Run to the Another World Battle Stage2第6話


「それは何ですか?」

「これはスマートフォンって言って、遠くの人と離れていても会話が出来たり、指だけで手紙を送る事が出来たり、

音楽を聞く事が出来たり、昔に見た光景を記録して何時でも見られたりする道具ね」

「ええっ!?」

唖然とするセナに、論より証拠とばかりに由佳は写真や動画を見せてみる。

「うわあ、凄い凄い! これはどう言う原理なんですか?」

「私はその辺りは詳しくないの。でも、こう言う道具が私達の世界では発明されたからそれで生活が楽になっているのよ」

この場所に居る2人の人間と1匹のドラゴンの世界がそれぞれ違う世界だと全員認識出来た所で、セナがある事に気がついた。

「そう言えば、私も同じ騎士団のレティシアさんって人に遠くの人と会話が出来る道具を発明して貰って……あれっ!?」

『どうした?』

「無い……」


セナが言うには、知り合いに開発して貰ったと言う地球で言う所のイヤホンマイクがあるらしい。

だが、それを耳に差して置いた筈なのに何時の間にか無くなっているのだと言う。

「どうしよう……あれ、レティシアさんに開発して貰った世界で1つだけの物なのに……」

「ええっ、それは大変じゃない!」

どうやらお友達以外にも、そのセナの通信用のイヤホンを探さなければいけない様だ。

「アーフィリルは凄い量の魔素の持ち主なんです。だから近くまで行けば感じる事が出来るんですけど……」

そこまでセナが言うと、今度はグラルバルトが口を開いた。

『魔素とは、もしかしてセナからもピリピリ感じる事の出来るものか?』

「え? 感じますか?」

『ああ。魔力と同じ様な感じがセナの中にあるから分かる。そして……ずっと向こうの方から、更に似た様なその気配を凄い感じるんだが』

「ええっ!?」

「ちょっと、それ早く言いなさいよ!」

スパーンと由佳はグラルバルトの頭を平手で引っぱたき、そこまで徒歩で移動する事に。


飛ぶだけの距離では無い様なので、ついでにお互いの世界の事をもっと詳しく説明しながら気配の元へと歩く事にした。

その気配が感じられたのは倉庫街を抜け、別の倉庫街の区画に移動した所にある倉庫と倉庫の間に積み重ねられている木箱の中の1つだった。

ガタガタと音がするのでその木箱のフタを開けてみると、セナの言っていた容姿にぴったり当てはまる、まるで子犬の様な生き物が現れた。

『……凄く息苦しかった。ようやく再会できたな、セナよ』

「あああ、アーフィリル……ああ、無事で良かった……」

子犬サイズのその身体をぎゅっと抱きしめ、セナはグリグリとアーフィリルの身体を撫で回す。

『む、セナ……苦しいぞ』

「あ、ごめん!」

慌てて力を緩め、アーフィリルを解放するセナ。そして解放されたアーフィリルは翼を使って飛び上がり、セナの頭の上に器用に着陸成功。

「けん玉みたいね」

形は若干違うけど、細長い物体の上に丸まった物体が陣取るその姿はまさしくけん玉を由佳に連想させた。


「えー、と言う訳でこの子が私の大切なお友達のアーフィリルです!」

頭の上に着陸した友達を「すぽっ」と音がしそうな勢いで引き剥がし、由佳とグラルバルトに掲げて紹介するセナ。

「息苦しかったって……そりゃあ、その木箱の中に隠れていたらそうなるわよね」

『何せ急いで隠れたものでな。抜け出そうと思ったら箱のフタが閉まってどうしようも無かったのだ』

由佳の呟きにアーフィリルはそう答えたが、次の瞬間セナとアーフィリルの口から同じ疑問が出て来た。

「え? アーフィリルの声が聞こえるんですか?」

『我の声が聞こえるのか?』

「えっ? 普通に話してるんじゃないの?」

『私達には普通に聞こえるのだが……』

その普通の感覚が、どうやらセナとアーフィリルにとっては違うものらしかった。


アーフィリルの声はセナの頭の中にしか届かないらしく、セナがアーフィリルと会話している様子は旗から見ればブツブツと

独り言を言っている様にしか見られないのだとか。

「そ、そう言われても……グラルバルトも聞こえるんでしょ?」

『ああ。私にもはっきりと聞こえるぞ』

「そ、そうなんですか……」

自分だけの特権だと思っていたセナはまさかの事態に言葉が出て来ないが、ここでアーフィリルがグラルバルトに思わぬ疑問を。

『……気になっているのだが、その黄色い頭の男……人の姿をしているが、本当は人間では無いな?』

「え、分かるの!?」


由佳がアーフィリルの問い掛けにビックリするが、グラルバルトは驚きながらも納得出来る部分があったので静かに頷く。

『もしかして、同じドラゴン同士で何か通じる物があるのかもな』

「ああ、そう言えばグラルバルトさんはドラゴンでしたね」

セナもグラルバルトの答えに納得したかの様に首を盾に振るが、当のアーフィリルにはまるで事情がさっぱりだ。

『ううむ、セナ……それから目の前の2人もそうだが、そちらだけで納得されては我は全く話が分からん。説明を頼みたい』

「それもそうね」

『ならば私達の自己紹介も含めて、全てを話すとしよう』

「そうしましょ。私達も未だに半信半疑って所なんだけどね……」

セナが無事に友達のアーフィリルと再会出来た事で、1つの心配事が頭の中から消え去った由佳とグラルバルトの説明がスタートした。


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