Run to the Another World Another Stage第13話


2人のロングソードとカットラスがぶつかり合って、文字通り火花を散らし合う。

体格で勝るヴァレントがジェイルを前蹴りでぶっ飛ばし、とどめを刺そうとするもののジェイルも素早く

ゴロゴロと転がってヴァレントの振り下ろしを回避しつつ、ヴァレントに足払いを掛けて彼を地面に倒す。

パワーのヴァレントとテクニックのジェイルのバトルと言う構図だったが、そこに新たな乱入者が。

「おいおい、傭兵と海賊がお宝を巡ってやり合ってるのか? 魔族連中を潰すのが先だろーが」

「貴様は……ジセン・オウンダー!?」

「誰だお前。邪魔すんな」

ジェイルはジセンの事を知っているが、ヴァレントはジセンと面識は無かった。


だから対照的なリアクションになってしまう2人だが、そんなリアクションの違いにも構わずジセンは続ける。

「待てよ。俺は魔族の連中からこんな話を聞いたんだが……」

そう言いながら、ジセンが2人に城の宝物庫の話とねじれによる魔族の大量発生の話をする

その話を聞き終えて先に動いたのはヴァレントだった。

「だったらそのお宝を俺が頂くまでだ!!」

近くに居た部下を文字通り引きずりながら、ヴァレントが部下を引き連れて城に向かう。

「あいつはどうするのだ、ジセン」

「俺は城の宝なんてどうでも良いが、魔族連中の盗伐を邪魔するのなら潰す。どうやら魔族の

発生源は城の宝物庫らしいからな。俺達も城に向かうぞ」

「……分かった」

今だけは手を組む事を約束し、ジェイルとジセンも城の方に向かって駆け出した。


……のだが、それよりも前に2人にはやる事があった。

「おーい、ジェイル……って、何でジセンまで居やがるんだよ」

「ちっ、魔族め……ここで何してやがる?」

手を振って助けを要請しながら近づいて来た魔族のヴァリアスだったが、ジセンが居る事を

知ると露骨に嫌そうな顔をする。

それはジセンもなのでお互い様だったのだが、ここはいがみ合っている場合じゃないだろうと

ジェイルが2人をなだめる。


そして、ヴァリアスは信じられない事を言い出した。

「どうやら今回湧き出ている魔族は、俺達とはまたちょっと違う魔族らしいんだ」

「魔族は魔族だろ?」

イライラしながらジセンがそう言うものの、ヴァリアスは首を横に振る。

「そうなんだが、人間の魔族は俺みたいに目が赤いだろ? だけど今回の魔族は紫の目なんだよ。

それから妙なオーラも出ていやがるんだ」

「お、オーラ……?」

お前は何を言ってんだ? と言いたげなジセンとは対照的に、ジェイルは冷静な態度を崩さない。

「そのオーラって言うのはどう言うものだ?」

「同じだよ。紫色の何か……邪気みたいなそう言うの。ほら、例えばあそこに居る奴とかあそこのあれもそうだしな」


ヴァリアスが指差す方向には、確かに2人の目にも見える紫色の邪気を纏った人間型の魔族や獣型の魔族が。

「と言う事はあいつ等を潰せば言い訳だな?」

「そうだな。俺達の様な普通の魔族の生態系にも関わる話だ。そしてあの魔族連中は城の方から

やって来ているみたいなんだ」

「城の方から……」

さっきのジセンの話とリンクさせて、ジェイルが分析を終了した。

「何にせよ、城の方へ向かってみれば何か分かるかも知れない。今だけは共同戦線だ」

「ああ。シャルロ……殿下の安否も気になるしな」

自分の知り合いでもある第5王子の安否を気にしつつ、ジセンを先頭に城下町の人間の誘導をしつつ

騎士団の人間と一緒に魔族を潰して行く3人であった。


岩村は宰相と国王に案内されて地下に向かう。

だけど、その途中で時空のねじれから出て来る魔族連中の魔の手が迫っていたのでその魔族達とバトルする。

フリートとハリスフィルから聞いていた妙な魔族連中の話は、どうやら本当だったらしいと岩村も思いながら

太極拳の体術と自分の持って来た真剣の武器を使って戦う。

一方で国王のフリートは大斧、それから宰相のハリスフィルはクロスボウを使って遠距離から援護。

前衛と後衛でうまくサポートし合うこの2人は、聞いた話によればかなり長い付き合いらしく自ら戦場に

赴く事もあり、そしてその付き合いの中で自然とそうした役割分担が出来たのだとか。


場内の通路は余り広くないものの、それでも前衛の岩村とフリートが迎撃し損ねた魔族を的確に

ハリスフィルが潰す作戦で3人は宝物庫へと進んで行く。

しかしその魔族も宝物庫に近づくに連れて数が多くなって来た。

「ちっ……きついな」

「ここは一旦下がるぞ。このまま進んだら数の多さでこっちがやられる!」

「退却用の部屋があります。そこに逃げましょう」

ハリスフィルがその部屋に案内して、岩村とフリートも一旦体制を整えようとした……その瞬間。

「父上っ! ご無事ですか!?」

3人が魔族達に背を向けて退却し始めた目の前から、バタバタと5人の男が走って来た。

黒髪の男が3人、紫頭の男が1人、金髪の男も1人。

それは紛れも無く、ルディアスを筆頭に城の中へ戻って来た第1から第5王子の面々だった。


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