Run to the Another World Battle Stage2第5話
セナの口から話されるそのセリフによって、何故由佳がいきなり斬り掛かられたのかと言う事が分かった。
「私、騎士団の任務でレンハイム城ってお城に居たんです。仕事の休憩でレンハイム城の裏庭で、大事な私のお友達の
アーフィリルと一緒に小枝を追いかけたりしてそれを投げて遊んでいて、時間も遅くなったから帰ろうと思ってたんです」
そこで一旦言葉を切ったセナは、その後に今回の事件の発端になった出来事を話す。
「ちょくちょくお散歩に来ている場所だったんですけど、実は今日の休憩で裏庭に行く前にお城の中で見慣れない長くて赤い
髪の毛の女の人を見かけたんです。黒の上着の中には黄色の服を着ていて、そして腰には黒い鞘の剣をぶら下げていました。
その時はお城の関係者の方かなと思って気にも留めていなかったんですけど、裏庭でアーフィリルと遊んでいたら突然
その女の人が現われ、アーフィリルを小脇に抱えて私に短剣を投げつけて来たんです」
「……って事は、セナちゃんはその私に良く似ている格好の女を追いかけて?」
由佳の問い掛けにセナは首を縦に振る。
「はい。林の奥に向かって行くのが見えたので、急いで追いかけたら林の中で凄く眩しい光に包まれて。
それで、ここの不思議な場所に出て来たんです」
「そして私を見かけて、そのアーフィリルって言う友達をさらった犯人だと勘違いして斬りかかって来たって訳ね」
「そうです。本当にごめんなさい。騎士としてまずは事実確認をするべきでした」
頭を下げるセナだが、セナの気持ちも痛い程に理解できるので由佳はブンブンと手を振った。
「全然私は気にして無いわよ。人間誰にだって勘違いはあるし間違いもあるし、私だってそういうので恥かいた事もあるし。
それに私がセナちゃんの立場だったら、きっと同じ気持ちになっていたと思うわ。ほら、そのアーフィリルって言う友達を探しに行きましょ!」
ともかく、これで和解は出来たみたいなので由佳とセナとグラルバルトはアーフィリルを探しに行く事にする。
ちなみにグラルバルトはここから随分離れた別の倉庫街の方に最初は居たらしく、ドラゴンの姿に戻って上空から由佳を
捜して飛び回っていたそうである。
が、その肝心のアーフィリルと言う友達は一体どう言う容姿なのかと言うのを聞いていない。
『探しに行くと言っても、特徴が分からなければ探し様が無いな』
グラルバルトのその呟きに、セナは腕を組んでむむむ……と考え込みながら自分の大切なお友達の特徴を思い出す。
「ええっと、私の腕で一抱え出来る位ですね。色は白です。羽がついてて尻尾は長いんですけど、頭から角が
生えているのが1番の特徴です。まるで子犬の様な感じで、真っ白のふわふわなんですよ」
つぶらな緑の瞳も特徴です、とセナが最後に付け加えるとグラルバルトの表情が変わる。
『うーむ、上から見る限りこの場所はかなり広かったな。探すのにはもう少し何かこう……気配とかそう言うのが分かる様なものがあれば……』
「気配って……」
半笑いでグラルバルトの呟きに反応する由佳だが、セナがその瞬間ポンと自分の左の手のひらを右の拳で打った。
「あ! 魔素!」
「まそ……?」
「魔素って言うのはですね……」
セナが住んでいる世界に生きる者は、どんな生物でも必ず体内に宿っているエネルギーらしい。
生命の根元を成す力ではあるが、個人で宿す魔素の量は小さすぎてそれだけでは使い物にならないのだと言う。
そこで、地球で言う所の化石エネルギーを今日(こんにち)の生活に役立てるのと同じく魔晶石と言うものを作り出し、
身体の中の魔素をパワーアップさせて様々な現象を引き起こせる様にしたのだと言う。
それは通称スキルと呼ばれ、自分の身体や武具に魔晶石を埋め込んでポテンシャルアップを図る戦技スキルと、魔晶石から
取り出した純粋な力で現象を起こす魔術スキルの2種類がある。
戦技スキルは魔晶石を武具や身体に埋め込めば良いだけなのだが、魔術スキルはそれなりの訓練が必要になるので習得が難しい。
そしてエーレスタ騎士団の騎士になるには必須技能として戦技スキルの習得が定められており、最初は使えなくても騎士団に
入団した後に訓練で厳しく教え込まれるのだとか。
そんなセナの説明を黙って聞く由佳とグラルバルトは、やはり自分達とはまた違った世界からやって来たんだなと思わざるを得なかった。
「そのスキル……だっけ? セナちゃんも使えるんでしょ?」
「勿論です! 由佳さんやグラルバルトさんの世界には無いんですか?」
『私の世界には魔力と言う物があって、まぁ……大体似た様なものだ。魔力は私も身体の中にあるから、それを使って
身体能力アップや魔術の使用が可能になる。生物によって大小はあれど、必ず持っていると言うのは同じだな』
だが、その後の由佳の答えを聞いてセナはビックリする。
「私の世界は……一切無いわね。そう言うのは作り物の中の世界でしか見た事が無いし、変わりに色々な機械を発明して、それを使って暮らしているのよ」
そう言いながら、由佳はポケットから自分のスマートフォンを取り出す。
だがこのスマートフォンによって、事態は急展開を見せる!!
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