Run to the Another World Another Stage第12話


「こんな形状のカギはこの世界では見た事が無いカギだし、見た事も無い怪しい動きをするそなたの話、

それから我が息子のルディアスから先程通話魔術で連絡が入ったんだが、それについても説明して貰いたい」

「ルディアス……?」

聞き慣れない名前に岩村が首を傾げると、横に居たハリスフィルが補足情報を。

「第1王子のお名前だ。シヴル殿下の兄上だ」

「シヴル……ああ、あの眼帯の男の兄ですか? ちょっとこう……髪の長い」

「そうだ。その男からそなたの身体に剣を突き刺した所、傷を負うどころか光が漏れて何も

影響が無かったと言う報告を受けたものでな。一応、身体の事を色々と調べさせて貰いたいのだが」


だけど国王のその申し出に、岩村は素直に「はい」と首を縦に振る事は出来なかった。

「うーん、その第1王子にも同じ事言われたんですけど……一生実験台にさせられるみたいな

事言われたんで辞退させて貰って良いですか?」

「あいつ、そんな事を言ったのか?」

「厳密には、言われたのは第1だか第2だか忘れてしまったのですが、もし一生実験台になると

言うのならば俺はこの世界の他の国に行こうと思ってまして」

だがフリートは首を横に振る。

「一生実験台なんて事はしない。大方ルディアスも珍しい存在を目の前にして口が滑ったのだろう。

だから許してやってくれまいか」

「は、はぁ……」

父親、それも一国の国王と言う存在にそう言われては岩村も流石に断り切れなかった。


「ちょっとだけなら良いですけど……」

「それなら手配をしておこう。異世界からやって来たと言う話はあながち嘘では無いのかも知れん。身なりも

この世界じゃ見かけないものだし、連絡を受けてからここに来るまでが早過ぎるから何かがあったのだろう?」

次の質問に対して、岩村はこの不思議な世界に来る前の話、それから来た後に遭遇した海賊の話、

そして海賊といざこざがあってから城の中庭に来るまでの話をなるべく思い出せるだけ国王と宰相に話した。

それを聞いたフリートとハリスフィルは、お互いに何か納得した様な表情で頷き合う。

「ねじれが原因なのは、この男にもどうやら関係がありそうだな」

「ええ。先程宝物この方からも魔力のねじれを僅かに感じましたし……恐らくそうかと」

岩村の目の前で納得する2人だが、自分達だけで納得されたって岩村は納得出来ない。

「……何か問題でも?」

「ああ、少し付き合って貰いたい場所があるんだ。城の宝物庫にな」

「宝物庫……ですか?」


何でそんな所に? と岩村が問い掛けると、その説明は宰相のハリスフィルからされる事になった。

「この城の地下には宝物庫があるんだが、その宝物庫に異世界から現われた何かがあるらしい。

そしてその異世界からの物体が原因で時空がねじれ、魔族が大量発生した」

「魔族……」

何だかいきなりファンタジーっぽい単語が出て来たな、と思いつつも岩村はハリスフィルの説明を聞く。

「魔族は遠い昔にそれこそ突然現れた種族でな。我々人間と同じ容姿をしている者から魔獣の姿を

している者まで様々だ。それが今回大量発生して王都を襲っている。そこに私達も貴様の様な

見慣れぬ人間の対応で手が回らない状態だ」

しかし……とハリスフィルは続ける。

「異世界からやって来たかも知れない貴様と何か関係があるのなら、それを確かめに行きたいと

私達は思っているのだが」

ハリスフィルからそう伝えられた岩村は、1つの予想に辿り着いた。

「だったらそれを見に行けば、この魔族の大量発生も終わる?」

「確証は無いがな。だが、可能性はあるだろう」

岩村の予想に対して、ハリスフィルもフリートも真剣な眼差しで岩村を見つめた。



その頃、魔族を撃退しまくっていたジェイルとストルグの元にティルとセバートとアルヴァインが

ようやく王都に帰還して合流した。

「ティル団長にセバート副長……あ、アルヴァインも!」

「な、何だこの騒ぎは!?」

王都が襲撃されている。それも大量の魔族に。

何が起こっているのか脳の処理が追い付かないティル一行に対し、王国騎士団第6師団

師団長のストルグが駆け寄って説明する。

「時空のねじれで魔族が……」

「団長、これはただ事ではありません!!」

「ああ、分かっている」

絶句するセバートと慌てた様子のストルグに対し、ティルは今までの経験から冷静な対応を心掛ける。

「セバートと私は状況の把握と魔族の盗伐。アルヴァインは魔術師部隊と合流して同じく

討伐に当たれ。ストルグも引き続き討伐だ」

「はっ! ならジェイルは町の人の誘導を頼む!」


そう言われ、ストルグのそばに居るジェイルが無言で頷いて誘導に向かう。

……が、誘導に向かったその先でジェイルは「招かれざる客」を見つけてしまった。

(……あれは!?)

傭兵として活動しているジェイルは、サンドゥツレラ王国だけで無く周辺諸国も頻繁に

旅しているだけあってそっち方面の状況も逐一仕入れている。

その関係で、この王都の混乱に乗じて忍び込んでいたガルヴァーニ海賊団のリーダーである

ヴァレントを見つけて、「お頭」と呼ばれるのが嫌いな彼とバトルをする事になった。

海賊である彼等が何故内陸国であるサンドゥツレラ王国に居るのかと言うのは分からないが、

海のそばの国からは軒並み指名手配されている有名な海賊団である為に、ジェイルも何度か戦った事がある。

ヴァレントの方もジェイルに気が付き、宝の捜索は部下に任せて自分自らカットラスをジェイルに振り被った。


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