Run to the Another World Another Stage第4話


何とか飛び移った岩村は、海軍だと言うその船の船長に会う事が出来た。

どうやら今まで自分が居た船はやはり海賊船だったらしい。

何だかとんでもない事に巻き込まれたもんだなと思いつつも、岩村は海軍に保護される……かと思いきや。

「……!?」

ふと気がついてみると、何とさっきの海賊がこっちの船に乗り移って来ているでは無いか!!

「テメェらやっぱりグルだったか」

ヴァレントは座った目で、いつのまにかこちらの船に乗り込んできていた、とてつもなく怪しい男に向かってそう言った。

「お宝だけじゃなく俺達の船まで奪った責任、どう取ってもらおうか…」

子分が近くで「船はお頭のせいっす」とぼやいたが、ヴァレントの耳には届いていないようだった。

スラッと腰にさげていたカットラスを引き抜き、かまえる。


「は……?」

お前は一体何を言ってるんだ、と素でそんなセリフが岩村の口からでて来る。

船を奪った訳でも無ければ、お宝なんて全く知らない。

一体どうしてこうなってしまったんだ、と岩村は理解がまるで追いつかない。

「んんん、ちょっと待て……何を言い出してるんだお前は」

しかし目の前の男は腰から抜いたカットラスを振り上げ、岩村に振り被る。

それを岩村は左手でガードし、それを皮切りに周りの海軍と海賊の第2ラウンドがスタート。

海軍の船は目的地に向かって動き出しながら、それまでこのバトルが続くのかどうかは分からなかった。


ヴァレントは払われた腕を引き、数歩下がると、構えを変えて、そのままカットラスを突きだした。

岩村はそれを左に体をひねることで避けると、拳を握り、ヴァレントの腹にえぐり込ませる。

ヴァレントが、かはっとむせた。

「やるじゃねーか」

ヴァレントは、口元を拳でぬぐい、ニヤッと笑うと、右足を踏みこんでカットラスを横に薙いだ。

薙ぎ払いを後ろに下がりつつ上体を大きく反らして回避し、次の振り抜きのモーションが見えたと同時に

岩村は勢いをつけてハンドスプリングでギリギリ回避。

周りで海軍と海賊が戦う中で、2人は静かに睨み合う。

(このままだと埒が明かないな)


一気に決着をつけるべく岩村は上着を脱いで構える。

それを見た海賊のリーダーは思いっ切りカットラスを振り下ろしたが、岩村はそれを上着を巻きつけて奪い取って投げ捨てた。

更にそこから太極拳特有の突き飛ばす動きで海賊を突き飛ばした……までは良かったが、次の瞬間さっきと同じ様に

船体が大きく揺れる。最新式のエンジンを積んでいるこの大型船は、それなりの時間が経っていた様なのと

海岸から余り離れていなかった事もあり、目的地に辿り着いた……いや、ぶつかった様だった。

攻撃しようと踏み出した足がカクンとなる。

「なんだァ?」

ヴァレントが他に気を取られているうちに目の前にいた岩村がいつの間にか居なくなっていた。

「はぁ!?あのヤローどこいきやがった!?」

いきり立つヴァレントに、子分があわてた様子で近付いてくる。


船が激突したショックで海賊の気がそれたのをチャンスと見て、岩村は陸地に向かって一気に飛び降りる。

一応自分の武器は回収したので、何とか危機はこれで脱出した感じだ。

しかしここは一体何処なのだろうか? 何処かの外国なのだろうか? しかし魔法って一体何なのだろうか?

色々と湧き出て来る疑問に岩村が首をかしげながら歩き出すと、目の前には看板が1つ。

「この先、ずっと進むとサンドゥツレラ王国……? アバウトにも程があるだろう」

そんなアバウトすぎる案内板だがとにかく今は進むしか無いと思いつつ、岩村は1度だけ後ろを振り返る。

(あの海賊はあれで終わる様な奴じゃ無さそうだ。きっと何処かで来る。間違い無く、もう1度……)

とは言うものの、そのサン……何とか王国まではどうやって行けば良いのかさっぱり岩村には分からない。

とにかく看板に従って街道を歩く岩村だったが、そんな彼の視界が奇妙な物を捉えた。


「大変です!おかし…ヴァレント様!」

訝しげな表情で子分を見るヴァレントに、追い打ちがかかる。

「この船にあるはずのお宝が何一つないっす!!」

「なんだと!?今すぐ確かめて…」

船の奥に行こうとしたヴァレントだったが、中から軍人らしき人物がでてくるのを見て、あわてて子分と共に隠れる。

「さっきのあいつは確実に怪しい。追うぞ!ヤローども!」

軍人に見つからないように陸に降り立った。

「おまえら、あの怪しい男がどこへ行ったか見なかったか?」

ヴァレントが子分達に問いかけるが、誰ひとり見た者はいなかった。

「とにかく、ここから近くの街に寄ってみるか…。」

そのまま、近くにいた軍人に気づかれないように船から離れていく。

「しかし…。お宝はどこへ行ったんだ…。」

ヴァレントはぼそりと呟いた。


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