Run to the Another World Battle Stage2第4話
「それじゃ、まずは名前から教えて貰えるかしら?」
「はい。私はセナ・カーライルって言います。16歳です。サン・ラブール連合軍のエーレスタ騎士団に
あります、白花の騎士団の団長を務めています!!」
この状況下でも元気一杯の自己紹介をする、セナと名乗った黒いリボンの女。
そしてその自己紹介の内容に、自分の周りの時が止まってしまったかの様な感覚を覚える由佳。
「……え?」
「え?」
何かまずい事を言っただろうか、と内心あたふたするセナだが、むしろあたふたしたいのは由佳の方である。
「白花の騎士団……? サン・ラブール……? え、エーレスタ?」
全く聞き覚えの無い単語である。
(この展開、まさか……)
自分の中で物凄く嫌な予感が湧き上がって来るのがはっきりと分かるが、それでも意を決して由佳はセナに質問した。
「……あの、もしかしてだけど」
「はい?」
「地球って知ってるかな?」
「……何ですか、それ?」
真剣な眼差しで、真剣に疑問をセナは由佳に投げ返す。
半ば予想通りのそのセナのリアクションに、由佳は頭を両手で抱えて大声で叫んだ。
「う、うわああああああああああああああああーーーーーーーーっ!?」
「え、えええっ!?」
頭を押さえて地面に膝をついて崩れ落ち、そのままうつ伏せ寸前の絶妙な体勢で激しい落胆のオーラを放つ由佳の姿に、
セナはあたふた状態からおろおろ状態へと進化する。
「し、しっかりして下さいよ! 一体どうしたんですか!?」
「どうしたもこうしたも無いわよぉ!! 何で……また……こんな……」
ブツブツと呟く由佳の姿に異様なものを感じるセナだが、それこそ由佳の口からしっかり話して貰わなければ何時までも話が進まない。
「え、えっと私であれば幾らでもお話を聞きますから! ね、ほら、立って下さいってば!」
由佳の背中に手をポンポンと優しく当て、崩れ落ちた自分よりも年上だろう女をセナは励ましに掛かる。
そのセナの健気な説得が効いたのか、由佳は手と足腰に力を入れてゆっくりと立ち上がった。
「すみません、取り乱しました。……それじゃ先に私の自己紹介も済ませてしまうわね」
「あ、はい。お願いします!」
深呼吸を1つして、改めて由佳は自分の紹介をセナに始めた。
「私は三浦由佳。43歳ね。日本の埼玉県って言う所で翻訳家の仕事をしているわ。年齢だけ見れば、親子って言う位に歳が離れてるわね」
「そ、そう……ですね……」
「セナ……か。セナって聞くと、どうしても世界最強のあの人を思い出すわね」
地球で伝説になったF1ドライバーの名前を由佳は呟き、次の話題に移ろうとする。
だが、その時だった。
バサッ、バサッと何かが羽ばたく様な音が上空から聞こえて来たのはその時であり、由佳とセナはほぼ同時に音がする方に顔を向ける。
そして最初に由佳が声を上げた。
「あっ、グラルバルト!?」
夜空でも分かる位に明るい黄色のその大きなボディで、翼をはためかせながら2人の元に降りて来るドラゴン。
それはまさしく、人間からドラゴン本来の姿に戻ったグラルバルトだった。
風が吹きすさぶ中で髪の毛や着ている服が暴れるものの、感動……と呼べるかどうか分からないがそれでも自分の知っている存在に
再会出来た由佳は大きく両手を振った。
「おーい、グラルバルトー!!」
『由佳か!?』
グラルバルトも由佳の存在に気が付き、すぐ近くに大きなボディを上手くコントロールして着陸に成功。
そして首に何本も掛けられている薬のビンを首を振って1つ落とし、自分の口にビンごと放り込んだ。
その瞬間、グラルバルトの身体が眩しく光り輝いてドラゴンだったシルエットが人間のものになって行く。
『ふぅ……ようやく再会出来たな。ところで一体何があったんだ? そしてこの子は?』
「ええと……ちょっと長くなるけど、なるべく手短に説明するわね」
再会を喜ぶのも束の間。
グラルバルトでさえも事態を呑み込みきれていない様で、由佳はグラルバルトに今までの事を説明する。
「……と言う訳で、私達はこの場所でこうしていたって訳」
『ああ……成る程な。それでもまだこの子は私の事も含めて事態を呑み込めていない様だ。確かセナ……とか言ったか?』
「は、はい!」
ドラゴンから人間に姿を変えた目の前の生き物に唖然としつつ、何とかセナは返事をする。
『すまないが、私も由佳も君についてまだ良く知らないんだ。ここが何処だかも分からないし。だから君がここに来るまでの
経緯を話してくれないだろうか?』
「分かりました!」
由佳は自分の経緯すらもまだ話していないが、先にセナから事情を聞いておいた方が説明しやすいだろうと言う事で
セナ自身の口から彼女に一体何があったのか説明して貰う。
エーレスタやサン・ラブールと言う聞き慣れない単語にプラスして騎士団と言う名称から、セナの身分については
薄々何者であるかを由佳もグラルバルトも感じ取っている。
それでも、自分の言葉でしっかり説明して貰う方がお互い的に説得力も安心感も出るだろうとの事で、由佳とグラルバルトは
セナの口が開いて説明が始まるのを待った。
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