Run to the Virtua City with VSSE Agents Story第9話


その頃、弘樹と陽介は180SXとRX−7を放置して資料に書いてあった場所へと向かっていた。

2人は別の地下鉄の入り口から構内に入り、そのままやって来た地下鉄に乗ってその場所の近くの駅で降りる算段だ。

「あー、ようやくこの資料を渡せばあいつが解放される所まで来たか・・・・」

「まさかあいつが、こんな所に来てたとはな・・・。俺達と同じフォーミュラDに参戦とは・・あいつも引き寄せられたのかな?」

2人の会話に出て来ている「あいつ」とはそんなに面識は無いものの、今でこそ首都高サーキットを降りてサーキット一筋で

走っているドライバーであり、何回か弘樹と陽介も首都高サーキットや鈴鹿サーキット等でバトルをした事がある相手だった。

「でもあいつ、何で捕まったんだろ?」

「・・・・恐らく、俺達が一緒に居る所を何処かで見られていたからじゃないのか?」

「ああ、ありえるだろうなーそれは」

そいつとはフォーミュラDで再会する約束をしていたのだが、先程そいつから合流した弘樹と陽介に電話が掛かって来て

SOSを求められた。そして、資料と引き換えにそいつの身柄を渡すと言う事で話がついたのでこうして向かっている訳だった。


「警察に知らせたら殺す・・・か」

「バーチャコップの奴等も頼れないってなるのはきついな」

とにもかくにも、自分達はその場所へと向かうしか無いのだ。同じ首都高ランナーとして、同じく速さを求めた人間として。

・・・・が、その駅についた所で向かいに丁度反対方向の地下鉄がやって来た。

そこで弘樹と陽介は降りた訳だが、その地下鉄の中を何の気なしに見てみると、何とVSSEのジョルジョと2人の目が

合ってしまった!!

「・・・・やべ!!」

2人はVSSEの面々が何故ここに居るのか分からないにしても相談したい所だったが、ここで一緒にいるのを

見られてしまえばいつどこで敵の目に止まるか分からない。

なので名残惜しいがとっとと地下鉄の線路内へと飛び降りて走り去るしか無かった。


「……ん!?」

発車の際に何気なしにホームを見たジョルジョの目に、見覚えのある姿が映った。

自分に蹴りをお見舞いした例の男と、その隣にいたのは…。

「弘樹…?」

以前の事件で知り合った男だ。一瞬しか顔は見えなかったが、その隣の男の顔も記憶に残っていた。

「陽介か…なんで今まで気づかなかったんだ…」

「どうしたんだよオッサン?」

呑気に近づいてきたエヴァンに、ことのあらましを説明する。

「さっき、ホームに陽介と弘樹がいたんだ。恐らく…俺たちから逃げたのは弘樹だろうな」

「はあっ!?」

エヴァンの声に駆け寄ってきたレイジたちにも、事情を説明することにした。

「…そういうことかよ…なんだよ、言ってくれたら必死に追わなくてすんだのにさぁ」

「言う暇がなかったんだろう、向こうも必死だったようだしな」


事実を知って落胆するアランを宥めるウェズリーを見つつ、レイジが問う。

「で、ジョルジョ、その2人はどこへ?」

「この路線と反対側の線路に下りていったな…どうするんだ?」

「そういうことなら…この次の駅はすぐ近くだ。そこで降りて、俺たちも後を追う」

スマーティの言葉が言い終わるとほぼ同時、次の駅に地下鉄が到着する。ほらな、と先導するスマーティの

後を追いながら、エージェントたちも線路を走っていった。

「なんか線路を走るって憧れたよな、昔」

「あっ、わかる!スタンドバイミーだろ?」

「あーあ、これが青空の路線だったら完璧だったのによー」

前方を走るアラン、エヴァン、ルークの空気にそぐわない気楽な発言を聞きながら、相棒たちは頭を痛めるしかなかった。


2人は暗い線路内を歩きながら、たまに来る地下鉄を隅に避けつつ「その場所」の入り口を探す。

「この辺りかぁ〜?」

「どうなんだろ?」

地下鉄のトンネルの中に入るのだけでも自分達は初めてなのに、こんな所にアジトを造るなんてよっぽど暇なんだなーと

2人は内心呆れながら進む。

そうして足を進めていれば、2人の目の前にオレンジ色の扉が現れた。

「行くしか無いよな?」

「勿論だよ!! 俺も弘樹もフォーミュラDに出る為にはるばる日本から来たんだ。そいつを助け出して絶対に3人で

フォーミュラDに出るんだ!」

「それでこそ陽介だぜ!! よっしゃ、行くぞ!!」

熱血な性格の2人は頷きあって拳をぶつけ合い、ドアを開けて先へと進んで行った。


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