Rescue request of a dragon第9話


「久しぶりだな、穂村浩夜」

「なっ!?」

浩夜の目の前に現れたのは、あのバーチャシティの事件で出会ったVSSEの

キース・マーティンとロバート・バクスターであった。

「わざわざGPSでここまで来て貰ったんだ。残りの仲間はあの倉庫の中に居るぞ」

「ああ、サンキュー」

「行くぞ、ロバート」


謎の男もどうやらVSSEの関係者の様だが、良く良く見てみると何処かで浩夜は

その男の顔を見た覚えがある。

(あれ? この男って……)

浩夜は謎の男に拘束されたまま、VSSEが倉庫の方へと歩いて行くのを見る事しか出来ない。

しかし次の瞬間、浩夜にとっての救世主が現れる!!

「ぐっ!?」

「うお!!」


突然飛び出て来た3つの影。その影の内2つ……ディールと淳はロバートを、もう1つの

影の正体であるサエリクスはキースをそれぞれ地面に押さえ付ける。

「なっ!?」

男が驚きの声を上げたそのチャンスを見計らい、浩夜は渾身の力で男の拘束を解除して

そのまま前蹴りから一気に飛び掛かって男の頭にムエタイ仕込みの肘を叩き落とした。

「ぐふ!」

倒れ込んだ男に圧し掛かってマウントポジションを取った所で、騒ぎに気がついた他の

メンバーも倉庫からどんどん出て来てVSSEの2人と謎の男を逆に制圧した。


「VSSEは案外早かったみたいだな」

「それはそうだろう。俺達に逃げられてあのまま黙っている訳にも行かないだろうし」

冷静に呟く連と、それを聞いて同調するバラリーの目の前で3人の男が倉庫の中の

柱に鎖で厳重に縛り付けられている。

「俺等だって無益な争いは好きじゃない。そっちだってそうだろう?」

ジェイノリーが冷静な口調でそう尋ねる。

「御前達のやっている事は世界中に脅威をもたらすと上層部が判断した。だからこうして

日本まで俺達はやって来たんだ」

キースは縛られているにも関わらず何時も通りの冷静な態度を崩さない。


「けれどここでミッション失敗って訳だ。あ、そうそう。俺達はあのVSSEと因縁があるワイルドドッグと

ワイルドファングって奴等とは一切関係無いからそこの所よろしく」

陽介も腕を組んでVSSEの2人を見下ろす。

「俺達の邪魔さえしなければ何もしない。それと……そっちのあんたの姿をようやく思い出した」

博人が白髪の男を見下ろして呟いたその言葉に、メンバー全員の視線が集まる。

「誰だ?」

「え、知ってるのか?」

浩夜とディールも男の正体に興味津々だ。


「あんた……永治から聞いた事があったけど名古屋で有名になっていた「D3」の1人だろ。

それにC1グランプリの鈴鹿サーキットで見かけた事もある。それから首都高までわざわざ

遠征して来た事もあったっけ。D3で最も速いって言われているあんたの名前は確か……

『ザ・ナイト』の西山貴之だ。どうだ、これで当たってるだろ?」

ずばっと男の正体を言い当てた博人に、洋子、陽介、浩夜からも声が上がる。

「ああ〜、そう言えば居たっけ、D3って」

「名古屋のチェスをモチーフにしたスープラのトリオだったな」

「サーキットだとR34、アルテッツァ、そしてあんたがランエボだったっけ……懐かしいな」

自分の過去の姿まで思い出されて、男は……西山は認めるしか無かった。

「……そうだ、確かに俺は名古屋の西山だ」


「もしかしてあなた、私達が名古屋から帰って来た時からずっと尾行してたの?」

洋子が驚きの感情が入り混じった口調で疑問をぶつける。

「へぇ〜、面識は無いけど結構行動力があるのは分かったぜ」

栗山が感心した様に呟くのを聞いた博人が、続けてこんな話もしてくれた。

「確かこいつの職業は探偵だ。首都高の走り屋から聞いた事があるから知ってる」

「そうか、なら尾行はお手の物だな」

博人の職業解説に岩村も頷いて腕を組んだ。


「でも不思議ねー。何であなたとVSSEに関わりがあるのかが分からないわ」

全うな疑問をボソッと口に出した洋子だったが、そこに入って来たのが大塚だ。

「多分、バーチャシティで関わった事があるからじゃ無いのか?」

「え?」

「ほら、この写真だよ。令次達5人が見せてくれた奴。確かみんなも持ってたよな?」

大塚はSpeed Produceの5人が巻き込まれたバーチャシティでの復讐事件が解決した時に、

その5人がバーチャコップ達から見せて貰った写真をコピーして貰った画像を、更に日本の

メンバー達にその5人が事後報告の形でコピーして送った画像を他のメンバーに見せて回る。


「ああ、この写真だったら俺も持ってたな……はっはぁ、成る程ね。D3だけじゃなくて街道の

トップドライバーにもあんた等と繋がりがある可能性がこれで出て来たって訳だ」

その写真を見せて貰った陽介が驚きの表情で3人にそう喋る。

「だったらまずい。日本に居たら俺達が見つかるのも時間の問題だ」

「ならやっぱり海外脱出しか無いって事か。……良し、ならドラゴン達に頼みたい」

ディールの言葉にアイトエルがある1つの提案を出す。


そのアイトエルの提案の結果、行き先はそれぞれ変わらないのだが飛行機の乗り換えで

行くのが朝になる為に残っていたケープタウンとサンパウロのメンバーだけは、

今からイークヴェスとエルヴェダーに本来のドラゴンの姿に戻って貰い、ここから

直に目的地へそれぞれ乗せて行って貰う事になった。

「それじゃあ、俺達はここに残っておいた方が良いんだな」

「それで連絡があったら例の場所で合流ね」

寄せ集めサーティンデビルズの5人はキースとロバートと西山の見張りでここに

残る事を大塚と洋子が確認して10人と2匹を見送った。


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