Run to the Another World Another Stage第2話
男は岩村の首筋にカットラスをあてがい、鋭い眼光で睨みつける。
「お宝を返せ。」
焦りつつも岩村は、気づかれないように戦闘態勢を整えていると、目の前の男の背後から子分らしき
男がこちらに声をかけてきた。
「お頭ー!怪しい船が一隻出港しました!!」
「お頭じゃねぇっつってんだろ!!ヴァレント様だ!いいかげん学習しやがれッ!」
「船……?」
ひょっとしてそれじゃないかと岩村が考えていると、目の前のガタイの良いお頭と呼ばれた男はそっちの
子分らしき男の方に振り向いた。
そして物凄い口調でその男を怒鳴りつける。だけど岩村には関係無い。
「ほら行った行ったお頭。そっちを追いかけてみろ。俺は別の奴に聞いてみるから」
あーあ、道草食ったな……と思いつつ岩村は立ち去ろうとしたが、背後からカットラスの風を切る音が聞こえて来た。
「逃がすと思ってるのかよ?」
岩村の隙をついてカットラスを突き出す。
岩村は一歩早くカットラスを握っているヴァレントの右手を蹴りあげた。
続けて2発、腹に拳をねじり込む。
ヴァレントは体勢を立て直し、カットラスを構えなおすと、にやりと笑った。
「しつこい若者だ。俺はお宝など知らん。とっとと消えろ」
何でこの男がこんなに絡んでくるのかさっぱり意味不明だ。
「見た所海賊の類みたいだが、今のご時勢そんな商売流行らないぞ」
そしてもう1つ、気になったセリフを岩村は思い出した。
「そして魔法って一体何なんだ。如何考えてもファンタジー映画とか小説の読み過ぎだろう。そんな空想上の物に
構っている余裕なんて俺には無い。お頭ってのも良く分からんもんだな」
「『お頭』っつーのはなァ、死語なんだよ!!俺にとってはな!」
先程よりも遠慮のないスピードで、岩村の頬をカットラスがかすめていく。
そのまま続けて足払いをかけた。
止めとばかりに、どこからともなく飛んできた木の板が、岩村の脳天を直撃する。子分の仕業だった。
「さっきの船を追うぞ。こいつは船室のどこかに閉じ込めておけ。」
「ぐぅ……あ……く、くそ……」
あの子分が投げて来た木の板がクリーンヒットし、岩村は気絶してしまった。
気がついてみれば窓から明かりが差し込む薄暗い船室で、しっかりと後ろ手に荒縄で縛られてしまっている。
(あの刀も没収されてしまった様だ。しかし、まずはここから出なければ)
どうにかしてまずはロープを解く事が先決だと考えた岩村が辺りを見渡すと、床には割れたビンの欠片が散乱していた!
岩村はその瓶の破片をどうにか後ろ手で拾うと、ロープに何度もこすりつける。
そうこうしていると、いきなり船体が左右に思いきり揺れた。
「ぐあっ!な、なんだ…?」
頭上からかすかに人の声と、それをかき消すほどの爆発音が響き渡る。
船室の外から、バタバタと言う足音が聞こえてきた。
船室の外では海賊達が慌ただしく走り回る。
それもその筈、船上では追いかけていた船から砲撃を受けているのだから。
そしてそれと同時にこっちの船に乗り込んできた敵の海賊と、こっちの海賊は小競り合いを始めていた。
岩村はそんな事は知らず、ロープを切る事にとにかく集中する。
(ロープは意外と脆そうだ。もう少し、もう少し……!!)
岩村が船室でロープと格闘していたちょうどその頃、甲板ではヴァレントが冷や汗を流していた。
「まさか軍属の戦艦かよ…。」
(いや、確かに苦戦は必至だろうが、お宝がたんまりあることに変わりはねぇ。)
ヴァレントはにやりと口元を歪めると、子分達に向かって声高に叫ぶ。
「行くぞヤロー共!俺は船室にいるヤツをひねりあげて盗んだお宝の場所を聞いたら参戦するぜっ!これでお宝2倍だ!!」
その頃、やっとロープを切る事に成功した岩村は船室から脱出。
(一体何が起こってるんだ?)
船の上、これだけの揺れ、そして響き渡る怒声に足音。
全てをひっくるめて考え、1つの結論に岩村は達する。
(まさかこの船、襲撃されてるのか!?)
そうだとしたら何としてでもこの船から脱出しなければならないだろう。
刀を探すのは諦め、とにかく岩村はこの船からの脱出を決める。
(くそ、どっちだ……どっちに行けば良い!?)
クールな岩村も流石にこの状況には焦るのだが、冷静に状況を分析して右へと通路を駆け抜ける。
そしてその30秒後、あのお頭がもぬけの殻になった船室を見て叫び声を上げるのだった。
「あああああ!?ふざけんなあの野郎!!」
ヴァレントは近くにいた子分の襟を絞めて思いっきり叫んだ。
「お、お頭…苦しい…」
そう言う子分を冷ややかに睨みつけると、襟を無言でさらに絞める。
遠くからヴァレントの元に、また一人、子分が駆けてきた。
「おかしッ…ヴァレント様!逃走した盗人を見つけました!!船底の方です!」
それを聞いたヴァレントがピクっと肩を震わせる。
「船底…まさか…ちゅーちゅー言う例のアイツがいないだろうな…?」
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