Rescue request of a dragon第8話
「もしもし……俺だ。あんたの予想通りらしい」
その人影は寄せ集めサーティンデビルズ5人の尾行を続けながら、ぼそぼそと何処かへ
電話をかけていた。
「ああ……分かった。尾行を続ける」
電話を切った男はそのまま地下鉄に乗り込み、5人にばれない位置で観察を続けている。
男は普段からこう言う事を良く仕事でもやるので手馴れた物である。
(やはりあいつ等は身分を偽っているな……)
そんな男に見張られているとは露知らず、5人は地下鉄から降りてJRに乗り換え
名古屋駅から新幹線へと乗り込んだ。
「これで後は6個だけど、全部日本なら良かったのに」
「そんな事言ったってしょうが無いでしょ、世界中に散らばっちゃったんだから」
「ああ……果たしてドラゴン達が遠隔操作で上手くやってくれるのかな?」
「余り期待は出来そうに無いな」
「とんでもない事になったけど、残りもこの調子で行くのを願うだけだ」
『済まぬ』
新幹線に乗り込んだそんな5人と1匹の会話に注意深く耳を傾けながら、
男は近くの席からメールを打ち始めた。
(俺達だけで何とかしたかったが、仕方が無いな。あいつ等がもうすぐ名古屋に着く
予定だったけど、ルートを変更して貰うしか無さそうだ)
ポチポチとメールを打って送信ボタンを押し、男は再び尾行を続ける顔付きに戻った。
(何か大きな事件の前触れで無ければ良いがな)
そうして日付が変わりそうな時に品川駅に辿り着いた新幹線から下りた5人は、収穫した卵を
持ったエルヴェダーを連れて残りのメンバーが待っている倉庫まで行く。
「今帰ったぞー」
「ああ、お帰り。卵は無事に取り戻せたみたいだな」
5人と1匹の姿を認めたバラリーが声をかけ、戻った5人はエルヴェダーと人間達を再会させる。
「あ、エルヴェダー!」
「久しぶりだな」
『俺様こそまさかこうして会えるとは思って居なかったぜ』
この場に残っているメンバーは南アフリカ担当のEuropean Union Fightersの5人と
ブラジル担当のBe Legendの浩夜を除いた4人の合計9人とイークヴェスだけであった。
「今、浩夜が他のメンバーと一緒に食べ物を買いに行ってるからもう少し待っててくれ」
『分かった』
しかし、その買い出しに行っていた浩夜は倉庫の近くに不審な人影があるのを見つけた。
(何だ、あの男……?)
一旦浩夜は倉庫に戻るのを止め、スマートフォンを取り出して倉庫の中に居る淳に電話を掛け始める。
「もしもし俺だけど……倉庫の外で変な奴がじっと倉庫の方を見張っているぞ」
『え? どんな人?』
「良く分からないけど、背はそんなに高くないみたいだ。とにかく怪しいぜ」
『……分かった』
連絡を受けた淳は他のメンバーにもその事情を伝え、ディールとサエリクスを引き連れて倉庫の外へ。
それと同時にその人影に浩夜は声をかける。
「あんた、そんな所で何してるんだ? 俺等に何か用か?」
「っ!?」
あからさまに肩を震わせて驚いたのが分かった人影は、ゆっくりと浩夜の方を振り向く。
だがその人影……白髪の男は浩夜の姿を見た瞬間に素早く胸倉を掴んで一本背負いをかました。
「うぐぉ!?」
いきなりアスファルトの上に一本背負いをかまされ、痛みと驚きで身体が動かない浩夜を無理やり
立たせて今度は耳元で囁いた。
「良いか……死にたく無ければ俺と一緒に来るんだ」
身体の痛みよりも、男にそのまま羽交い絞めにされてずるずると引きずられて行くのが苦しい浩夜。
色々な格闘技の試合で身体の痛みへの免疫はそれなりに出来ていた浩夜だったが、アスファルトに
叩き付けられればかなり痛い。
淳達が来る前に素早く別の倉庫の影に連れ込まれ、浩夜は謎の男に尋問される。
「な、んだ……」
「名古屋から持ち出したあの卵なんだが、御前達とどう言う関係があるのか気になるんだが」
「は……?」
買出しに行っていた浩夜は、エルヴェダーと寄せ集めサーティンデビルズが名古屋から
帰って来た事を知らないままだ。
「何の話だ?」
「とぼけるな。御前達の仲間がこそこそと名古屋で怪しい行動をしているのは知っているんだぞ」
今初めて会ったばかりの男に、名古屋の行動を何故知られているのだろうかと浩夜は
ズキズキと痛む身体と羽交い絞めで身動きが取れない恐怖に耐えながら考える。
だがそれをだんまりと受け取った謎の男は恐ろしい事を呟いた。
「まぁ良い。黙秘権はあるけど、もうすぐでここにもVSSEがやって来るから覚悟しろ」
「何だと……!?」
まさかのVSSEと言う単語に浩夜の目が見開かれたが、そのタイミングで示し合わせたかの様に
新たな声が聞こえて来た。
「全く、名古屋だと思ったらこっちかよ?」
「それよりも尾行は成功の様だな」
謎の男の前に現れた2人の男は、何と浩夜にとっても見覚えのある人物であった。
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