Run to the Virtua City with VSSE Agents Story第14話


車を動かした直後、天井が硬い音を立てて開き始める。茜色に染まった空が見えた。

「あー、なるほどなあ。こうするのが目的だったわけだ」

エヴァンのぼやきに合わせるように、ルークが疲れたー、と声を洩らしながら座り込む。

大掛かりな仕掛けの作動に、処理や周囲の探索を終えた他のエージェントたちも様子を見に駆けつける。

「……これを発射されたらたまったものじゃない。危ないところだったな」

「あーあ…おっさーん、腹減った!帰りになんか食って帰ろうぜー」

「それなら、俺がおすすめの店紹介してやるぞ。ええと、確かこの辺りだと…」

「レイジ、まだ任務が終わっていないのに今から食事のことを考えるなんて、いい度胸だな?」

「うっ…い、いや、食事も任務における重要な…」

やいのやいのと盛り上がる6人の少し後ろに控えていたアランとウェズリーは、昔のことに思いを馳せていた。

「なんかさ、あれ思い出すよな。アスティゴス島の」

「ああ、似ているといえば似ているな。……懐かしいな」

「まあ、悪党の考えるようなことなんてどれも似た感じってことかなー。俺も腹減ってきた」

空には、バーチャコップたちが要請した応援のヘリの機影が見えた。


「・・・・なぁ、俺達ってこれからどうなるんだ?」

「え? 事情聴取じゃないのか?」

これからの展開を聞いた陽介に対し、当たり前の様にそう答える渡辺。渡辺は無口では無いが2人と比べて

圧倒的にキャリアが長いプロレーサーなのでどんな時でも冷静沈着。そしてここ一発の度胸では絶対に負けない。

だが、その回答を聞いた弘樹が「えっ!?」とびっくりした表情になる。

「いや・・・ちょっと待て・・・・。俺達明日の朝にはフォーミュラDの予選だぜ!?」

「あっ・・・・」

果たして間に合わせてくれるのだろうか、とバーチャコップやVSSEの面子に3人は確認しに行った。


なあなあ、と駆け寄ってきた3人の質問に、バーチャコップの二人は面食らう。

「えっ、明日か!?んー、今からすごい急げば間に合うかも…」

「……お前たちはそれに参加するために、はるばる日本からやってきたんだろう。

遅らせるわけにはいかないな…もしかしたら今日の日付を超えるかもしれないが」

「そういうことだ、ジャネット。頼めるか?」

「ええ、今掛け合ってみたけれど、大丈夫よ。今からV.C.P.D.に直接向かって下さい、こちらで準備はしておきますから」

「了解。というわけだ、駆け足で向かうぞー」

「えぇー、なんか今日はあっちにふらふらこっちにふらふらって感じだよなぁ…」

ぼやくルークの頭を小突いて、マークが立たせる。

「ほら、文句は後にする」

後始末のために入ってくる警察たちと入れ違いに、エージェントたちと弘樹たちは第2分署に向かっていった。


事情聴取を受けた3人は、夜中に会場へとそれぞれの車を運び入れて予約したホテルまでヘリコプターで送ってもらった。

ちなみに事情聴取の中で、弘樹と陽介よりも10年以上前から首都高を走っており、かつて存在していた首都高の四天王の

藤尾、由佳、博人、岸、そして首都高の裏四天王と呼ばれていた永治、和美、更に渡辺、最後にもうすでに

亡くなってしまったとされている男の順番で速いドライバーだったと言う事が判明した。

そのまま事件の疲れもあり、3人はそれぞれぐっすりと朝まで眠る。

「何とか間に合ったな」

「色々あったが間に合って良かったぜ。無駄足にならなくて良かった」

「それじゃあ行きますか」

渡辺も陽介も弘樹も安堵の表情を浮かべつつ、予選から参戦して行く。しかしアメリカのレベルもかなり高く、

弘樹がベスト24、陽介もベスト24、1番健闘した渡辺でベスト8で負けてしまい、3人のフォーミュラドリフト

バーチャシティラウンドが終了した。


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