は分かったような気がする。とりあえず、ここはひょーご?とかいう場所はないし、テメェの言っている話半分が

チンプンカンプンで訳分かんねー。スペード国で何したか知らねーけど、ジュクトに追い回されたって(笑)とんだ災難だったな」

と、いいながらも剣を下ろそうとはしないデイル。

「けどな、人間ってーのは言葉だけじゃ信用できねーんだよ。とりあえず、捕まって大人しくしてもらわねーと。恨むんなら

こんな場所に連れてきた奴を恨むんだな。なに、何もしないでいてくれればこっちだって何もしない。だけど、素性が

解るまで地下牢で過ごす事になるけどな」

笑っていた顔が一変して鋭い視線を和美に向けるデイルは、一歩一歩和美の方へ近づき身柄を捕らえようとした。


「身の安全さえ保障してくれるんなら、とりあえずそっちの言う通りにしよか」

さっき散々追い回されただけあって、今回は大人しく捕まるルートを選んだ和美。

だがそんな和美は、この後に地下牢の中でこのストーリーの鍵を握る人物に出会うのであった。

デイルは、ダイヤ国の別館の地下牢に和美を入れ監視をつけ、自分の執務室に戻った。

スペード国でジュクトと出会ったと言っていたな…

「デイル様、失礼致します。先程デイル様宛に早鳩が届きました」

一人の使いが一通の手紙をデイルに渡し退室した。

差出人を見るとジュクトからであった。

なんとなくだが、手紙の内容が想像できた。

「どうやら、何かに巻き込まれてるのは確かみたいだな……」

だが、本当に魔法でここまで来たのであればもしかしたら今頃…。

「第三者に、魔法でどこかに飛ばされてるかもな」

ふぅ、と息を吐いて少し頭を悩ませたが魔法のことだとどうにもならないと思い、むしろ地下牢からまた別の場所に

飛ばされるだろうと考えたデイルは、名前も知らない相手のことを考えるのをやめたのであった。


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