Run to the Another World Battle Stage2第8話


金網で仕切られた区画が倉庫街から続いており、どうやらコンテナ置き場として機能している様である。

ゲートと言ってもそんな大層な物では無い。

その区切られた金網の繋ぎ目が、金属製の枠組みで両開きに開くゲートになっておりなかなか大きな物だった。

しかし、そのゲートには大きな錠前が掛かっている。

このロックを解錠する為には鍵が必要みたいだが、グラルバルトが凄い真顔でセナに一言。

『セナ、その剣でこれを切ってくれないか』

「え?」

『鍵を探すよりも手っ取り早いだろう』


アーフィリルはそれに対して特に何も言わないので、セナは自分のロングソードを腰から引き抜く。

「それじゃあ行きますよ、下がってて下さいね!」

セナが度胸一発、ゲートにぶら下がる金属製の錠前に向かってロングソードの軌跡を描く。

その奇跡は見事に錠前を通り抜け、ガシャンと音を立てて切断された錠前が地面に落ちた。

『良い腕だ、セナ』

「おおー、やっぱり騎士団員だけあるわね」

『私も感心したぞ。それじゃあ先に進もうか』

そんな三者三様のリアクションに、ポツリとセナがこんな一言を。

「アーフィリルと融合出来れば私も飛べるんだよね……」

「融合……って、何それ?」


またもやセナの口から出て来た聞き慣れない単語に、由佳が思わず問い掛ける。

それを聞いていたアーフィリルが口を開いた。

『融合と言うものは我とセナが1つになり、魔素の力を利用して馬よりも速く走る事が出来たり、空を飛べたり出来る状態になるのだ』

「攻撃力とかも凄い事になっちゃったりするの?」

『無論だ。二振りの剣を生み出したり、魔素による砲弾を撃ち出したりも出来る。だがその反面、融合している

人間の身体には負担が掛かるのだがな』

「ははぁ、一長一短と言う訳ね」

『何かを手に入れれば何かを失うとは良く言ったものだ』

由佳とグラルバルトは感心しつつ、実際その姿を見た事が無いので何とも言えない。


「だったらさ、ここで融合してみてよ!!」

その問い掛けにセナはアーフィリルを見てみたが、特にアーフィリルからのリアクションは無い様なのでOKが出たと判断。

「アーフィリル、お願い」

『承知した』

セナとアーフィリルのコンビにとっては何時もの事なので、スッと融合……出来ない!?

「あ、あれ? アーフィリル?」

『変だな……』

もう1度融合しようと受け入れ態勢を整えるセナだが、何時もならスーッとアーフィリルが自分の中に入って来る筈なのに

全然そんな気配を感じる事が出来ない。

「ええっ、何で何で何で!?」

『何故だ……?』


クールなアーフィリルも驚きを隠せない様子だが、このコンビの様子を見る限りハッタリでは無いと由佳とグラルバルトは判断。

「うーん、何かが足りないのかも」

「何かって?」

唐突にそんな予想を打ち立てる由佳にセナは当然聞いてみるが、由佳は首を横に振る。

「それは私にも分からないわ。ただの直感って奴よ。でもほら、セナちゃんは通信機を無くしたって言ってたわよね。

だったらそれが融合への手がかりになるんじゃないかしら?」

『本当に直感と感性だけで生きている様な女だな、由佳は』

「うるっさいわね。とにかく、今は融合出来ないんだったらその通信機を見つけるのが目的でもあるんだからそっち優先で良いでしょ」

ぼそっと呟いたグラルバルトにイライラしながら由佳はそう言ったが、通信機の手がかりは今の所何も無い。

『私が先程アーフィリルから感じた様に、その魔素が通信機からも感じられないのか?』


グラルバルトの問い掛けにセナは首を傾げる。

「ううーん、確かに魔素を使っていると言えば使ってるんですけど、アーフィリル程強くは無いので何とも言えませんね」

『そうか……』

だったらどうにかしてこのだだっ広い港湾区域から探すしか無い様なので、とりあえず目の前のゲートを開けておく事にする。

その話を聞いていた由佳は目の前のゲートを見上げて、手で開けるには重そうなので足で思いっ切り蹴破る。

警察の特殊部隊の隊員等がドアを蹴破るのと同じ要領なのだが、この行為がパーティに危機をもたらす。

「せーの!」

掛け声と共に思いっ切りゲートを蹴破って開けてみた由佳だが、その瞬間辺り一帯にウォーンウォーンウォーンと低めの

サイレンの音が響き渡る。

「えっ!?」

「な、何が起きたんですか!?」

『あっ、これはまずいぞ……由佳』

『あっちの方から何かが来るぞ!』


冷や汗をかくグラルバルトに対し、アーフィリルが何かを見つけて叫ぶ。

その叫び声に反応した他のメンバー全員が辺りを見渡すと、コンテナ倉庫街のいたる所から一斉に武装した集団に加えて……。

「あ、あれはっ!?」

セナが指差すその先。

その方向にはアーフィリルが言っていた『翼を持たずに飛ぶ金属製の鳥』……由佳とグラルバルトの予想通り、ハイスピードで空中を

飛び回る事が可能な地球で良く見かける事の出来る乗り物……ジェット戦闘機が3機襲い掛かって来るのが目に入った。

グラルバルト、そしてアーフィリルは元のドラゴンの姿に戻ってその戦闘機の迎撃態勢に入る!


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