Run to the Another World Battle Stage2第9話


2匹のドラゴン達が空高く舞い上がって、夜空で戦闘機とドッグファイトをスタートしたその眼下では

由佳が完全装備の兵士達を相手にしていた。

セナはアーフィリルの背中に乗って、戦闘機をグラルバルトと一緒に迎え撃つ事にする。

「アーフィリル、気をつけてね!」

『心配は無用だ』

短いセリフながら、妙に安心感のある低い声にセナは安堵してアーフィリルに全てを任せる事にする。

そして一旦グラルバルトも上空に飛び上がったものの、その様子を見ていたアーフィリルからドラゴン同士で会話が。

『ここは我に任せておけ』

『良いのか? あの戦闘機は機動性に富む乗り物だ。速いぞ』

『問題無い。そちらは由佳の援護をしてやれ。流石にあの人数相手に1人って言うのはきついだろう』


アーフィリルの声に下を見るグラルバルトは、必死に2本の刀とMMAで大勢の兵士達を迎え撃つ由佳の姿があった。

『分かった。下が片付いたらこちらにも回る』

『こちらもその前に上が片付いたら下に行く』

ドラゴン2匹の間で約束が交わされ、グラルバルトは地上へと向かって急降下。

そのまま地面と平行になる様に上手く身体をコントロールし、何人かの兵士を弾き飛ばしながら着陸。

『死にたい奴から私に掛かって来るが良い』

グラルバルトの援護を受けて、由佳もコンテナの上に上がって敵を迎え撃つ。

コンテナの上であれば動けるスペースが制限されるし、完全武装している敵達はライフルやマシンガン等を持っているが

狙撃にだけ気をつければ何とか行けると踏んだ。

自分を追い掛けて上って来る敵を片っ端から日本刀で斬り殺して行く由佳と、地属性のドラゴンなので砂嵐の魔術を使ったり、

自分の鋭い爪や大きなボディを活かした切り裂きや体当たり等の攻撃を駆使して奮闘するグラルバルト。


その一方で上空ではアーフィリルと戦闘機のドッグファイトが続く。

セナが振り落とされない様になるべく身体を傾けず、平行移動メインで突っ込んで来る戦闘機を避けつつ攻撃しようとするものの……。

『む……』

「どうしたの?」

『なかなかすばしっこいな』

アーフィリルをもってしても機動性の面では戦闘機に分がある様だ。

それでもドラゴンの身分であり、大昔から大空を駆け回って来た種族と言うプライドもあるのでこうした空での

ドッグファイトで遅れを取る訳には行かなかった。

セナと融合が出来ればこれ位の戦闘機等軽くねじ伏せてしまう事が出来るのだが、それが出来ない。

つまり、こっちがハンディキャップを背負っている状態だからこそバランスが取れて釣り合っていると言う、そう言う質のバトルになっている

状況なのだとアーフィリルは分析。


だったら……とアーフィリルは一旦急降下し、そのまま徐々にスピードコントロールをしながら鋭い爪と大きなボディで地上部隊を薙ぎ倒しにかかる。

銃弾の雨が飛び交うが、アーフィリルのボディはビクともしない。

コンテナ諸共人間が吹き飛び、その飛んで行ったコンテナが更に別の場所で戦う人間を巻き込む。

「わわわっ!?」

セナは必死に振り落とされない様に頑張るが、上空ではまだ戦闘機がアーフィリルに狙いを定めている。

その戦闘機の下に一瞬でアーフィリルは潜り込み、思いっ切り下から上へと戦闘機を突き上げて撃破。

バラバラになる仲間の戦闘機のボディに唖然として行動が遅れた他の2機の動きも見逃さず、アーフィリルは鋭い爪でまず1機を撃破し、

もう1機は空中で尻尾を振って上手くコントロールしてクリーンヒットさせて撃破。

「ううわっわっ、わ!?」

自分の背中で必死の思いで踏ん張るセナの様子を見て、アーフィリルは一旦別の場所へと着陸を試みる。


『無事か、セナ?』

「うう……目が回る……」

アクロバット飛行を耐え抜いたセナはもはや限界だったが、そんなセナの目の前にコロンと空中から何かが落ちて来た。

「うー……うっ!?」

吐き気と目まいを必死で堪えていたセナが、思わずその感覚を忘れてしまう程にビックリしてしまったのも無理は無い。

何故ならそれは、この不思議な場所に来た時に無くした筈のレティシア特製の通信機だったのだから。

「はぁ、はぁ、はぁ……キリが無いわ……」

『全くだ……』

何時までも終わりそうに無いこの戦いに段々由佳もグラルバルトも疲弊していた。

どうやら敵は港に停泊している巨大な戦艦から現われるらしく、あれを潰さない限り終わりそうには無さそうだった。

でも、まだまだその戦艦までは遠い。


一体どうすれば良いのかと思っていたその時、コンテナ倉庫街の一角が眩く白く光り輝くのが見えた。

「えっ……?」

『あ、あれは……!?』

1人と1匹が驚くその視線の先から、髪の毛から服まで全身真っ白の上に白い光の粒を放ち続けて飛んで来る……いや、

浮遊して向かって来る1人の女の姿。

それはまさしくコンテナ倉庫街に入る前にセナから聞いていた、彼女とアーフィリルの融合バージョンの姿そのものだった。

「セナ……ちゃん……?」

「待たせたな、由佳。ここはもう私で大丈夫だ。後は主犯格を見つけるのを頼むぞ」


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