Run to the Another World Another Stage第14話
「お、お前達っ!? 何故ここに!」
「父上達が宝物庫の方に向かったと聞き、加勢しに来ました!」
第4王子のメルヴァールがそう言うものの、第2王子のシヴルが岩村に気が付く。
「……貴様っ!?」
シヴルが反射的にロングソードを抜いて斬り掛かろうとするが、それを第3王子のイディダルが止めた。
「お待ち下さい兄上! 今は魔族の盗伐が先でしょう!」
「……そうか。だが、貴様をこの城から逃がす訳にはいかない」
一旦いがみ合いは止めて、とにかく宝物庫で一体何が起こっているのかを調べなければ
ならないと言う事でここでも協力戦線が組まれた。
宝物庫に近づくに連れて、少しずつ魔族の数が増えて来る。
それに伴って王子達が1人、また1人と魔族の処理に手間取って宝物庫へと進む団体から離れて行く。
だけど確実に宝物庫へと近づいているので、それだけが唯一のカンフル剤となって岩村やフリート達を突き進めて行く。
それでも魔族達もまたもや増えて来る。
特に「宝物庫には行かせない」とばかりに宝物庫へ続く地下階段を塞ぐ様にして魔族連中が
立ち塞がるのを見て、末っ子の第5王子シャルロが何かを決心した。
「……宝物庫には僕が案内します」
「えっ?」
「僕なら宝物庫の場所を知っています。だから」
「いや、危険だぞ?」
岩村が余り戦えなさそうなシャルロを止めるものの、シャルロの意志は固そうだ。
「僕もこの国の王族です。この国を守る為だったら僕だって出来る事をしたい」
その硬い意志を聞き、岩村はやれやれと首を横に振ってシャルロを小脇に抱え上げる。
「すみませんが、陛下と宰相はここをお願い出来ますか?」
「……行くのか?」
「ええ。この王子様は言っても聞きませんでしょうし……俺が原因なら俺が直接向かうべきだと思うんです。だから」
岩村のセリフを聞き、フリートとハリスフィルは武器を構えて魔族達に向き直る。
「分かった。シャルロをくれぐれも頼むぞ」
「はい」
僕は荷物じゃな〜い!! との叫び声を小脇に聞きながら、そんなシャルロを抱え上げて岩村は
案内されるがままにサンドゥツレラ王国の螺旋階段を駆け下りる。
途中で出て来る魔族達は螺旋階段の下に蹴り落としたり、片手で武器を振るって斬殺したりしながら進む。
「あっ、あそこですっ!」
シャルロが抱えられながらも指差した方を岩村が見ると、金細工で装飾がされている黒い大きな扉があった。
その扉の両脇では警備の兵士2人が倒れている。
もう恐らく生きてはいないだろうと思いつつも、その扉を蹴り破って中へと突き進む岩村がそこで見た物とは……。
「……何だ、これは……」
紫色に輝く大きな、それはまるでブラックホールの様に空中に浮かぶ大きな黒い穴。
そこから魔族が次々と、まるで粘土細工の様に出て来ては姿を形成している。
これが恐らく「ねじれ」なのだろう。
「ねじれって言うのはこれの事か?」
「そうだと思います。早く止めないと、どんどん魔族が出て来ます!!」
「止めるって言っても……」
そう、止めると言うのは簡単だが実行するのは凄く難しい。
何せ止め方が全く分からない。
「……アイテムは俺のセドリックのキー位だが……まさか、何かキーを差す様な場所があるのか?」
「探してみましょう!」
シャルロがそう言って、湧き出て来る魔族を岩村が倒しつつ宝物庫内を探し回る。
時間が経てば経つ程魔族は力を増すらしく、出来立ての魔族はパンチやキック1発で
ノックアウト出来るのでザコ同然だ。
それでも無限に湧き出て来る為に、宝物庫も広い為キリが無い状況が続く。
「くそ……これじゃ作業がはかどらん!」
冷静な性格の岩村もだんだんイライラしていたその時、新たな乱入者が現れる!!
「オラァ!!」
「……え?」
叫び声がした方を見てみれば、そこには7人の男達の姿が。
ティル、セバート、それから魔術師のアルヴァインに傭兵のジェイル、更には第6師団長の
ストルグに魔族のヴァリアス、そしてジセン。
「じ、ジセン!!」
シャルロの叫び声に気が付いたジセンは、岩村の小脇に抱えられているシャルロに気が付いて
岩村に低い声を掛けた。
「シャルロを放せ」
「……誰だ、あんたは?」
「良いから放せ。死にてーのか?」
岩村がそれでも戸惑っていると、シャルロが彼をかばって声を上げた。
「か、彼はジセンって言うんです。僕を助けてくれたんです。そしてジセン、この人も僕を助けてくれたんだ!」
「……そうなのか?」
シャルロがそう言うんだったら……と岩村は今まで荷物の様に抱えていたシャルロを立たせる。
「シャルロ、ケガは無いか?」
「ぼ……私は大丈夫。ジセンは?」
「俺は平気だ。で、この状況は一体何なんだ? あいつは一体?」
岩村が宝物庫の中を探し回っている間、ジセンにシャルロから自分の父であるフリートや
宰相のハリスフィルに聞いた話を懸命に伝える。
「……分かった、それじゃあのでっかい穴を塞ぐ手段を見つければ良いんだな?」
「ああ。だけど私もあの人も一緒に探し回ってもなかなか見つけられないんだ」
それを聞き、ジセンは愛用のロングソードとハルバードを両手に構える。
「ならこの穴をまず塞がなきゃな」
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