Run to the Virtua City with VSSE Agents Story第7話
見つけた、と思った時には、その人物は既にコンテナの上へ移動していた。
「あ、ちょ、待てって!」
追いかけるも、自分たちの後ろから銃声が飛ぶ。兵士たちだろう。
あれに構っていては追いつけるものも追いつけない。どんどんと距離を離されていくばかりだ。
「ウェズリーっ!」
前だけを見たまま、背後の相棒の名を呼ぶ。
「ああ!先に行け!」
自分は追いつくことを諦め、背後の兵士の処理に回る。
あれが捜索対象者かどうかもまだ不確定だが、威嚇射撃をされては自分たちもあの者に敵と思われかねない。
一方、アランは自分を突き放していく人物に必死に追い縋っていた。
「っくそ…猿かっつうの…っ!」
キャサリンの案内にも応える余裕はなく、ただひたすらに走り続ける。
(ん…?この方面って…入り口…?)
やっとコンテナ群を抜けたアランの目に見えたのは、件の人物が車に乗り込もうとしているところだった。
「はーっ・・・はーーぁっ、はぁーーーーっ、は、はぁ、はぁ・・・!!」
ようやく自分の180SXのドライバーズシートに乗り込んだ陽介は、凄く不規則に息を荒げながらもキーを
差し込んでセルを回す。兄弟車のS15シルビアのSR20DETに載せ換えているが、元々のこの180SXの
エンジンだって同じSR20DET。だけど耐久性は年式が新しい分、今のS15のエンジンの方が上だ。
(まだまだ俺もエンジンも現役だ!! 逃げるぞ!!)
流石に1998年に最終モデルが生産終了してからもう少しで20年になるが、ボディも補強している為に
自分の思い通りに動いてくれている。そんな180SXのアクセルを踏み込んで、追いすがって来た茶髪の
男・・逆光で顔は見えないけど、追いつかれてたまるかとその男に向かってフルスロットルで加速。
そしてサイドターンで怯ませた所で、一気に出口へと向かって180SXのアクセルを踏み込んで
脱出する事に成功したのだった。
もうすぐであの車に追いつく、と思った時。男がキーを回すのが早かったのか、けたたましい音を立てて車が急発進した。
「あ、ちょっ…ぅわっと!」
思わず手を伸ばして車体に触れようとした時、突然のサイドターンによって後方に飛ばざるを得なくなり、
逃げる隙を与えてしまった。
「って…あーっ!くそっ」
そうなれば、もう後は逃げる車を見つめるしかない。
「…逃げられたか」
後ろから聞こえるウェズリーの声が、咎めるような声色でないのが救いではあった。
「いや…なかなかやるぜ、あいつ。俺の俊足を撒こうなんざ」
「キャサリン。今の車がどこへ行ったかわかるか?」
「無視?」
「ええ、恐らくこれは市街地のほうへ向かったみたいね。ちょうどと言うべきかしら、
ジョルジョたちが追っていた謎の人物の車も市街地行きなのよ」
「なら…あいつらに任せて、俺たちも向かう。ほら、いつまで拗ねているんだ」
唇を尖らせてあからさまに機嫌を悪くするアランの肩を叩きながら、ウェズリーは市街地方面へと向かっていった。
同時刻、市街地中心部。常であれば人で賑わうはずの大通りは、ゴーストタウンのように無人の街と化していた。
そこに降り立つ影が4人。
「……街まで俺たちの貸切ってこと、ないよな?」
「どこかで聞いた台詞だな」
「はは、いっぺん使ってみたくてさあ」
格好つけるようにキャップの鍔を引き上げたルークは、後ろに控えるレイジたちに顔を向ける。
「で? なーんでこんな有様なわけ?」
「妙だな・・・・このアベニューがここまで無人と言う事はありえなかったが・・・」
腕を組んで考え込むレイジに、冷静沈着なスマーティが同意する。
「確かに。メインストリートの一角とも言えるここの区画が、これ程までに静けさを保っているのは不気味だ。
だが・・・・これがもし、敵の罠だったとしたら・・・・」
「相当まずそうだ、とにかく警戒して進むとしよう。一箇所に固まっていたら俺達全員やられちまう。
場合によっては強行突破も辞さない覚悟だが、なるべく360度、何処からでも敵が来て良い様に散開して進むぞ!!」
バーチャコップのリーダーであるレイジのそのセリフに、相棒スマーティもVSSEの2人も同意した。
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