Run to the Another World Battle Stage2第7話
そうして一通りの説明も終了し、アーフィリルが驚いたり安心したり疑問を持ったりしていたが
それはまた後で話すと言う事で、今度はアーフィリルの今までの行動について話して貰う。
『我は赤い髪の女にさらわれた後、暴れて脱出に成功したのだが……翼を持たずに飛ぶ金属製の鳥に追い掛け回されて、
やっとの事であそこの箱の中に隠れたのだ』
「金属製の鳥……?」
アーフィリルのその説明に、自分が住んでいる地球で知っている物体が思い浮かぶ由佳とグラルバルト。
「それってまさか……こ、こう言うスラッとした、上から見ると細長いボディをしている、灰色とかシルバーとかそう言う色をした物かしら?」
ジェスチャーも交えて由佳が疑問をアーフィリルに投げ掛けると、子犬の姿のアーフィリルはブンブンと頷いた。
尻尾がフリフリしている。
『おお、まさしく由佳の言っている通りだと思うぞ。実際に我がもう1度この目で確かめられれば良いのだが』
そうアーフィリルが言うと、今度は同じドラゴンのグラルバルトが口を開いた。
『戦闘機……か?』
「そうかもね。ここの雰囲気ならそう言う物もありそうだけど……」
横須賀の米軍基地等に行けばそう言うものも公開しているのだが、やはりセナとアーフィリルの世界にそう言うものは無いらしい。
「何か、古代の機械が戦争で使われているって言うのはさっき歩きながら聞いていたけど……戦闘機みたいなのは無いのね」
だったらそれも後で説明しようか、と思っていた由佳とグラルバルトだが、ここでグラルバルトがある事を思い出す。
『……そうだ、戦闘機と言うか戦艦なら見かけたぞ?』
「え?」
グラルバルトが由佳を捜して上空を飛行していると、ずっと向こうの方に超大型の戦艦が停泊している場所があったらしい。
「じゃあその戦艦の方に行ってみましょ。何か分かるかも知れないわね」
「そ、それは良いんですけど私の通信機が!!」
バッと手を上げるセナは、自分の大事なアイテムを無くしたままだと言う事をもう1度口に出す。
「だからそれを探しながらでしょ。本当は文字通り飛んで行きたいけど、探すってなるとそれも無理だからね」
地道に歩いて戦艦の場所まで向かいつつ、そのセナのイヤホンを探すしか無いと由佳が締めくくる。
だけど黙って進むのも何だか寂しくてつまらない。
ならば良い機会と言う事で、色々会話をしながら港湾区域を進む事にする。
「……それでこの刀は、私の剣道の師匠の形見って訳」
自分がセナと戦った時に使っていた2本の大小の刀をポンポンと叩きながら、由佳が自分の持っている刀の説明をしつつ歩く。
MMAの師匠である和美が、どうしてもその刀を見てみたいと言う事でわざわざ埼玉から横浜まで持って来た
真剣だったのだがまさかこんな形で役に立つ事があるなんてね、と由佳自身は驚いていた。
人生は何が起こるか分からない。
そしてドラゴンの一生も何が起こるか分からない。
世界が変わろうが、それは同じ事らしい。
やけに静かなこの港湾区域だが、ここに来るまでにグラルバルトやアーフィリルの口から語られた事は由佳にも
セナにとっても衝撃的な物だった。
由佳は周りの地球に良くありそうな風景からここが地球の何処かだと思っていたし、セナもアーフィリルも自分の身体に感じる
魔素の感触があったので自分達の世界の何処かだと思っていた。
しかし、グラルバルトはそうは思っていなかった。
何故かと言えば、この場所でも自分の魔力と同じ感じの空気が流れている……つまりこの空気中には魔力の様な
物質があると確信していたからだ。
だとすれば、自分が今住んでいる地球では無くて元々の故郷であるヘルヴァナールの何処かだと思っていたが、ヘルヴァナールに
これだけのテクノロジーがあるとは思えなかった。
しかも、地球で感じる事が出来ない魔力の流れがあるのであれば地球では無いと言う事になるので、地球でもヘルヴァナールでも
そしてセナやアーフィリルの世界でも無い、また違う世界の何処かであると言う結論に達する。
そう言う予想を打ち立てて他のメンバーに話すグラルバルトだが、地球では魔力の流れを感じないのに魔術を使用出来る事は理解出来なかった。
それを会話の中で由佳にも指摘される。
「え、それじゃあ地球で魔術を何度か使ってるじゃん。それはどうなのよ?」
『そこが私としても不思議だ。魔力では無い別の何かが魔力の変わりになるのだろう。それは電磁波かも知れないし原子かも知れないし
分子かも知れないし、はたまた酸素か二酸化炭素かも知れないし。いずれにせよ、地球での話は私も分からん』
幾ら考えても埒が明かないが、兎も角ここが全く別の世界だと判明したのは確かだった。
そんな世界の違いの話を始めとして、由佳の話やドラゴン同士のお互いの世界の話、更にはセナが騎士団に入る切っ掛けになった
出来事等で盛り上がる一行の前に1つのゲートが現れたのはすぐの事だった。
「あら? 何かしらこのゲート」
『魔素のロックが掛かっている様だな。破れるなら破って進みたい所だが』
「ええっ!? 先に進めないんですか?」
『まだ決まった訳じゃ無いけど、私達も少し調べてみよう』
由佳がゲートに最初に気がつき、ロックが掛かっている様だとアーフィリルが指摘。
そしてこのゲートを境にして、港湾区域を進むこのパーティが窮地に陥る事になる!!
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