Run to the Virtua City with VSSE Agents Story第11話
「わ、渡辺!!」
「くっそお、渡辺を離せ!!」
ミサイルのある地下の部屋には、無傷ではあるが鎖で椅子に縛られて身動きが取れない、弘樹と陽介の
知り合いである「ZERO」ことプロレーサーの渡辺亮の姿と、その横に立っているこの組織のボスらしき1人の
長いオールバックの青髪で細身の眼鏡の男が立っていた。
男の手には大きめの軍刀とサブマシンガンが握られている。
「ようこそ。お待ちしておりましたよ。日本からのお客様」
丁寧な言葉で喋って来る男だが、どこか得体の知れない威圧感があった。
更に動くには不向きと思われる黒のロングコートをひらひらとさせながらこちらに歩いて来るその姿には、
まったくと言って良い程隙が無かった。
「御前がボスだろ!!」
陽介が指を差して叫ぶと、眼鏡の男はその眼鏡を外して懐にしまいこんでにこやかに微笑む。
「ええ、そうですとも。我々の計画を持ち逃げした男が、何故貴方達にそのマイクロチップを渡したのかは
分かりませんが・・・せっかくここまで来たんです。素直に渡してもらえればこの方の鎖は解きますよ?」
「渡辺が先だ!!」
弘樹が大声で命令するが、ふう、とボスの男は息を吐く。
そして次の瞬間、渡辺の顔面に1発の回し蹴りを男が食らわせた。
「ぐわ!!」
「渡辺!!」
「テメー、何すんだよ!!」
ボスの男はそんな2人のリアクションを見て、やれやれと言った感じで首を横に振る。
「どうやら、ご自身の立場が理解出来ていない様ですね。余り賢い御方達では無さそうだ。
良いですか? この方の命は私が握っているのです。つまり、生かすも殺すも私次第。それに貴方達には武器が無い。
となれば、私は武器を持っている分有利です。・・・さぁ、理解出来たらマイクロチップを渡して貰いましょうか」
「く・・・そっ!!」
油断無く武器を向けられたまま、弘樹がマイクロチップを渡す。すると男は軍刀で渡辺の鎖を切った。
「渡辺!!」
その姿を見て陽介が渡辺を助け出そうとしたが、その渡辺の首筋に軍刀が突きつけられる。
「なっ・・・どう言うつもりだ!!」
「約束した筈だぞ!!」
憤る2人だったが、ボスの男はまた首を横に振って答える。
「やれやれ・・・・私は鎖を切るとは言いましたが、自由にするとは言ってませんよ?」
「な・・んだとぉ・・・!!」
「それに、貴方達はここで私に殺されるんですからね」
落ち着いた口調でそう言い切った直後、弘樹の腹に男は強烈なミドルキック。そして陽介に向かって
サブマシンガンの銃口が向けられた。
地下鉄線路内の扉を開けたエージェントとバーチャコップたちはさらに階段を進み、奥の扉を開ける。
と、信じられないものを目にすることになった。
「おいおい…なんでこんなとこにこんなのがあるんだよ?」
工場の広さに圧倒されたアランが思わず呟く。
「……こんなものを勝手に作られたらたまったもんじゃないな」
レイジが憤慨を隠すことなく吐き捨てる。
「ここでは銃器は使えそうにないな…俺たちはナイフがあるが。お前たちは…まあ、聞くまでもないか」
「白兵戦に関しても手馴れているからな。武器は現地調達か」
銃をホルスターに仕舞いながらジョルジョが呟く。
「んじゃ、行きますか!」
ルークの言葉を皮切りに、奥へと進んでいったはいいの、だが。
「……で、なんで敵がもう全員倒されてんだよ。俺たちの出番がないじゃねえか!」
何故か兵士たちが全員倒されているため、ただ進んでいくだけに終わったことにエヴァンが不満を叫んだ。
「乱闘の跡が激しいな。…陽介たちか?」
奥に鎮座する銀色の扉を前にして、ジョルジョが分析の声を洩らす。
「ひとまず、この奥が親玉で間違いなさそうだな。…いくぞ!」
念のため、ガーディアンを構え直したスマーティが先導し、扉を開ける。
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